(前回からの続き)
コワリの蔓(つる)を集める
ヒクは、カウェルの友達たちに手伝ってもらいながら、
山の斜面から膨大な量のコワリ、すなわちセイヨウヒルガオ属の蔓(つる)、を集めました(*1)(N.1)。
ココナッツの殻を用意する
彼はさらに、中空のココナッツの殻(から)を1つ用意しました(N.2)。
殻は2つに割られ、割口が隙間(すきま)無くぴったり合うように、整形されています。
ヒクの体から死臭が漂う
それから自分自身を清めようと、腐ったような臭いを放つ、ココナツ油とククイ油の混合物、を体に塗りました(N.3)。
すると彼の体から、まるで死体のような強烈な悪臭、が漂うようになりしました。
(次回に続く)
(ノート)
(N.1) コワリ(kowali):
コワリは、ヒクが集めた蔓(つる)性植物のハワイ語名で、セイヨウヒルガオ(convolvulus)はその学名(属名)です。従ってハワイ語名コワリは、セイヨウヒルガオ属に含まれる数多い種の総称と言えます。
なお、以前はセイヨウヒルガオ属の種だった"Convolvulus cairicus"は、その後、学名が変わり"Ipomoea cairica"と呼ばれています。
(N.2) 中空のココナッツの殻(hollow cocoanut shell)):
ココナッツはココヤシの果実です。この果実は、外側を覆う繊維質の厚い殻(shell)と、その内部にある大きな種子から成ります。そして種子は、周縁部の固形胚乳および中心部の液状胚乳から成り、各々、生食用やヤシ油の原料、および飲食用等として利用されます。
ここで言う、中空のココナッツの殻とは、上記の果実から種子を取り除いた残りの部分、を指すと思われます。
ククイ油は、ククイの木の実から採った油で、容易に酸化して臭(くさ)くなります。
ククイナッツ・レイに魔除け効果があるとされるのは、この臭い匂いのお陰です。
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅴ. Hiku and Kawelu, J.S. Emerson, p.43-48.