夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

052 ヒクとカウェル:(7) コワリのつると死臭のオイル


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(前回からの続き)

コワリの蔓(つる)を集める

ヒクは、カウェルの友達たちに手伝ってもらいながら、

山の斜面から膨大な量のコワリ、すなわちセイヨウヒルガオ属の蔓(つる)、を集めました(*1)(N.1)。

 

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ココナッツの殻を用意する

彼はさらに、中空のココナッツの殻(から)を1つ用意しました(N.2)。

殻は2つに割られ、割口が隙間(すきま)無くぴったり合うように、整形されています。

 

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ヒクの体から死臭が漂う

それから自分自身を清めようと、腐ったような臭いを放つ、ココナツ油とククイ油の混合物、を体に塗りました(N.3)。

すると彼の体から、まるで死体のような強烈な悪臭、が漂うようになりしました。

 

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(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) コワリ(kowali):

コワリは、ヒクが集めた蔓(つる)性植物のハワイ語名で、セイヨウヒルガオ(convolvulus)はその学名(属名)です。従ってハワイ語名コワリは、セイヨウヒルガオ属に含まれる数多い種の総称と言えます。

なお、以前はセイヨウヒルガオ属の種だった"Convolvulus cairicus"は、その後、学名が変わり"Ipomoea cairica"と呼ばれています。

 

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(N.2) 中空のココナッツの殻(hollow cocoanut shell)):

ココナッツはココヤシの果実です。この果実は、外側を覆う繊維質の厚い殻(shell)と、その内部にある大きな種子から成ります。そして種子は、周縁部の固形胚乳および中心部の液状胚乳から成り、各々、生食用やヤシ油の原料、および飲食用等として利用されます。

ここで言う、中空のココナッツの殻とは、上記の果実から種子を取り除いた残りの部分、を指すと思われます。

(N.3) ククイ油(kukui oil):

ククイ油は、ククイの木の実から採った油で、容易に酸化して臭(くさ)くなります。

ククイナッツ・レイに魔除け効果があるとされるのは、この臭い匂いのお陰です。

 

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(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅴ. Hiku and Kawelu, J.S. Emerson, p.43-48.