(前回からの続き)
守護神フクロウの悪戦苦闘
忠実なフクロウはその女性の遺体をめざして、足で土を引っ掻(か)いて、排除しようとしました(*1)。
ところが彼の爪に、無数に伸びる大小の木の根が、絡(から)み付いて来ました。
それはカウヒが穴を掘った時に、切り落とさぬように、注意して残した根でした。
そして、フクロウが引っ掻けば引っ掻くほど、ますますその根が絡みついて来るのでした。
彼女の救出をあきらめる
そのため爪はどれも傷だらけ、おまけに羽はくしゃくしゃでした。
そしてとうとう、フクロウは女性を救うことを、あきらめざるを得なくなったのでした。
ひょっとすると、彼は 「彼女を救っても無駄だ。」 と思ったのかも知れません。
何故(なぜ)って、カハラオプナは自分が復活すると必ず、カウヒに知らせてしまうのですから。
こうしてフクロウはその場を去り、ワイキキに戻るカウヒの後を追ったのでした。
守護神エレパイオが両親のもとに飛ぶ
さて、カウヒの残虐行為の数々を目撃した者が、もう一羽いました。
それがエレパイオ、小さな緑色の鳥で、カハラオプナの一族でした(N.1)(N.2)。
あのフクロウが、カハラオプナの遺体を見捨てたのを見るや否や、
エレパイオは一目散に、カハウカニとカウアクアヒネのもとへ飛びました(N.3)。
そして、彼らに一部始終を話したのでした。
両親たちは何も知らなかった
彼らはカハラオプナがいないことに、気付いていました。
しかし召使たちの何人かは、カウヒが訪ねて来たのを知っていました。
さらに、2人が一緒に出かける姿を見ていたのでした。
そこで召使いたちは 、「すぐ隣の森の中を、2人で散歩でもしているのだろう。」 と思っていたのでした。
ですから、これまで特に不安に思うことはありませんでした。
エレバイオの話に驚愕する
ところが、この小さく可愛らしい鳥の話しを聞いてみると、それは、とてつもなく恐ろしいものでした。
しかもそれは、明確でとても否定し難い疑惑でした。
彼らは互いにこう言い合いました。
「あんなに愛らしく純真な娘に、そんな残酷なことをするとは! とても正気の沙汰とは思えない。
しかも、その娘は彼の許嫁(いいなずけ)だから、完全に彼のものなのに。」
>(次回に続く)
(ノート)
(N.1) エレパイオ(Elepaio):
エレパイオはハワイで大変人気がある小鳥です。その姿はふっくらと丸く、とても人なつっこい鳥だそうです。早朝から夕方まで大きな声で鳴き続けるさえずりが、エレパイオ(e-le-PAI-o)と聞こえると言われています。
なお、エレパイオというハワイ語は、生物分類上のハワイヒタキ属(Chasiempis)の小鳥を指しています。 その中で現在、一般的には、ハワイ島に生息する種を"Chasiempis sandwichensis"、オアフ島に生息する種は"Chasiempis ibidis"と呼んでいます。
(N.2) 一族(cousin):
「エレパイオは -- カハラオプナの一族」と記しているので、既出のフクロウと同様に、エレパイオもカハラオプナの家族神(アウマクア)であることがわかります。
(N.3) カハウカニ(Kahaukani), カウアクアヒネ(Kauakuahine):
カハウカニはカハラオプナの父、そしてカウアクアヒネは母です。前者は「マノアの風」、そして後者は「マノアの雨」と呼ばれていました。
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅺ. Kahalaopuna, Princess of Manoa. Mrs. E.M. Nakuina, p.118-132.