夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

049 ヒクとカウェル:(4) 矢はカウェルの足元へ


スポンサードリンク

(前回からの続き)

矢はカウェルの足もとへ

それからヒクはホルアロアの村に近づきながら、再び、あの矢プア・ネを放ちました(*1)(N.1)。

f:id:o_hanashi:20211008144649j:plain

すると矢は元気いっぱい大空を飛び、ある中庭に入りました。

そこはコナのアリイ、すなわち首長、のお屋敷の中でした。

中庭にいた女性たちの中から、矢が選び出したのは、美しい王女カウェルでした。

そして矢は、彼女の足もとに着地したのです。

 

カウェルが隠す

ヒクは彼の矢を拾おうとして、カウェルの方に近づいて来ました。

これを見ていた彼女は、彼の気品ある身のこなしに気付きました。

そしてこっそりと、矢を隠してしまいました。

彼に「矢探しごっこ」を仕掛けたのです。

 

ヒクがプア・ネを呼ぶ

ヒクはカウェルのすぐ近くまで来ましたが、彼の矢プア・ネが見当たりません。

そこで彼は、 「プア・ネ!  プア・ネ!」 と矢に呼びかけました。

すると矢はすかさず、「ネ!(心配していたんだぞ!)」 と答えたのです(N.2)。

こうして、矢が隠された場所が、わかってしまいました。

(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) ホルアロア(Holualoa):

かつてのホルアロアは今のそれより海辺に近く、サーフィンに適している上に、魚類や農産物も豊富だったそうです(*2)。

そこでこの地は永くアリイ(首長)たちの居住地でした。例えば、1600年代のハワイ島の王(アリイ・ヌイ)ケアカマハナは、このホルアロアを拠点に島全体を統治していました。

f:id:o_hanashi:20211008144925j:plain

(N.2) ネ!(Ne !):

"Ne" はハワイ語で、"Fretting, teasing or nagging for something"などと英訳されています(*3)。ここでは "Ne=fretting=心配する"とみなして、 和訳 「心配していたんだぞ!」 を付記しました。

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅴ. Hiku and Kawelu, J.S.Emerson, p.43-48.

(*2) NPS(2005.04.20): 1. Name of Property, historic name ; Holualoa 4 Archaeological District (State Site No. 50-10-37-23.661), p.6.

(*3) Mary Kawena Pukui, Samuel H. Elbert(1986) : Hawaiian Dictionary, Univ. of Hawaii Press, p.263,右段.