夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

050 ヒクとカウェル:(5) カウェルの深い愛


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(前回からの続き)

心を奪われたカウェル

この「矢探しごっこ」でのヒクの快挙、そしてこの青年の際立った気品と美貌が、

王女の心をすっかり掴(つか)んでしまったのでした(*1)。

やがて彼女は、彼への強く激しい情熱に、取り憑(つ)かれてしまいました。

そして、彼を自分の夫にしようと決意したのでした。

 

ヒクを家に閉じ込める

あれこれと巧(たく)みに策をめぐらして、彼女は幾日間かの間、彼を自分の家に引き留めました。

そして、いよいよ彼が山に向けて、出発しようとした時のことです。

彼女は彼をあの家の中に、閉じ込めてしまいました。

結果として、彼を力ずくで拘束てしまったのです。

 

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屋根裏から逃げ出す

しかし彼の心には、諭(さと)すようなあの母の言葉が、思い浮かびました。

「あまり長居するんじゃないよ。」

そして彼は、軟禁所から逃げ出そうと、決意しました。

そこでまずは、屋根の裏面までよじ上りました。

それから屋根葺(ふ)き材の一部分を取り除くと

その隙間(すきま)から、逃げ出してしまいました(N.1)

(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) 屋根葺(ふ)き材(thatch):

かつてハワイでは屋根を葺(ふ)くのに、ピリ(Pili)と呼ばれる、日本の茅に似た草を使っていました。

広く熱帯地域に自生する多年草で、学名は"Heteropogon contortus"、日本語名は赤髭茅(アカヒゲガヤ)です。

ハワイ語名のピリは、かつてハワイ島の王だった、ピリカアイア(Pilikaʻaeia, 1125-1155)に由来する と言われています。

 

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(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅴ. Hiku and Kawelu,  J.S. Emerson, p.43-48.