夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

098 カハラオプナ:(23) 彼女はアカアカの孫娘


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(前回からの続き)

アカアカが予言者を誘う

するとアカアカは予言者カエアに、こう言いました(*1)。

 

「水瓶(みずがめ)の中を覗(のぞ)いてご覧なさい。

きっとその霊たちがいますよ(N.1)。」

 

予言者の霊を捕える

予言者はその謎解(なぞと)きにすっかりとり憑(つ)かれ、いつもの警戒心を無くしていました。

 

彼は水瓶を持って来るように命じました。

そして瓶の中を覗き込むと、見えたのは水面に映った彼自身の姿だけでした。

 

 

と、その瞬間、アカアカはその水面の予言者を捕えました。

その水面の予言者こそが、彼の霊だったのでした。

 

アカアカはその霊を両掌(てのひら)ではさむと、粉々に砕きました(N.1)。

するとその瞬間、予言者はぱったり倒れて、死んでしまいました。

 

カハラオプナはアカアカの孫娘

アカアカは、ここぞとばかりに後ろを振り向くと、両手を大きく広げてカハラオプナを抱き締めました。

こうして彼は、彼女は偽者などではなく、彼自身が愛する本物の孫娘である、と認めたのでした。

(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) 水瓶(calabash of water), 霊(spirit), 両掌(palms):

水瓶、霊、および両掌は、いずれも ポイ・ウハネ(霊を捕える) に関連した語です。

ポイ・ウハネは、人の体内から抜け出して彷徨(さまよ)う霊を捕える、と言われています(*2)。

そしてその霊を、水瓶の中に閉じ込めたり、手で握りつぶしたり、さらには食べてしまったりします。

こうして霊が失われると、その人の体自身も死んでしまいます。

本文ではアカアカがポイ・ウハネの役割を演じ、水瓶中の予言者の霊を両掌で砕いて、予言者自身を死に追いやります。

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅺ. Kahalaopuna, Princess of Manoa. Mrs. E.M. Nakuina, p.118-132.

(*2) J. S. Emerson(1917): Selections from a Kahuna's Book of Prayers, 26th Annual Report of the Hawaiian Historical Society, p.19.