(前回からの続き)
アカアカが予言者を誘う
するとアカアカは予言者カエアに、こう言いました(*1)。
「水瓶(みずがめ)の中を覗(のぞ)いてご覧なさい。
きっとその霊たちがいますよ(N.1)。」
予言者の霊を捕える
予言者はその謎解(なぞと)きにすっかりとり憑(つ)かれ、いつもの警戒心を無くしていました。
彼は水瓶を持って来るように命じました。
そして瓶の中を覗き込むと、見えたのは水面に映った彼自身の姿だけでした。
と、その瞬間、アカアカはその水面の予言者を捕えました。
その水面の予言者こそが、彼の霊だったのでした。
アカアカはその霊を両掌(てのひら)ではさむと、粉々に砕きました(N.1)。
するとその瞬間、予言者はぱったり倒れて、死んでしまいました。
カハラオプナはアカアカの孫娘
アカアカは、ここぞとばかりに後ろを振り向くと、両手を大きく広げてカハラオプナを抱き締めました。
こうして彼は、彼女は偽者などではなく、彼自身が愛する本物の孫娘である、と認めたのでした。
(次回に続く)
(ノート)
(N.1) 水瓶(calabash of water), 霊(spirit), 両掌(palms):
水瓶、霊、および両掌は、いずれも ポイ・ウハネ(霊を捕える) に関連した語です。
ポイ・ウハネは、人の体内から抜け出して彷徨(さまよ)う霊を捕える、と言われています(*2)。
そしてその霊を、水瓶の中に閉じ込めたり、手で握りつぶしたり、さらには食べてしまったりします。
こうして霊が失われると、その人の体自身も死んでしまいます。
本文ではアカアカがポイ・ウハネの役割を演じ、水瓶中の予言者の霊を両掌で砕いて、予言者自身を死に追いやります。
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅺ. Kahalaopuna, Princess of Manoa. Mrs. E.M. Nakuina, p.118-132.
(*2) J. S. Emerson(1917): Selections from a Kahuna's Book of Prayers, 26th Annual Report of the Hawaiian Historical Society, p.19.