夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

----- 大 目 次 -----

ハワイの昔話の世界へ

ようこそ !

 

--- 😄  作業中です  😄 ---

 

1. 神 話

(1) マウイの偉業

 1) 太陽を捕まえる (4)

 2) 火の起源 (5)

 

(2) 女神ペレ

 1) ペレと大洪水 (4)

 2) ペレとカハワリ (7)

 

2. 民 話

(1) メネフネ短編集

(2) ヒクとカウェル (12)

(3) カペエペエカウイラ (18)

(4) カハラオプナ (29)

(5) プナホウの泉 (9)

(6) オアフヌイ (13)

 

原典  Thos. G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales.

 

 

168 カアラとカアイアリイ:(22) 恐怖の洞窟内

(前回からの続き )

恐ろしい動物たち

死肉をあさるカニたちは、しずくが垂れる湿っぽい石の上を這(は)い回ると、姿を消してしまいました(*1)。

 

 

お次は忌(い)まわしいウツボ、今にも咬(か)みつきそうな勢いです。

鋭い歯が並ぶ大きく開いた口をゆっくりと伸ばし、彼女の柔らかな足を引きちぎろうとしています。

 

そして、このウツボが口を出している穴こそが、恐れ多い海の神が棲(す)む、恐ろしい隠れ家なのです。

 

カアラがへたり込む

かわいそうな少女(カアラ)は、この薄暗い岸辺にへたり込んでしまいました。

そしてカナカの膝にしがみつきながら、こう叫びました(N.1)。

 

「ああ、お父様。どうか私の脳を、このギザギザした石で叩(たた)きつぶして下さい。

 

そして私が死ぬまでは、あのウツボには私の首に巻き付かせないで下さい。

それに私の体の上を忌(い)まわしくぬるぬると、そして忍び寄るようにゆっくりと這うのは、やめさせて下さい。

 

ああ、私の息が絶えるよりも前に、カニたちが私を突(つつ)いて、引きちぎるでしょう。」

 

救いの道はある

「良く聞くんだ。」 と父オプヌイが言いました。
「私と一緒に、暖かくて日の当たる所に戻してあげよう。

 

もう一度、あの甘い香りの花が咲き誇る、パラワイ谷を歩かせてあげよう。

そしてお前の首に、香り高いジャスミンの花輪をかけさせてあげよう。

 

しかしそのためには、私と一緒にオロワルの首長の家に行かねばならぬ。

 

そしてそこで、お前の血生臭いご主人に見せつけるのだ。

-- お前が、もう1人の首長に抱かれて愛を交わすところを。

(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) カナカ(kanaka): 

有史以前、ポリネシア人が太平洋を渡ってハワイに住み着きました。そしてハワイの先住民となった彼らは、自分たちのことをカナカ(または カナカ・マオリ)と呼びました。本文では、カアラの父オプヌイのことをカナカと呼んでいます。

 

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson, p.156-180.

 

 

167 カアラとカアイアリイ:(21) 海の洞窟に入る

(前回からの続き )

おびえ泣き叫ぶカアラ

おびえたカアラは、残酷な父の膝(ひざ)にしがみつきました(*1)。

 

「ここはイヤ! お願い、お父様。」

彼女はすすり泣き、また、大声を上げて泣き叫びました。

 

「この穴の中には、きっとウツボ(プヒ)の棲み家(すみか)があるわ(N.1)。

そのウツボが咬(か)みついて、私を引き裂いてしまうでしょう。

 

そして私が死ぬ前に、今度はカニが這(は)って忍び寄り、すすり泣く私の眼球をつつき出してしまうでしょう。

 

ああ、何と悲しいことでしょう、お父様。

いっそのこと、私をサメに食わせてやって下さい。

 

そうすれば、私の叫び声やうめき声が、あなたを傷つけることはないでしょう。」

 

海中の洞窟に入る

オプヌイはすらっとした少女を、筋骨たくましい片腕でしっかりと抱え込みました。

そして一足跳びに、泡立ち波立つ水の中に飛び込みました。

 

彼はイルカのように軽快に、水中に潜って行きました。

それから自由な方の片腕で、海水を後ろに掻きながら海底に沿って移動し、海中洞窟のギザギザした入口から中に入りました。

 

 

そして鍛え上げた筋力を生かして、暴風の大波に逆らいながら泳ぎ進み、日差しの無い洞窟内の岸辺にやって来ました。

そこで、この洞窟の中で立ち上がって振り向くと、その入口は海の中にありました。

 

洞窟内は広々として乾燥した空間で、高い天井からは塩がつららのように、垂れ下っていました(N.2)。

 

 

彼らの足元では緑色の透き通った海が、押し寄せては返していました。

そしてそのたびに、恐ろしいほど白くまばゆい光を、彼らの茶色い顔に反射させるのでした。

(次回に続く)

 

(ノート)
(N.1) ウツボ(プヒ) (sea snake(the puhi)) : 

原文では"sea snake(the puhi)"と記されていますが、前半の"sea snake"は「ウミヘビ」を意味する英語で、残りの後半 "(the puhi)"は「ウツボ」を意味するハワイ語です。

しかし一般的に 「ハワイにはウミヘビはいない」と言われているので、ここでは上記における「ウミヘビ」の語を排し、「ウツボ」の語を活かして訳しました。

すなわち、原文の英語"sea snake" を 「ウツボ」 と和訳し、カッコ内のハワイ語"the puhi" は 「プヒ」 とカタカナ表記しました。

(N.2) 塩のツララ(salt-icicled ):

このお話しの舞台カウノル村のすぐ隣のアフプアアはケアリアです。この「ケアリア(Kealia)」と言う地名は、そこに塩の堆積層があったことを示唆しています(*2)。

従って、本文に登場する「塩のツララ」は、その堆積層から洞窟内に溶け出した塩が、ツララ状に固まったものと推測されます。

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson, p.156-180.

(*2) Lobbin Andrews,(reviced by Henry H. Parker)(1922): A Dictionary of the Hawaiian Language,Published by the Board, Honolulu,Hawaii. 

 

 

166 カアラとカアイアリイ:(20) 荒れ狂う淵

(前回からの続き )

荒れ狂う淵(ふち)へ

こう話しながら、激怒した父はカアラの手をつかみました(*1)。

そして彼女が涙にむせび泣き叫ぶのも無視して、ゴツゴツした岸に沿って、湾の東側のある地点まで連れて行きました。

 

そこでは、荒波が岩だらけの岸を叩(たた)いて、足元から揺らせています。

そうです、ここにあるのが 「荒れ狂う深い淵」 です(N.1)。

 

 

この浸食された空洞の中では、海水が泡立ち轟音(ごうおん)を上げています。

そして噴き出し穴からは、力強く海水が噴き出し、水しぶきをまき散らしています。

 

一方、この淵の入口は、干潮位よりも更に深い所にあります。

 

襲いかかる大波

ほら! 大きな波がやって来ます!
南からの強い風が、あの大波をこの海辺に向けて送り出しているのです。

 

その大波が今、櫛目の入った白い波の峰を立ち上げています。

そして強大で素早く突き進む、怒り狂った緑色の海水大塊と共に、この淵の入口に襲いかかります。

 

轟音(ごうおん)と海水の噴出

この大量の海水は入口から勢い良く流入して、中に封じ込められた空気を圧縮します。

 

すると今度は、圧縮された空気が反発して膨張します。

そして大量の海水を押し戻しながら、轟音と共に穴の外に飛び出すのです。

 

それと同時に、大量の海水が空高く噴き出します。

そして上空で緩やかな銀色の水しぶきとなり、曲線を描きながら落ちて来ます。

(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) 荒れ狂う深い淵 (boiling gulf):

波の浸食により出来た地形で、一般的には「潮吹き穴(blowhole)」と呼ばれています。

ハワイでは、オアフ島ハナウマ(Hanauma)湾のハロナ(Halona)、カウアイ島のポイプ(Poipu) などがよく知られています。

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson, p.156-180.

 

 

165 カアラとカアイアリイ:(19) 本当のことを聞くんだ!

(前回からの続き )

岩ばかりの海辺に下りる

疲れ果てた哀れな少女は、疑心暗鬼になりながら、とぼとぼと歩き続けました(*1)。

そして、もの恐ろしい父の不機嫌そうな目を、悲しげにちらっと見るのでした。

 

彼女は腹立たしい思いで口を閉ざして、海岸に下りる石だらけの小径に、足を踏み入れました。

しかし、やっと海辺まで来てみると、そこには何もなく、目に見えたのは岩塊群と海だけでした。

 

胸が張り裂ける思いで、彼女は言いました。

 

「ああ、お父さま。 サメが私の母になる、とでも言うのですか?

そして私は、もう二度と愛する首長に会うことはない、と言うのですか?」

 

本当のことを聞きなさい!

「本当のことを聞きなさい。」 オプヌイが叫びました。

 

「お前の家は確かに、しばらくの間は海の中だ。

そして、サメがお前の友達になるであろう。


しかし、サメがお前を傷つけるようなことはさせない。

 

お前は海の神が棲(す)み給(たま)う地に、下りて行くのだ。

すると神はお前に、こう告げるであろう。

 

『たとえこのラナイ島のどの娘であろうとも、あの血なま臭い飛び込みをさせた呪われた首長が、娘を連れ去ることは許さない(N.1))。』

 

もしもカアイアリイがコハラに向けて舟を漕ぎ出したならば、その時はオロワルの首長を呼んで、お前をこの地に連れ戻させてやる(N.2)。」

 

(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) 「血なま臭い飛び込み(bloody leap)」:

「血なま臭い飛び込み」とは、ラナイ島マウナレイ(Maunalei)の戦いにおいて、首長(カアイアリイ)がラナイの人々を断崖上に追い詰め、次々と深い谷に飛び込ませたことを指しています。

(N.2) オロワル(Olowalu):

このお話の舞台であるラナイ島の東隣にはマウイ島があります。そのマウイ島の西マウイにあり、海を挟んでラナイ島に面している町がオロワルです。このオロワルは、マウイ島の王ケカウリケ(Kekaulike)の娘、カロラ(Kalola)の統治下で大いに栄えました。

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson, p.156-180.

 

 

164 カアラとカアイアリイ:(18) 母は海辺で待っている

(前回からの続き )

彼を想いながら歩くカアラ

口をつぐんだ父と涙を流す子(カアラ)は、やがて緩やかで緑豊かなパラワイ盆地に足を踏み入れました(*1)。

しかし、今日の彼女はいつもとは違い、小径(こみち)の花を摘もうとしませんでした。

 

 

その代わりに、この花で花輪を編んで、愛するご主人の首につけてあげようと思いました。

そこで彼女は、帰り道にはどこで立ち止まろうか、と考えていました。

 

このようにあどけない思いを胸に、哀れな恋する乙女(おとめ)は、不機嫌そうなオプヌイについて旅を続けたのでした。

 

この道ではお母さんに会えない

彼らはカルルとカモクの林を通りぬけました。

それから、男はマハナに通じる小径から外れて、再び海の方角に向かい始めました。

 

これを見て、口を噤(つぐ)んでいた哀れな子は、気味悪く不機嫌そうな父の顔を見上げ覗き込むと、こう言いました。

「あー、お父さま。

 

この道を行っても、お母さんに会えないでしょう。

きっと道に迷って、また海に来てしまうでしょう。」

 

母は海辺で待っている

「だから、お前の母は海辺にいるんだ、カウマラパウ湾の近くだ。

彼女はそこで、岩場に張り付いた笠貝(カサガイ)を集めている。

 

 

お前のために大きな筒(つつ)イカを干(ほ)してある。

また、タロを幾つか潰(つぶ)して、ヒョウタン(容器)にポイを満たしてある。

 

だからもう一度、お前に食べさせてくれるだろう。

 

彼女は病気なんかじゃない。

だが、もしも私があの時、『彼女は健康だ。』と言っていたならば、お前のご主人は、お前を行かせなかったであろう。

 

しかし、今やお前は母と一緒に、この海辺で眠りに就(つ)こうとしているのだ。」

(次回に続く)

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson, p.156-180.

 

 

163 カアラとカアイアリイ:(17) 愛し合う2人の別れ

(前回からの続き )

愛するカアラとの別れ

さて意を決した英雄は、涙を流して泣く少女(カアラ)の、固く握っていた手を放しました(*1)。

 

彼の目は冷静で落ち着いていました。

しかし彼の閉じた口は、強く優しい愛の心の奥底、を表わしていました。

 

彼はこの短い別れよりも、もっと大きな悲哀がもたらす、うずくような痛みを感じたのです。

 

彼は彼女の小さな顔を、両手のひらで優しく抱えると、涙にむせぶ唇に、幾度も幾度もキスしました。

そして心を込めて彼女の手を強く握り締めると、大股で足早に歩き去ったのでした。

 

断崖上でカアラを見送る

カアラが石ころだらけの上り坂の小径(こみち)を、歩いていた時のことです。

 

その途中、彼女は愛する彼を一目見ようと、ちらっと振り向きました。

すると彼女の首長は、あの海に突き出た巨大な断崖の、一番高い岩の上に立っていました。

 

それから、彼女がもう少し歩いて振り返るとまだ、まだそこに彼が立っていました。

 

そして尾根の頂上にたどり着いて、いよいよ深い渓谷に下りようとした時、彼女は最後にもう一度だけ振り返って見ました。

すると依然として、愛するご主人は彼女を見上げていました。

(次回に続く)

 

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson, p.156-180.

 

 

162 カアラとカアイアリイ:(16) 行きも帰りも空を飛べ

(前回からの続き )

あなたは私の生きる力

あの可愛らしいジャスミン(カアラ)は、彼の首に両腕を巻き付けました(*1)。

そして、彼の胸に頬(ほほ)を擦り寄せながら、ちらっと顔を見上げてこう言いました。

 

 

「おお私の首長よ。あなたは私に、生きる力と素晴らしい喜びを下さった。

 

あなたの息づかいは私の活力、

あなたの目は私の最も快く美しいもの、

あなたの胸は私の唯一の安らぎの場です。

 

そして私が遠く離れて行く時、その道中きっとあなたを、振り返り続けるでしょう。

そして後ろ髪を引かれる思いで、ゆっくりと進むことでしょう。

 

しかしあなたのもとに戻る時は、是非とも翼を手に入れましょう。

--- ご主人様のもとに私を運んでくれる翼を。」

 

行きも帰りも空を飛ぶのだ

「そうだ、我が愛(いと)しの恋人よ。」 とカアイアリイが言いました。

 

「あなたは飛ぶのだ。だが帰りと同じように、 行きも素早く飛んで行くのだ。

行きも帰りも両方共、あなたは私を目指して飛ぶのだ。

 

あなたが行ってしまった後、きっと私は柔らかいオフア(小魚)を槍で突き、ヤムとバナナを焼くだろう(N.1)。

それから、ヒョウタン容器を美味(おい)しい水で満たそう。

 

 

そしてあなたが戻った時には、愛するあなたに食べさせてあげよう。

だからその時、私には、あなたの愛をこめた眼差しを下さい!」

 

もしも彼女が戻らなければ---

「さあ、オプヌイ! あなたの子を連れて行きなさい。

 

あなたは彼女に命を与えてくれた。

しかし今は、彼女が私に命を与えているのです。

 

だから太陽が2回昇る前に、元気な彼女を連れ戻して下さい。

 

もしも、彼女がすみやかに戻らなければ、きっと私は死ぬでしょう。

しかしその前に、私はあなたを殺さなければなりません。

 

ですから、おー、オプヌイよ! 大急ぎで出発して、大急ぎで戻って来て下さい。

そして、私の命であり愛である彼女を、私のもとに連れ戻して下さい。」

(次回に続く)

 

(ノート)
(N.1) ヤム(yam):

ヤム(英名)とは、ヤマノイモ属(Dioscorea)の中の塊根を食用とする種の総称です。ヤムの中でハワイで最も代表的な種が Dioscorea alata(学名)であり、そのハワイ名はウヒ(uhi)、和名はダイジョです。

かつてこのヤムを食べる時は、イム(imu)と呼ばれる地中オーブンで焼きました。

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson, p.156-180.