お話しおじさん

古典的なお話しをご紹介しましょう。

008 モケ・マヌさんが語る:(2) 声はすれども姿は見えぬ

(前回からの続き)

メネフネは超自然的な存在

メネフネは超自然的な存在である、と考えられています(*1)。

そのメネフネは、彼らの上に立つ「ある者」の統治下にありました。

 

その「ある者」について、彼らはこう考えていました。

「パワーがあり、かつ、自分たちを支配する権限がある。」

 

その「ある者」 が、メネフネを色々な山や丘に割り振りました。

そして彼らは各々に示された地に、ずーっと住み続けたのでした。

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パパとワケアの時代が来るまでは、唯一このメネフネだけが、ハワイ諸島の住民だったと言われています(N.1)。

 

声はすれども姿は見えぬ

メネフネの姿は、普通の人々には見えませんでした。

彼らを見れるのは彼ら自身の子孫、または子孫と何らかの繋(つな)がりがある人だけでした。

その反面、メネフネの声や鼻歌は、多くの人々に聞こえたのでした。

しかし、メネフネを自分の肉眼で見るという素敵な贈り物は、彼らの血縁者だけに与えられたのでした。

 

メネフネは、子孫たちからお願いされると、いつも喜んで引き受けました。

そして超自然的なパワーを発揮して、幾つかの素晴らしい作品を完成させたのでした。

 

(終わり)

 

(ノート)

(N.1) パパ(Papa)とワケア(Wakea)の時代が来るまで:

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パパとワケアは各々、ハワイの創世神話ムリポ(Kumulipo)に登場する、大地の女神と天空の神です。

神話の中でパパは、ハワイの島々を生みながら一時期タヒチに帰っています。

このことから「パパとワケアの時代」とは、タヒチからの移住者によるハワイ創世神話の時代、を指すと思われます。

そうすると、「パパとワケアの時代が来るまで」とは、「タヒチからの移住が始まる前」を指すと言えそうです。

 

(注記)

(*1) T.G.Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, X. Stories of the Menehunes, Moke Manu's Account Thos. G. Thrum, p.109-110.

 

 

007 モケ・マヌさんが語る:(1) たった一晩で完成だ (N.1)

素晴らしい人たち

メネフネは素晴らしい人たちだ、と思われていました(*1)。

彼らは背が低くて、非常に行動力があります。

どんな仕事を頼まれても、彼らはいつも一致団結して取り組みます。

 

たった一晩で完成だ

また、メネフネには独特のルールがあります。すなわち、

どんな仕事でも一旦引き請けたら、ひと晩で完成させるのです。

もしも出来なかったら、未完成のまま放置されます。

彼らがその同じ仕事を再開することは、2度と無いのです。

 

このことを指して、人々はこう言うようになりました。

「ヘ ポ ホオカヒ, ア アオ ウア パウ(N.2),」

--- たった一晩で、そう、夜明けまでには完成だ。

 

ハワイ諸島の「最初の住民」

メネフネの歴史については、信頼できるものがありません。

誰一人として、彼らがどこから来たかを、知らないのです。

しかし伝承によると、彼らはハワイ諸島の 「最初の住民」 なのです(N.3)。

(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) モケ・マヌさんが語る(Moke Manu's Account ):

「第Ⅹ章 メネフネのお話し集」 の始めの2つは解説文で、1番目が 「1. ハワイはブラウニーの故郷」でした。

ここからは解説文の2番目、 「2. モケ・マヌさんが語る」 です。語り部のモケ・マヌ さん(1837年生まれ) がハワイ語で語り、スラムさんが英語の文章にしました。

(N.2) ヘ ポ ホオカヒ, ア アオ ウア パウ(He po hookahi, a ao ua pau):

これは、メネフネの仕事の特徴を表す大切なハワイ語です。ご参考までに、ハワイ語の単語毎に対応する英単語を括弧内に付記すると、次の通りです。

He(A) po(night) hookahi(only one), a(until) ao(dawn) ua(become) pau(completed).

(N.3) 最初の住民(original people):

ハワイ諸島はもともと無人島でしたが、ある時期に、西から移動してきたポリネシア人が、移り住み始めました。初めはマルケサス(Marquesas)諸島から、その後、タヒチからの移住が本格化したとも言われます。

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しかし、この語り部モケ・マヌさんの話しでは、メネフネこそがハワイ諸島の「最初の住民」です。マルケサスやタヒチから人々がやって来る前から、ハワイ諸島にはメネフネが住んでいたのです。

 

(注記)

(*1) T.G.Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, X. Stories of the Menehunes, Moke Manu's Account Thos. G. Thrum, p.109-110.

006 ハワイはブラウニーの故郷:(4) メネフネはポリネシア人の祖先?

(前回からの続き)

メネフネはポリネシア人の祖先?

ハワイには「クムホヌア」という伝説があります(N.1)(*1)。

フォルナンダーは、「この伝説の中で、ポリネシア人は選ばれた民だった」 と主張し、こう続けています(N.2)(*2)。

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ポリネシア人はメネフネの子孫であり、

そのメネフネはルア・ヌウの息子である(N.3)。-- 以下略 --

メネフネという名の国は、はるか昔に姿を消してしまった。

そのために、後から生まれた色々な伝説が、メネフネという語を不名誉なものに変えてしまった。

すなわち、それらの伝説の中でのメネフネは、ある時は独立した一つの種族として描かれた。

しかし、またある時はドワーフの一種族とされ、腕の立つ職人だが悪賢く抜け目ない小人として描かれた。」

 

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メネフネ伝説の真相に迫る

それではここで、次章以下にご紹介するお話しの記述方法と、お話しの選び方について、ご説明しましょう。

次章をまとめるに当たり、初めにお話しに関する情報を、様々なハワイのネイティブから収集しました。

続いて、選ばれたお話を、英語で表現する作業に入りました。

そこでは、出来る限りネイティブの言葉に忠実な表現になるよう、翻訳者たちは常に注意し続けました。

こうすることで、ネイティブの考え方や特徴がより明確に表れ、読者が真相を捕え易(やす)くなるからです。

 

(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) クムホヌアの伝説(The Kumuhonua Legends):

「クムホヌアの伝説」の、クヌホムアとは「地上に最初に生まれた人」 を意味します。

この伝説の内容は、フォルナンダーらが聖書に倣って創作したものであることが、後日、明らかにされました。

(N.2)フォルナンダー(A.Fornander:1812-87):

フォルナンダーはスウェーデンに生まれてハワイに移住し、民俗学者・ジャーナリスト・裁判官として活躍したハワイの著名人です。

(N.3) ルア・ヌウ(Lua Nuu):

ルア・ヌウと言う名前は、「ヌウ(Nu'u)のⅡ世」 であることを示しています。

ヌウはクムホヌアから13代後で、聖書の中で大洪水時代に生きたノアに相当する人です。

このヌウから10代後で、聖書のアブラハムに相当するのが、ルア・ヌウです。

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, X.Stories of the Menehunes, p.107.

(*2) Abraham Fornander(1878): An account of Polynesan Race, Its Origin and Migrations, Vol.Ⅰ, p.55.

 

 

005 ハワイはブラウニーの故郷:(3) メネフネはハワイの先住民?

今でもメネフネは人気者

今でもハワイの人々は、メネフネに関する情報に、興味を持ち続けています(*1)。

そして、このエネルギッシュな人種について、時折、問い合わせを受けます。

その大半は漠然としたものですが、時には、有名な伝説の口承者(カアオ(kaao))たちからも尋ねられます。 

彼らは、メネフネに関する知識を、より一層深めようとしているのです。

 

メネフネって本当に居たの?

しかしハワイの人々の間でも、当然ながら、メネフネに対する考え方はさまざまです。

(1) ハワイ諸島の先住民だった

ある人たちは、厳粛にそして尊敬の念を抱いて、メネフネと向き合っています。

彼らは、メネフネについて、こう信じているのです。

『もともとメネフネは、このハワイ諸島に住んだ最初の住民だった。

しかし少しずつ、体の大きい種族に追いやられ、やがて取って代わられてしまった。

そして、この体の大きい種族こそが、現在のハワイ人の祖先だ(N.1)。』

 

(2) 歴史の中に埋もれてしまった

また他の人たちは、色々と考えた末、こう言います。

『メネフネという種族の歴史は、長い年月が経過する中で、忘れ去られてしまった。

そして今では、顧みられること無く埋もれている。』

 

(3) 伝説上の種族だ

一方、より知性や教養のある人たちは、こう考えています。

『メネフネは伝説上の種族で、西欧のノームやドワーフと同じだ(N.2)。

『人々は、彼らの超自然的な活躍を楽しみながら、そのお話を語り継いで来た。

--- ちょうど、おとぎ話が語り継がれるように。』

 

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(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) 現在のハワイ人(the present race):

ここで言う「現在のハワイ人」とは、欧米人のハワイ発見前からハワイに住んでいた人々で、ハワイ先住民(Native Hawaiians)と呼ばれています。

彼らの先祖は、太平洋を渡ってハワイ諸島に移住した、ポリネシア人だと言われています。

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(N.2) ノーム(gnome)、ドワーフ(dwarf):

ノームは、16世紀に錬金術パラケルススが提唱した大地を司る妖精です。長いひげを生やした老人のような風貌の小人です。

ドワーフは、古くからゲルマン民族の間に伝わる長ひげの小人です。山や地中に住み、鍛冶や石工の技能が高いと言われます。

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, X.Stories of the Menehunes, p.107.

 

 

004 ハワイはブラウニーの故郷:(2) メネフネってどんな人?

ハワイはブラウニーの故郷

「ハワイは小人の妖精『ブラウニー』たちの本当の故郷だ、少なくとも故郷だった。」

と知れば、きっと興味を持つ読者がいることでしょう(*1)。 

 

しかも、ハワイの人たちはずーっと昔から、この 冒険好きの流浪の民(小人)を知っていたのです。 

--- スウィフトが風刺心で、リリパットの小人たちを描くよりも、ずーっと前から(N.1)。 

 

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しかし、どの国にも小人(ブラウニー)たちは居る、と期待するのは行き過ぎでしょう。

また、ハワイの小人たち固有の特徴までも、他の国のブラウニーに期待するのも、行き過ぎでしょう。

 

メネフネってどんな人?

伝承によると、彼らは一つの種族だ、と言われています。

そして彼らは誰もが皆、素早く仕事をこなす優秀な労働者なのです。

 

特権階級のしゃれ男なんかじゃないし、かと言って、警察官ともずいぶん違います。

もち論、今の有名スポーツ選手たちとも違って、好奇心旺盛だったりお茶目だったりもしません。

 

この「メネフメ」の名で知られ、元祖であり血統が純粋のブラウニーたちは、とても勤勉な種族だと伝えられています。

 

メネフネは本当に居た

ハワイの人々の心にメネフネが深く根付いているのは、彼らに驚異的なパワーがあるからです。

そして山のように膨大な作業も、ほんの短時間で片付けてしまう、と伝えられています。

 

多くのハワイの人々は、島々の色々な場所に残る、メネフネが造った建造物遺跡を例に挙げます。

そしてその遺跡こそが、メネフネがいたという伝承を、裏付けるものだと主張するのです。

 

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(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) スウィフト(Swift)、リリパットの小人たち(Lilliputians):

J. スウィフトは、18世紀前半に西欧で活躍した、アイルランドの風刺作家です。

彼は、1726年に出版した「ガリバー旅行記」で、リリパット国に住む小人たちを描きました。

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, X.Stories of the Menehunes, p.107.

 

 

003 ハワイはブラウニーの故郷:(1) 旧大陸に似たハワイの民話

ハワイは旧大陸と似ている?

学生たちがハワイの民話を学ぶと、それが他の地域の民話と良く似ている事に気づきます(*1)。

興味深いハワイ民話の多くが、ハワイ以外の地や旧大陸(ヨーロッパ・アジア・アフリカ)で、伝承されてきたお話や、歴史に残る重要な考えなどと一致しているのです。

民話だけでなく、ハワイの昔の人々の習慣についても、ある程度、同じことが言えます。

 

その理由は謎のまま

しかし、「なぜ旧大陸の民話と一致するのか?」 を解き明かすのは困難です。

なぜならば、何よりもまず、ハワイ人が文字を持たなかったからです。

そのため謎解きの手がかりも、文字として残ることはなく、また子孫にも受け継がれませんでした。

 

聖書の歴史物語と似ている

フォルナンダーらは、ハワイの人々の伝説の中に、聖書に似た部分を発見しました。

たとえば、大洪水、太陽が止まる、そしてこれ以外でも、聖書の歴史物語に似ている部分があるのです(N.1)。

 

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ある学者たちはこの発見を受けて、それはハワイ人の祖先がアーリア人であることの証(あかし)だ、としています。

 

伝統ある幻の種族

しかし、今この主張について議論するつもりはありません。

ここではその代わりに、もう一つの伝統ある種族をご紹介したいのです。

彼らはこれまでずーっと、顧みられることがありませんでした。

しかし、素晴らしく興味深い人達であること受け合いです。

どうぞお楽しみに!

(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) 大洪水(Flood)、太陽が止まる(standing still of the sun):

「大洪水」とは、旧約聖書の中の「律法[モーゼ五書]」、第1巻:創世記、第6〜9章:ノアの方舟、を指します。

「太陽が止まる」とは、旧約聖書の中の「歴史書」、第6巻:ヨシュア記、第10章:カナン南部の戦い、に記された 「日よとどまれギブオンの上に--」 を指します。

(注記)

(*1) T.G.Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, X.Stories of the Menehunes, Hawaii the original home of the brownies, T.G.Thrum, p.107.

 

 

002 メネフネのお話しの始まりー!

ハワイの民話

スラムさんが 「ハワイの民話 (Hawaiian Folk Tales)」 を、シカゴの出版から世に出したのは、今から百年以上も前 1907年のことでした(*1)。

 

300ページ近くにおよぶこの著書は、全部で25章から成っています。

原則として各章に一つのお話しが収められています。

 

メネフネのお話し集

その中で 「第Ⅹ章 メネフネのお話し集」 は 特別です。

全体が6つに分かれ、始めの2つは解説文で、残りの4つがメネフネのお話です。

 

(解説文)

1.ハワイはブラウニーの故郷  スラムさん

2.モケ・マヌさんが語る    モケ・マヌさん(語り), スラムさん(記)

(メネフネのお話し)

3.ピーの水路        スラムさん

4.ラカの冒険        スラムさん

5.ケクプアのカヌー     スラムさん

6.ヘイアウを造る      スラムさん

 

次回からは、「メネフネのお話し集」 の内容を、上の1から6の順にご紹介していきます。

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, X.Stories of the Menehunes, p.107.