(前回からの続き)
矢はカウェルの足もとへ
それからヒクはホルアロアの村に近づきながら、再び、あの矢プア・ネを放ちました(*1)(N.1)。
すると矢は元気いっぱい大空を飛び、ある中庭に入りました。
そこはコナのアリイ、すなわち首長、のお屋敷の中でした。
中庭にいた女性たちの中から、矢が選び出したのは、美しい王女カウェルでした。
そして矢は、彼女の足もとに着地したのです。
カウェルが隠す
ヒクは彼の矢を拾おうとして、カウェルの方に近づいて来ました。
これを見ていた彼女は、彼の気品ある身のこなしに気付きました。
そしてこっそりと、矢を隠してしまいました。
彼に「矢探しごっこ」を仕掛けたのです。
ヒクがプア・ネを呼ぶ
ヒクはカウェルのすぐ近くまで来ましたが、彼の矢プア・ネが見当たりません。
そこで彼は、 「プア・ネ! プア・ネ!」 と矢に呼びかけました。
すると矢はすかさず、「ネ!(心配していたんだぞ!)」 と答えたのです(N.2)。
こうして、矢が隠された場所が、わかってしまいました。
(次回に続く)
(ノート)
(N.1) ホルアロア(Holualoa):
かつてのホルアロアは今のそれより海辺に近く、サーフィンに適している上に、魚類や農産物も豊富だったそうです(*2)。
そこでこの地は永くアリイ(首長)たちの居住地でした。例えば、1600年代のハワイ島の王(アリイ・ヌイ)ケアカマハナは、このホルアロアを拠点に島全体を統治していました。
(N.2) ネ!(Ne !):
"Ne" はハワイ語で、"Fretting, teasing or nagging for something"などと英訳されています(*3)。ここでは "Ne=fretting=心配する"とみなして、 和訳 「心配していたんだぞ!」 を付記しました。
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅴ. Hiku and Kawelu, J.S.Emerson, p.43-48.
(*2) NPS(2005.04.20): 1. Name of Property, historic name ; Holualoa 4 Archaeological District (State Site No. 50-10-37-23.661), p.6.
(*3) Mary Kawena Pukui, Samuel H. Elbert(1986) : Hawaiian Dictionary, Univ. of Hawaii Press, p.263,右段.