夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

(4) カハラオプナ

目  次

 

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(1) マノア渓谷

(2) マノアの風と雨

(3) カハラオプナの光明

(4) マノアのプリンセス

(5) あかんべーの男たち

(6) 悪い噂が広まる

(7) カウヒの怒りと決意

(8) 義理堅いカハラオプナ

(9) 嫉妬で怒り狂うカウヒ

(10) 君は死なねばならぬ

(11) カハラオプナの死

(12) カハラオプナの再生

(13) 尾根の斜面を登る

(14) 2,3度目の死

(15) 4,5度目の死

(16) 人々が一部始終を知る

(17) 若者に救われる

(18) 策略を練る

(19) キル・ハウスに乗り込む

(20) カウヒの挑戦

(21) 裁判に向けて

(22) カハラオプナは霊ではない

(23) 彼女はアカアカの孫娘

(24) 王の裁き

(25) カウヒらはイムで焼かれる

(26) サメの長老が連れ去る

(27) 幸せな2年の果てに

(28) 人喰いザメを追え

(29) 両親らが自然に還る

 

 

(3) カペエペエカウイラ (カナの岩)

 

 

(2) ヒクとカウェル

 

 

080 カハラオプナ:(5) あかんべーの男たち

(前回からの続き)

あかんべーの男たち

こうして、彼女のこの上ない愛らしさが大変な評判になり、この谷の隅々にまで広まったのでした(*1)。

そしてこの噂は2人の男、クマウナとケアワア、の耳にも入りました。

 

2人はともに下瞼(したまぶた)が萎縮して、醜(みにく)い顔になっていました。

そして、マカへレイ(あかんべー)と言うあだ名で、人々に知られていました(N.1)。

 

彼女への想いを胸にワイキキへ

この男たちのどちらも、これまでカハラオプナにあったことなど、全くありませんでした。

それなのに2人は、彼女の噂(うわさ)を聞くうちに、彼女に恋してしまったのでした。

 

しかし自分たちが醜(みにく)いが故に、あえて彼女に直(じか)に会って、プロポーズしようとはしませんでした。

 

その代わりに彼らは、マイレ、ジンジャーさらにシダで レイ(花輪)を編みました(N.2)。

そのレイで着飾ると今度はワイキキの浜辺に繰り出して、サーフィンを楽しんだのでした。

(次回に続く)

 

 

(ノート)

(N.1) マカヘレイ(makahelei):

マカヘレイとは、日本では眼瞼外反(がんけんがいはん)症と呼ばれる病気で、下瞼(まぶた)が外に反り返って「あかんべー」をしている状態になります。かつてのハワイでは、アウマクア(家族神)のカプを破った罰として発症する、と言われていました(S.M.Kamakau; The People of Old 90)。

(N.2) マイレ(maile), ジンジャー(ginger), シダ(ferns):

(N.2.1) マイレ:

マイレは、学名が "Alyxia stellata((同義語)Alyxia olivæformis)" の植物のハワイ名です。

マイレの葉は最も伝統的なレイの材料で、その香り高さが特徴です。レイの形状は輪ではなく、一本の紐(ひも)のように仕上げます。

今でも誕生日、結婚式、卒業式などに際して、このレイを贈ってお祝いします。

結婚式では花婿が身に着けるように、男性に贈られるのが一般的です。フラの世界ではマイレは神聖な植物で、フラの女神ラカ(Laka)に捧げられます。

 

(N.2.2) ジンジャー:

レイに使われるジンジャーの代表格は、ホワイト・ジンジャーとイエロー・ジンジャーです。

ジンジャーの花で作るレイは、手間がかかり高価ですが、その上品な美しさもまた格別です。

 

(N.2.3) シダ:

レイに使われるシダのハワイ名はパラパライ、和名イシカグマ、学名Microlepia strigosaです。

パラパライの葉だけでレイを作ったり、他の葉や花と一緒に編み込んだりします。フラでは、このレイを手首や足首に着けて踊ることも少なくありません。

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅺ. Kahalaopuna, Princess of Manoa. Mrs. E.M. Nakuina, p.118-132.

 

 

079 カハラオプナ:(4) マノアのプリンセス

(前回からの続き)

半ば神のような人

カハラオプナは幼い頃からカウヒの許嫁(いいなずけ)で、そのカウヒはコオラウ(モク)・カイルアの若い首長でした(*1)(N.1)。

 

 

彼の両親は、息子が将来「マノアのプリンセス」と結婚すると言う栄誉に、大変な気遣(きづか)いをしていました。

と言うのも彼女は半ば神のような血筋の人、とみなされていたからです。

 

そこで彼らはいつもその女性の食卓に、カイルアのポイと、カワイヌイの魚を送り届けていました(N.2)。

このように彼女は言わば、将来の夫から贈られた食物だけで育って来たのでした。

 

 

お目当ては 「マノアのプリンセス」

カハラオプナがうら若い女性に成長した時、その美しさは例えようもない程(ほど)でした。

 

そこでこの渓谷に住む人々は、ルアアレアの聖なる境内を訪ねたものでした。

そこはプロウロウ(立入禁止区域)の外側で、カハイアマノ(彼女の家)の隣にありました。

 

人々のお目当ては、家と泉の間を行き来する彼女でした。

その美しい姿を一目見ようと、集まった誰もが目を凝らしたのでした。

(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) コオラウ, カイルア(Koolau, Kailua):

コオラウとは、オアフ島の最も東側にあり、コオラウ山脈と海に挟まれたモク(区域)の名称です。

カイルアとは、コオラウ・モクを構成する1つのアフプアアの名称で、マノア渓谷に最も近い位置にあります。

(N.2) カワイヌイ(Kawainui):

カワイヌイとは、かつてカイルアにあったフィッシュ・ポンド(養魚池)の名称で、ハワイ最大の淡水養魚池でした。

現在は湿地になっており、2005年にはハワイ州最大の湿地(Kawainui Marsh)として、ラムサール条約に登録されています。

 

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅺ. Kahalaopuna, Princess of Manoa. Mrs. E.M. Nakuina, p.118-132.

 

 

078 カハラオプナ:(3) カハラオプナの光明

(前回からの続き)

カハラオプナの家

カハラオプナのために1つの家が建てられました(*1)。

 

その場所はカハイアマノで、ワイアケクアに向かう道の途中でした。

彼女はそこに、数人の従者と共に住みました。

 

家はドラセナの垣根(かきね)で、周囲を取り囲まれていました。

入口の門の両脇にはプロウロウ(カプの標識)が立てられ、敷地内への立入を禁止していました(N.1)。

 

プロウロウは短くて頑丈な棒で、先端には白いタパ布で覆ったボールが付いています。

そしてこの棒は、「敷地内に住んでいるのが、最高位の階級でかつ神聖な人である。」ことを示しています。

 

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バラ色の光が家を覆う

カハラオプナは、幼い頃から大変な美人でした。

彼女の頬(ほお)はこのうえなく赤く、その顔は眩(まぶ)しいほどに輝いていました。

 

そこで彼女が家にいる時は、頬や顔から放たれる光が、

草ぶき屋根や壁の隙間から、家の外にまで差していました。

 

それは、あたかもバラ色の光が、彼女の家全体を覆っているようでした。

そして、四方八方に放たれる明るい光線は、家の上で絶えず踊っているように見えました。

 

今も彼女の魂が帰って来る

家の下の方に湧き出ている泉に、彼女が水浴に行く時は、

幾条もの光線が周囲に放たれ、彼女を取り囲むのでした。

 

それはちょうど神や聖人が発する光明を描いた、後光(ごこう)のようでした。

 

地元の人々は、「その輝く光は今でも、時としてカハイアマノで見ることが出来る。」 と主張します。

そしてその光こそが、「カハラオプナの魂が、彼女の古い家に戻っている証拠だ。」 と言います。

 

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(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) プロウロウ(カプの標識)(puloulou (sign of kapu)):

プロウロウは立入禁止を示すカプの標識ですが、この標識には幾種類かあります。

そのなかで最もポピュラーなのは、ズバリ「KAPU」と書いた看板かも知れません。こちらはディズニーのアニメ「リロ・アンド・スティッチ(Lilo & Stitch)(2002年)」にも登場して話題になりました。

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅺ. Kahalaopuna, Princess of Manoa. Mrs. E.M. Nakuina, p.118-132.

 

 

077 カハラオプナ:(2) マノアの風と雨

(前回からの続き)

双子の子が養子に出る

アカアカとナレフアアカアカには、双子の子供がいました(*1)。

カハウカニという名の男の子と、カウアクアヒネという名の女の子でした。

 

この子らは生まれると直ぐに、アカアカの従兄弟(いとこ)2人のもとに養子に出されました。

2人は兄弟姉妹であり、1人は首長のコロワヒ、もう1人は女首長のポハクカラでした。

 

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この子らは結ばれるべきだ

コロワヒは、男の子カハウカニ、すなわち「マノアの風」の世話をしました。

そしてポハクカラは、女の子カウアクアヒネ、あの有名な「マノアの雨」を意味する名の子、の世話をしました。

 

子供たちが成長した時、里親たちはこう心に決めたのでした。

「この子らは1つに結ばれるべきだ。」

 

カハラオプナの誕生

一方、当の子供たちは、これまで別々に育って来たので、

自分たちが双子だとは知らず、この結婚にも反対しませんでした。

 

そこで彼らは結婚し、2人の間に1人の女の子が生まれました。

そしてその女の子は、カハラオプナと呼ばれました。

 

雨と風が融合したマノア

このようにコロワヒとポハクカラは、双子の2人を結婚させることで

雨と風を永遠に融合させたのでした。

 

今やマノア渓谷は、この雨と風が上手く融合していることで有名です。

そしてこの融合により誕生したのが、彼女の時代の最高に美しい女性でした。

 

マノアの女性たちは、言わばこのマノアの雨と風に育てられた子たちです。

ですから大体において、カハラオプナの美しさを受け継いでいる、と言えるのです。

(次回に続く)

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅺ. Kahalaopuna, Princess of Manoa. Mrs. E.M. Nakuina, p.118-132.