夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

078 カハラオプナ:(3) カハラオプナの光明

(前回からの続き)

カハラオプナの家

カハラオプナのために1つの家が建てられました(*1)。

 

その場所はカハイアマノで、ワイアケクアに向かう道の途中でした。

彼女はそこに、数人の従者と共に住みました。

 

家はドラセナの垣根(かきね)で、周囲を取り囲まれていました。

入口の門の両脇にはプロウロウ(カプの標識)が立てられ、敷地内への立入を禁止していました(N.1)。

 

プロウロウは短くて頑丈な棒で、先端には白いタパ布で覆ったボールが付いています。

そしてこの棒は、「敷地内に住んでいるのが、最高位の階級でかつ神聖な人である。」ことを示しています。

 

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バラ色の光が家を覆う

カハラオプナは、幼い頃から大変な美人でした。

彼女の頬(ほお)はこのうえなく赤く、その顔は眩(まぶ)しいほどに輝いていました。

 

そこで彼女が家にいる時は、頬や顔から放たれる光が、

草ぶき屋根や壁の隙間から、家の外にまで差していました。

 

それは、あたかもバラ色の光が、彼女の家全体を覆っているようでした。

そして、四方八方に放たれる明るい光線は、家の上で絶えず踊っているように見えました。

 

今も彼女の魂が帰って来る

家の下の方に湧き出ている泉に、彼女が水浴に行く時は、

幾条もの光線が周囲に放たれ、彼女を取り囲むのでした。

 

それはちょうど神や聖人が発する光明を描いた、後光(ごこう)のようでした。

 

地元の人々は、「その輝く光は今でも、時としてカハイアマノで見ることが出来る。」 と主張します。

そしてその光こそが、「カハラオプナの魂が、彼女の古い家に戻っている証拠だ。」 と言います。

 

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(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) プロウロウ(カプの標識)(puloulou (sign of kapu)):

プロウロウは立入禁止を示すカプの標識ですが、この標識には幾種類かあります。

そのなかで最もポピュラーなのは、ズバリ「KAPU」と書いた看板かも知れません。こちらはディズニーのアニメ「リロ・アンド・スティッチ(Lilo & Stitch)(2002年)」にも登場して話題になりました。

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅺ. Kahalaopuna, Princess of Manoa. Mrs. E.M. Nakuina, p.118-132.

 

 

077 カハラオプナ:(2) マノアの風と雨

(前回からの続き)

双子の子が養子に出る

アカアカとナレフアアカアカには、双子の子供がいました(*1)。

カハウカニという名の男の子と、カウアクアヒネという名の女の子でした。

 

この子らは生まれると直ぐに、アカアカの従兄弟(いとこ)2人のもとに養子に出されました。

2人は兄弟姉妹であり、1人は首長のコロワヒ、もう1人は女首長のポハクカラでした。

 

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この子らは結ばれるべきだ

コロワヒは、男の子カハウカニ、すなわち「マノアの風」の世話をしました。

そしてポハクカラは、女の子カウアクアヒネ、あの有名な「マノアの雨」を意味する名の子、の世話をしました。

 

子供たちが成長した時、里親たちはこう心に決めたのでした。

「この子らは1つに結ばれるべきだ。」

 

カハラオプナの誕生

一方、当の子供たちは、これまで別々に育って来たので、

自分たちが双子だとは知らず、この結婚にも反対しませんでした。

 

そこで彼らは結婚し、2人の間に1人の女の子が生まれました。

そしてその女の子は、カハラオプナと呼ばれました。

 

雨と風が融合したマノア

このようにコロワヒとポハクカラは、双子の2人を結婚させることで

雨と風を永遠に融合させたのでした。

 

今やマノア渓谷は、この雨と風が上手く融合していることで有名です。

そしてこの融合により誕生したのが、彼女の時代の最高に美しい女性でした。

 

マノアの女性たちは、言わばこのマノアの雨と風に育てられた子たちです。

ですから大体において、カハラオプナの美しさを受け継いでいる、と言えるのです。

(次回に続く)

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅺ. Kahalaopuna, Princess of Manoa. Mrs. E.M. Nakuina, p.118-132.

 

 

076 カハラオプナ:(1) マノア渓谷

(新しいお話しの始め)

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渓谷に突き出た尾根アカアカ

「アカアカ(笑い)」 は、1つの突き出した尾根です(*1)(N.1)(N.2)。

それはマノア渓谷の一番奥にあり、背後の山岳地帯から渓谷内に突き出ています(N.3)。

 

そうです、アカアカは尾根という形を取りながら、ワイアケアクア川 「神々の水」 、さらにはその先へ伸びているのです。

 

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尾根に咲く花ナレフアアカアカ

その昔、アカアカはナレフアアカアカと結ばれ、結婚しました(N.4)。

 

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このことを象徴するように、今でもオヒア・レフアの低木が、アカアカの尾根のちょうど上に生えています。

(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) (執筆者)ナクイナ(Mrs. E.M. Nakuina):  

このお話の執筆者ナクイナさんが生まれたのは、オアフ島ホノルル市内のマノア渓谷、ちょうどこのお話の舞台になった場所です。

彼女はハワイで初の女性裁判官と言われますが、また第7代国王カラカウアの妃カピオラニの女官も務めました。

一方、ハワイの文化や民話にも力を注ぎ、数多くの作品を残しています。スラムさんの著書「ハワイの民話(1907)」の中にも、彼女が執筆したお話が幾つもあり、この「カハラオプナ, マノアの王女」もその1つです。

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(N.2) アカアカ(笑い)(AKAAKA (laughter)):

「アカアカ」はハワイ語で、その一般的な意味は「笑い」ですが、このお話の中では1つの尾根の呼称です。すなわち、マノア渓谷の一番奥にあり、渓谷内に突き出ている尾根の名前がアカアカです。

但し、後述されるように、アカアカは結婚して子供も生まれます。

(N.3) マノア渓谷(Manoa Valley):  

マノア渓谷は、オアフ島の東岸に伸びるコオラウ山脈の南東端近くで、州都ホノルルの東部にあります。

今では、この渓谷の入口近くにハワイ大学本部(マノア校)がある他、渓谷の奥に向けて住宅地が伸びています。また、トレッキング・コースとしても人気があり、渓谷の一番奥にはマノア滝をはじめ、いくつもの滝があります。乾季でも降雨量が多いため、良く虹がかかることでも知られています。

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(N.4) ナレフアアカアカ(Nalehuaakaaka):

「ナレフアアカアカ」はアカアカの妻の名前ですが、この語は "Na-lehua-akaaka"のように3つの語に分解できます。

1番始めの"na"は定冠詞(複数形)、2番目"lehua"はオヒア・レフア( ʻōhiʻa lehua)という植物に咲く花の名前、そして3番目"akaaka"は彼女の夫の名前です。

従って、これを直訳すると「アカアカのレフアの花たち」ですが、アカアカが尾根の名前でもあることを考慮すると、「アカアカの尾根に咲くレフアの花たち」 と訳せます。

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅺ. Kahalaopuna, Princess of Manoa. Mrs. E.M. Nakuina, p.118-132.

 

 

075 カペエペエカウイラ (カナの岩):(18) 最後はカナの勝利

(前回からの続き)

2度目の戦いの準備は万全

こうしてカナは遂に、太くたくましい体になりました(*1)。

そこで彼はもう一度、カペエペエカウイラと戦うために準備をしました。

 

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食料はワイピオ渓谷から大量に取り寄せました。

準備が整(ととの)うと彼らは再びカヌーに乗り込み、やがてモロカイ島のハウプに戻って来ました。

 

ところで祖母のウリは、カナにあらかじめこう命じていました。

「まず始めに、ハウプにあるカマニの木の枝を全部、跡形もなく取っ払っちまうんだよ。」

 

頑強なカナがハウプに姿を現す

いよいよカナがハウプに姿を現しました。

 

そして前の時と同じように、再び上に向かって伸び始めました。

彼はどんどん伸び続け、やがて断崖絶壁を見下ろすようにそそり立ちました。

 

カペエペエカウイラの敗北
これを見たカペエペエカウイラは、またカマニの木の枝を切り落とそうと急ぎました。

そうすれば前と同じように、断崖絶壁が高くなる、と思ったからです。

 

ところがです、見て下さい。

無いのです、枝が1本残らず消えてしまったのです!

 

もうこれで一巻の終わりでした。

カペエペエカウイラが遂に敗北したのです。

 

今に残る 「カナの岩」 

勝ち誇ったカナは、彼の姉妹であるモイを取り返しました。

可愛そうなハカラニレオには、彼の妻であるヒナを取り戻してあげました。

 

それからカナは、ハウプの断崖絶壁をばらばらに破壊しました。

残骸(ざんがい)の大部分は、海の中に蹴落(けお)とされました。

 

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今でもそこには、幾つもの岩塊がそびえ立っています。

そして人々はこれを、 「カナの岩」と呼んでいます。

(終わり)

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅷ. Kapeepeekauila; or, The Rock of Kana. Rev. A.O. Forbes, p.63-73.

 

 

074 カペエペエカウイラ (カナの岩):(17) カナが太りニヘウは怒る

(前回からの続き)

カナがハワイ島コナに横たわる

ニヘウは、カナが敗れたと知ると、こう叫びました(*1)。

 

「ハワイ島のコナを目ざして、横になるんだ

そう、あんたの祖母ウリが居る所だよ。」

 

そこでカナは、長く伸ばした体を、コナの地に横たえました。

しかし彼の両足は、モロカイ島に残したままでした。

 

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祖母の食べ物でぽっちゃり太る

コナにいた祖母は、カナにせっせと食べ物を与えました。

お陰で彼は再び、「肉付きが良い太っちょ」 に戻りました。

 

その間、かわいそうなニヘウはモロカイ島で、カナの両足をじっと見ていたので、

カナの足にふっくらと肉が付き、太くなるのを目の当たりにしました。

 

怒ったニヘウの仕返し

一方、ニヘウは食べる物も無く、極度に飢えた状態でした。

「それじゃあ、」 とニヘウが言いました。

 

「カナよ、あんたは食べ続けて、ぶくぶく太ってきたが、

ワシは腹が減って死にそう、と言うことだな!」

 

そして、ニヘウはその仕返しに、何と、カナの片足を切り落としてしまったのでした。

 

カナの体に痺(しび)れが走る

その激痛はカナの脚をじわじわと伝わり、ハワイ島のコナに横たわる、胴体そして頭に達しました。

 

そこで、カナが祖母ウリに言いました。

「私の体を、じわじわと痺(しび)れが伝わるように、感じるんです。」

 

これに答えて、ウリが言いました。

「お前の弟もお腹が空いたんだよ、--- じっと見ていたんだからネ。

 

お前の両足にふっくらと肉が付くのを見て、その中の一つを、彼が切り落としたんだよ。

だから痺れるんだよ。」

(次回に続く)

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅷ. Kapeepeekauila; or, The Rock of Kana. Rev. A.O. Forbes, p.63-73.

 

 

073 カペエペエカウイラ (カナの岩):(16) カナの力が尽きる

(前回からの続き)

カナがハウプの頂上を奇襲

「そうだ。」 と言って、カナは立ち上がりました(*1)。

 

戦いを前に、彼の一方の脚はケアウエア、そして他の足はカイパネアと命名されました。
そしてカヌー上で仁王立ちになると、カナは自分の体を上へ上へと伸ばし始めました。

 

それに気付いたハウプの頂上に住む人々は、恐ろしさの余り叫び声を上げました。

 

「わしら皆、死んじまうぞ!

ほら見ろ。バカでかい大男が、わしらの上にそそり立っているぞ。」

 

カペエペエカウイラの反撃

これを見たカペエペエカウイラは、急いでカマニの木の枝を切り落としました(N.1)。

ハウプの断崖絶壁を軽くすれば、断崖が隆起して高くなると考えたのです。

 

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こうして断崖絶壁は高くなり、またカナも体を伸ばしました。

 

カナの力が尽きる

カペエペエカウイラたちは死物狂いで枝を落とし続け、断崖絶壁はさらに高くなりました。

 

一方、カナもさらに体を伸ばして、背を高くしていきました。

しかし、カナの体は次第にやせ細り、バナナの葉の根元のようになりました。

 

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それでもまだ、彼は少しずつ体を伸ばし続けました。

そしてとうとう、蜘蛛(くも)の糸のように、細くなってしまいました。

 

最後にはカナが屈して、カペエペエカウイラに勝利を譲(ゆず)ったのでした。

(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) カマニ(kamani ) :

カマニはハワイ語名で、その和名はテリハボク、学名は "Calophyllum inophyllum"です。

常緑の高木で高さ8〜20mですが、30mを超す巨木になることもあるそうです。

ハワイでは神聖な木とされ、かつてはヘイアウ(神社)の周囲にも植えられました。

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅷ. Kapeepeekauila; or, The Rock of Kana. Rev. A.O. Forbes, p.63-73.

 

 

072 カペエペエカウイラ (カナの岩):(15) ヒナが逃げる

(前回からの続き)

カペエペエカウイラが戦いを決意

カペエペエカウイラは限りなく深く、ヒナを愛していました(*1)。

そのカペエペエカウイラが、こう主張しました。

 

「敵がどう攻めようが、ハウプには指一本触れさせないぞ。

見よ、このハウプの丘は、天まで伸びているんだ。」

 

ニヘウの鍵を穢(けが)せ

こう言うと彼は、コレア(ムナグロ)の群れにニヘウを追わせました(N.1)。

ニヘウが持つ聖なる鍵の、神聖さを穢(けが)そうとしたからです。

 

というのは、ニヘウの鍵はカプだったからです(N.2)。

 

万一誰かがその鍵に触れれば、神聖さは穢されてしまうのす。

そして鍵を守れなかったニヘウは、まさにその罪悪感から、ヒナを手放すのです。

 

ということで、コレアの群れは大空へ飛び立ち、そしてニヘウの聖なる鍵に触れました。

そのためニヘウは、まさにその罪悪感から、去って行く母をそのまま見過ごしたのでした。

 

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コレアの尾を叩きつぶす

その後、ニヘウは杖を振り上げると、コレアたちに襲いかかりました。

彼らの尾に狙いを定めると、その羽根を叩(たた)きまくりました。

 

そして一羽も残さずに、丸ごと叩きのめしてしまいました。

ですから今でも、コレアたちは尾が無いままなのです。

 

それからニヘウは、カヌーがある岸の端まで戻って来ました。

一方コレアたちは、ヒナを勝ち取って得意満面でした。

 

カナにはトリックも効かない

岸に着いたニヘウは自分の額(ひたい)を、血が流れ出すまで石で叩(たた)きました。

しかしカヌー上にい居たカナは、それがトリックであることを見抜きました。

 

そうとは知らず、ニヘウはカヌーに乗り込むと、こう言いました。

「見てくれ!わしら戦ったんだ。ワシは頭に怪我をしちまった。」

 

しかしカナは、こう言い返しました

「いや違う、戦いなんて無かったんだ。

お前、負けて恥ずかしいからって、その傷、自分で付けたんだ。」

 

すると、ニヘウがこう応じました。

「何だって、そんなら、わしら戦おうか?」

(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) コレア(ムナグロ) (kolea(plover)):

コレアは渡り鳥のハワイ語名で、和名「ムナグロ」、英名 "Pacific Golden plover(略称:plover)、そして学名は "Pluvialis fulva" です。

毎年8月末にアラスカやシベリアから、ハワイにやって来て冬を過ごし、翌年5月初めには帰って行く冬鳥です。

(N.2) カプ(kapu) :

カプとは、タブーを意味するハワイ語で、かつてのハワイ社会を支配した厳格な規則です(*2)。

人々の日常生活は、あらゆる場面でこのカプにより拘束されていました。

例えば首長が村の中を歩く時には、平民はひざまずき頭を下げねばなりませんでした。

万一このカプが破られると、首長が持つ神聖な力が減ってしまう、と言われていました。

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅷ. Kapeepeekauila; or, The Rock of Kana. Rev. A.O. Forbes, p.63-73.

(*2) J.S.Williams(1997): From the mountains to the sea: early Hawaiian life, Kamehameha Schools./ Chap.5 Nā Kapu:The Forbidden or Sacred, p.41-42.