夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

2021-01-01から1年間の記事一覧

052 ヒクとカウェル:(7) コワリのつると死臭のオイル

(前回からの続き) コワリの蔓(つる)を集める ヒクは、カウェルの友達たちに手伝ってもらいながら、 山の斜面から膨大な量のコワリ、すなわちセイヨウヒルガオ属の蔓(つる)、を集めました(*1)(N.1)。 ココナッツの殻を用意する 彼はさらに、中空のココナッツ…

051 ヒクとカウェル:(6) 真の愛がヒクを動かす

(前回からの続き) 悲しみに打ちひしがれるカウェル ヒクが逃げ出したことを知ると、彼に夢中だったカウェルは 深い悲しみに襲われて、気が狂いそうになりました(*1)。 彼女は周囲の人々の、慰めの言葉を聞こうともしません。 その上、食べ物を何一つ口にしま…

050 ヒクとカウェル:(5) カウェルの深い愛

(前回からの続き) 心を奪われたカウェル この「矢探しごっこ」でのヒクの快挙、そしてこの青年の際立った気品と美貌が、 王女の心をすっかり掴(つか)んでしまったのでした(*1)。 やがて彼女は、彼への強く激しい情熱に、取り憑(つ)かれてしまいました。 そして…

049 ヒクとカウェル:(4) 矢はカウェルの足元へ

(前回からの続き) 矢はカウェルの足もとへ それからヒクはホルアロアの村に近づきながら、再び、あの矢プア・ネを放ちました(*1)(N.1)。 すると矢は元気いっぱい大空を飛び、ある中庭に入りました。 そこはコナのアリイ、すなわち首長、のお屋敷の中でした。 …

048 ヒクとカウェル:(3) 不思議な矢プア・ネが飛ぶ

(前回からの続き) プア・ネがカイルアへ飛ぶ ヒクは、遠く離れたある丘の上に立ちました(*1)。 そして彼の不思議な矢、プア・ネに助言を求めようと 大空のはるか彼方(かなた)に、矢を放ちました。 鳥のように飛ぶ様子をじっと見つめていると 矢はカイルア上方…

047 ヒクとカウェル:(2) 山頂から平原をめざす

(前回からの続き) 海辺でおしゃべりしたい! 長い年月が経ち、今やヒクは 「自分は一人前の男だ」、と思うようになりました(*1)。 そして、浮かれ騒ぐ笑い声が耳に入った時、彼は再び母に頼みました。 「自分一人で行かせて下さい。あの海辺の人たちと、おしゃ…

046 ヒクとカウェル:(1) フアラライの山頂に住む

(新しいお話しの始め)フアラライの山頂に住む ハワイ島のフアラライ山頂からそう遠くない、尾根筋の南側に洞窟がありました(*1)(N.1)(N.2)。 その洞窟には、ヒナと彼女の息子が住んでいました。息子はクプア、すなわち半神で、その名をヒクと言いました(N.3)…

045 ペレとカハワリ:(7) オアフ島へ

(前回からの続き) クムカヒ(東風)に乗る カハワリが海辺から少し漕ぎ進むと、 突然、クムカヒ(東風)が吹き始めました(*1)(N.1)。 彼は幅広の槍をまっすぐ上向きに立てて、カヌーの中に固定しました。 その槍に、マストと帆の二役をさせようとしたのです。 そ…

044 ペレとカハワリ:(6) ペレが襲いかかる

(前回からの続き) カハワリはカヌーを漕ぎ出す カハワリの弟は、ちょうど魚捕り用のカヌーから、降りた所でした(*1)。 そして、家族の安全を守ろうとして、彼の家に急いでいました。 カハワリが着いたのは、その時でした。 カハワリと彼の友達は、そのカヌー…

043 ペレとカハワリ:(5) 亀裂を越え妹に会う

(前回からの続き) 地面の亀裂を渡る溶岩の塊が、近くに転がって来ます(*1)。カハワリはその中を、走り続けていました。 ところがある時、地面に生じた深い亀裂(きれつ)に、行く手を阻(はば)まれてしまいました。 彼は、持っていた幅広の槍(やり)を亀裂の上に…

042 ペレとカハワリ:(4) 家族に声をかける

(前回からの続き) 母に危険を知らせる カハワリは、彼が大好きな豚に会いました(*1)。そこで鼻と鼻をくっつけ合って、ご挨拶をしました(N.1)。 それから、母が住んでいるクキイの家へ走りました。そして、鼻をつけ合わせて挨拶すると、こう言いました。 「ア…

041 ペレとカハワリ:(3) ペレの溶岩流が迫る

(前回からの続き) ペレの溶岩流が迫る カハワリは、コースの終点まで滑り降りて、立ち上がりました(*1)。 そして後(うし)ろを振り向くと、女神ペレの姿が見えました。 雷と稲妻、地震、そして燃え上がる溶岩の流れを引き連れて、 ペレは彼のすぐ近くに迫って…

040 ペレとカハワリ:(2) ペレの怒りが爆発する

(前回からの続き) あなたのそりが欲しい 再びスタートする前に、ペレはカハワリに、あなたのパパ・ホルア(そり)を下さい、と頼みました(*1)。 しかしその時のカハワリには、目の前の女性が女神ペレだとは、想像すら出来ませんでした。 その風貌(ふうぼう)から…

039 ペレとカハワリ:(1) そり滑りが始まる

(新しいお話しの始め) そり滑りに出かけるその昔、ケアリイクキイと言う王様が、ハワイを治めていた頃のことです(*1)。ハワイ島東部のプナに、カハワリと言う首長がいました。 ある日、カハワリは大好きな仲間と一緒に、ホルア(そり)を楽しみに出かけました…

(2) 女神ペレ:2) ペレとカハワリ

目 次 (1) そり滑りが始まる (2) ペレの怒りが爆発する (3) ペレの溶岩流が迫る (4) 家族に声をかける (5) 亀裂を越え妹に会う (6) ペレが襲いかかる (7) オアフ島へ 出典:Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, IV.Pele and Kahawali. From Ellis's…

(2) 女神ペレ:1) ペレと大洪水

目 次 (1) ペレの誕生・結婚 (2) 海を従えてハワイへ (3) ハワイが海に沈む (4) 火口を渡り歩く 出典:Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, III.Pele and the Deluge, Rev.A.O.Forbes, p.36-38.

038 ペレと大洪水:(4) 火口を渡り歩く

(前回からの続き) カウアイ島からモロカイ島へ ハワイの地に初めて到着したペレは、まずカウアイ島に住みました(*1)。そしてそこから、彼女はモロカイ島のカラウパパに移りました(Fn.(1) )。彼女が住んだのは、半島の付け根近くにある、カウハコの火口の中で…

037 ペレと大洪水:(3) ハワイが海に沈む

(前回からの続き) ハワイが海に沈むところが、ペレが噴き出す海のために、海面はどんどん上昇し続けました(*1)。そしてハワイの島々は、次々と海の中に沈んで行きました。 最後まで見えたのは、あの偉大な山々、ハレアカラ、マウナ・ケア、そしてマウナ・ロア…

036 ペレと大洪水:(2) 海を従えてハワイへ

(前回からの続き) 夫を探す旅に出る夫に捨てられたペレは、夫に腹を立て怒り狂いながら、自らも精神的にひどく傷つきました(*1)(*2)。そして、自分を傷つけた夫を探す旅に出て、ハワイの方にやって来たのです。 さて、その頃のハワイの島々は、広漠とした荒…

035 ペレと大洪水:(1) ペレの誕生・結婚

(新しいお話の始め) ペレの伝説は火山だけじゃないハワイの伝説の中では、火山の噴火はどれも皆、女神ペレに関連しています(*1)。しかし、この有名な女神ペレに係わる伝説は、火山だけではありません。 少し奇妙に思えますが、その昔ハワイを襲った大洪水も…

034 火の起源:(5) アラエの額はなぜ赤い?

(前回からの続き) ア・ペの葉の柄を擦(こす)る そこで、マウイ・ムアは言いました(*1)。 「話せ、その火はどこにあるんだ?」 アラエは答えました。 「それはア・ペの葉の中です(N.1)。」 これを聞いたマウイ・ムアは、アラエに教えてもらいながら、 ア・ペの葉の柄(…

(1) マウイの偉業:2) 火の起源

目 次 (1) 漁に出る (2) アラエの火を狙え! (3) アラエに振り回される (4) お願いだから殺さないで (5) アラエの額はなぜ赤い? 出典:Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅱ. Exploits of Maui. Rev. A.O. Forbes, Ⅱ.The Origin of Fire, p.33-35.

033 火の起源:(4) お願いだから殺さないで

(前回からの続き) ヒョウタンに騙(だま)される 兄弟たちは、マウイ・ムアに言われた通りにしました(*1)。 そしてその翌朝、彼らが漁(りょう)に出かけた、その時です。 アラエはカヌーの中の人影を数え、4人の姿を確認しました。 それから彼らは、火をつけま…

032 火の起源:(3) アラエに振り回される

(前回からの続き) 焦(じ)らされる兄弟たち マウイ・ムアの話を聞いた兄弟たちは、怒りをぶちまけながら、こう決意しました(*1)。 「もう2度と漁(りょう)なんかに行かないぞ。 あの『火』が 次に現れるのを、岸で待つんだ。」 しかし、それから幾日経(た)っても…

031 火の起源:(2) アラエの火を狙え!

(前回からの続き) 火の場所へ走る そこで彼らは、いくらかの魚を捕った後で、岸に向かったのでした(*1)。 カヌーが砂浜に着くと、マウイ・ムアは岸へ飛び下りました。 そして火が燃えていた、あの場所に向けて走りました。 アラエが火の番人 さて、尾が曲がっ…

030 火の起源:(1) 漁に出る

(新しいお話しの始め) 4人のマウイ兄弟たち マウイとヒナは一緒に住んでいました(*1)。 そして2人の間に、4人の男の子が生まれました。 彼らの名前は、マウイ・ムア、マウイ・ホペ、マウイ・キイキイ、そしてマウイ・オ・カ・ラナでした(N.1)。 日の出と共に漁…

(1) マウイの偉業:1) 太陽を捕まえる

目 次 (1) カパ布も作れない (2) 敵を観察しロープを作る (3) 太陽を輪縄で捕まえる (4) モエモエは岩に変わる 出典:Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅱ. Exploits of Maui. Rev. A.O. Forbes, Ⅰ. Snaring the Sun, p.31-33.

029 太陽を捕まえる:(4) モエモエは岩に変わる

(前回からの続き) 次はモエモエだ 「昼を長くする」ことに成功すると、マウイはその足でモエモエを探しに行きました(*1)。 そうです、以前、彼を嘲(あざけ)ったあの男です。 ところが、モエモエは家に居ませんでした。 遂に見つけたぞ それでもマウイは、彼を…

028 太陽を捕まえる:(3) 太陽を輪縄で捕まえる

(前回からの続き) 輪縄で光束(脚)を捕える マウイはロープを抱えて再びハレアカラに登ると、山の上に陣を敷きました(1)。 太陽が頭上まで来ると、彼はロープで輪縄を作り、太陽をめがけて投げました。 輪縄が大き目の光束を捕えると、それを荒々しく引きちぎ…

027 太陽を捕まえる:(2) 敵を観察しロープを作る

(前回からの続き) 太陽の動きを観察する マウイは最初に、東マウイのハマクアにある、ワイロヒへ行きました(N.1)。 そこで彼は、太陽の色々な動きを観察しました。 そして太陽が昇るのは、ハナの方向からであることを、確認しました(N.2)。 ハレアカラの真上…