夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

163 カアラとカアイアリイ:(17) 愛し合う2人の別れ

(前回からの続き ) 愛するカアラとの別れ さて意を決した英雄は、涙を流して泣く少女(カアラ)の、固く握っていた手を放しました(*1)。 彼の目は冷静で落ち着いていました。 しかし彼の閉じた口は、強く優しい愛の心の奥底、を表わしていました。 彼はこの短…

162 カアラとカアイアリイ:(16) 行きも帰りも空を飛べ

(前回からの続き ) あなたは私の生きる力 あの可愛らしいジャスミン(カアラ)は、彼の首に両腕を巻き付けました(*1)。 そして、彼の胸に頬(ほほ)を擦り寄せながら、ちらっと顔を見上げてこう言いました。 「おお私の首長よ。あなたは私に、生きる力と素晴らし…

161 カアラとカアイアリイ:(15) 行きなさい、愛するカアラよ!

(前回からの続き ) カアイアリイが愛を語る 英雄はたくましい片腕を若き恋人に絡(から)ませて、しっかりと抱きしめました(*1)。 そして彼女の目をじっと見つめながら愛情を込めた手で、輝く髪を額(ひたい)から払い除(の)けました。 こうして彼は、自らの生き…

160 カアラとカアイアリイ:(14) 母の危篤を知る

(前回からの続き ) 父が母の危篤を告げる さてその朝、血色良い茶色の頬(ほお)の少女(カアラ)は、眩(まぶ)しい愛の兆(きざ)しに顔を紅潮させながら、 ご主人(カアイアリイ)の小屋の入口に立ちました。 彼女の顔面は、太陽の光を受けてキラキラと輝いていまし…

159 カアラとカアイアリイ:(13) 父の怒りと決意

(前回からの続き ) カアラの父が嘆く これを見て、頑丈そうだが白髪混じりの島の男が、泣きながら声を張り上げて訴えました(*1)。 「カアラよ、私の子カアラが行ってしまった。 私がオフアを槍で突く漁から帰った時、一体誰が、私の手足の疲れを癒してくれる…

158 カアラとカアイアリイ:(12) さあ勝利の宴だ

(前回からの続き ) 大王がカアイアリイの勝利を宣言する 「よーし!」 と 大王が叫びました(*1)。 「我らの若者(カアイアリイ)は、カネコアのように強いぞ(N.1)。 さあ、我らの娘さん(カアラ)に、彼女が愛する人の手足をもんで、癒してもらおう! 彼の皮膚を…

157 カアラとカアイアリイ:(11) マイロウが倒れる

(前回からの続き ) 攻撃のチャンスを狙う そして今や、彼らは両腕を高くかざして、互いに相手を引き寄せ合いながら、満身の力を込めて両手のひらを広げます(*1)。 それはちょうど、筋骨隆々としたカニのハサミが、獲物にぐいっと掴(つか)みかかろうとしてい…

156 カアラとカアイアリイ:(10) 決闘が始まる

(前回からの続き ) 大王がコウの木の日陰に座る 闘(たたか)いの時が、刻一刻と近づいて来ました(*1)。 大王は、葉の生い茂ったコウの木の下に、座りました(N.1) 。 かつてコウの木は、「高貴な木」とされていたのです。 しかし王族たちがいなくなると共に、か…

155 カアラとカアイアリイ:(9) カアラを襲う恐怖と愛

(前回からの続き ) カアラを襲う恐怖 可愛そうな乙女(カアラ)は、もとより残忍な剛腕者も意に介さない人でした(*1)。 しかしボーン・ブレーカーと言う、あの恐ろしい名前を聞くと、彼女は両手を組んで高く掲げて、全身で驚きを表わしたのでした。 と言うのも…

154 カアラとカアイアリイ:(8) カアラは決闘で勝ち取れ!

(前回からの続き ) 勇猛なカアイアリイ カアイアリイは、数多くの虐殺者と同じように、見かけは立派(りっぱ)でした(*1)。 彼はライオンのように勇猛な心の持ち主で、肌はライオンのような黄褐色でした(N.1)。 カールした眉毛(まゆげ)の後ろからは、浅黒い上…

153 カアラとカアイアリイ:(7) 二人の出会い

(前回からの続き ) そよ風がカアラのスカートを揺らす あの「甘い香りの娘」 カアラには、まさか自分が悲惨な目に遭うとは、思いもよりませんでした(*1)。 というのは、まるで緑の剣の束のように彼女の腰から垂れ下った、ラーイー(ドラセナ)の長い葉を、遊び心…

謹賀新年

新年おめでとうございます。 今年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

152 カアラとカアイアリイ:(6) この島はエデンの園

(前回からの続き ) 島の暮らしは健康的 文明の波がこの島々に押し寄せる前、人々の生活は健康的で清潔でした(*1)。 彼らはいつも水浴びをしては、穏やかなそよ風を楽しんでいました。 ですから、しなやかできびきびした手足は、頑強でぴかぴか輝いていました…

151 カアラとカアイアリイ:(5) カアラの甘い香り

(前回からの続き ) ひときわ輝くカアラ この島々の恐れ多き大王の前に、大勢の若い女性たちが集まっていました(*1)。 そのなかで、ひときわ輝いていたのがカアラ、 「甘い香りの娘」でした。 彼女の15の太陽は、彼女の甘い褐色の顔を、柔らかい黄金色に輝かせ…

150 カアラとカアイアリイ:(4) 山のような贈り物

(前回からの続き ) 島の産物を献上する この戦士である王がカウノルにやって来ると、島民たちはどっと海辺に押し寄せて、大王に忠誠を誓いました(*1)。 そして彼らの国王の足元に、いつものように、この島で採れた数々の産物を並べました。 タロ、ヤム、ハラ…

149 カアラとカアイアリイ:(3) 大王がやって来た

(前回からの続き ) カメハメハ大王がやって来た この有名な漁場に、ハワイの偉大なる英雄がやって来ました。 この島や他の島々を制圧した彼は、深海に税を課そうと考えたのです。 彼は戦闘用のカヌーの艦隊を引き連れてやって来ました。 随行したのは、彼の…

148 カアラとカアイアリイ:(2) カネアプアの岩とカウノル村

(前回からの続き ) カネアプアの岩海辺では、とてつもなく大きな陥没に遭遇します(*1)。自然界の何らかの激変により、断崖の先端部から巨大な岩塊がもぎ取られています。 もぎ取られた岩塊は、まるで孤立した塔のように海面から突き出ています。海中にまで伸…

147 カアラとカアイアリイ:(1) ラナイ島南西端の断崖

(新しいお話の始め) ラナイ島南西岸の遺跡 かつて、ラナイ島の南西岸にあるケアリアの地に隣接して、プウホヌアと呼ばれる駆け込み寺がありました(*1)(N.1)。 現在そこには古いヘイアウ、すなわち神社の跡があり、その地域一帯はカウノル遺跡と呼ばれていま…

146 プウペヘの墓:(8) マカケハウの哀歌

(前回からの続き) プウペヘを墓に納める マカケハウは亡き愛する人を、墓に納める作業を終えました(*1)。 そして彼女の墓の上に、最後の石を置きました。 彼はそれから両腕を広げると、プウペヘの死をこう嘆き悲しみました。 マカケハウの哀歌が響く 「 おー…

145 プウペヘの墓:(7) 岩塊に道は無い

(前回からの続き) 彼女と2人だけにして 彼らは埋葬しようとして、彼女の遺体を準備しました(*1)。 そして、彼女をマネレの墓地に納めようとした、その時でした。 マカケハウが、強くこう願い出ました。 「もう一晩だけ、亡き愛する人と、2人だけにさせて下…

144 プウペヘの墓:(6) プウペヘの死

(前回からの続き) この中に愛する人がいる しかし愛する人が、この沸き返り渦巻いている、大きな穴の中にいるのです(*1)。 その彼にとって、この荒れ狂う奔流が何だというのでしょうか? 一体全体、この沸き立つ泡の真っただ中で、何を確かめようと言うのだ…

143 プウペヘの墓:(5) 潮を吹く洞窟

(前回からの続き) マカケハウが走る マカケハウは、水を蓄えたヒョウタンを荒々しく投げ捨てると、急斜面を駆け下りました。 そして広大な渓谷を横切ると、それを縁取る丘を超えて、突き進みました。 そこでは嵐の暴風雨が、激しく吹き荒れていました。 彼は…

142 プウペヘの墓:(4) 恐ろしい嵐がやって来る

(前回からの続き) マカケハウは山へ水汲(くみ)に行った ある日のことです。 マカケハウは、愛する人をマラウエアの洞窟に残して、出かけて行きました(*1)。 彼は山の泉に行って、ヒョウタンで作った水入れに、おいしい水を満たして来ようとしたのです。 この…

141 プウペヘの墓:(3) 2人は最高に幸せだった

(前回からの続き) カルルの豊かな海 彼はこう言いました。「澄みきったカルルの海へ行こう! そこで一緒に魚を捕(つか)まえよう、カラやアクを釣るんだ。 そしてそこで、僕は槍でカメを突(つ)こう。 最愛のあなたよ、僕はあなたを隠すだろう。 -- 永遠にマラ…

140 プウペヘの墓:(2) うら若き乙女と若き戦士

(前回からの続き) プウペへの美しい肌・髪・目 この乙女プウペへは、ハワイに美しく咲き誇る、甘い香りの花のようでした。 彼女の肌はつややかな褐色で、しみ1つありませんでした。 「そしてちょうど、ハレアカラ山から昇る鮮やかな太陽、のように光り輝きまし…

139 プウペヘの墓:(1) ラナイ島南西部

(新しいお話の始め) 有名な伝説の地 ハワイには、古い歌や昔話で有名な、興味深い伝説の地が幾つもあります(*1)(N.1)。そのうちの一つがラナイ島の南西部にあり 、「クパパウ・オ・プウペヘ」、すなわち 「プウペヘの墓」 の名で知られています(N.2)。 島の風下側…

138 アフウラ:(12) フェザー クローク

(前回からの続き) カカアラネオのフェザー クローク 最初のフェザー クロークは、「アフ オ カカアラネオ」の名で知られ、ビショップ博物館が所蔵している、と言われています(*1)(N.1)。 そのフェザー クロークは、かつて公式行事において、ナヒエナエナ王女…

137 アフウラ:(11) カニカニアウラは王女に

(前回からの続き) 大変貴重な物がある クキニ(使者)は答えました(*1)。 「もしも死なねばならぬなら、主君の足元で死ぬことこそが、忠臣の願望でした。 しかし我が主君よ、もしもそうならば、 それはあなた様にとって、取り返しのつかない大きな損失になるで…

136 アフウラ:(10) イム焼きを逃れる

(前回からの続き) もしも日暮れまでに戻らなかったら 2人は、カニカニアウラの体力に合わせて、ゆっくりと進みました(*1)。 今や彼女には肉体があるので、霊だった時のようなスピードでは、動けなかったのです。 ラウニウポコに着くと、エレイオは振り向い…

135 アフウラ:(9) 彼女は王女にふさわしい

(前回からの続き) 彼女はこの島の王女にふさわしい しかしこのお話しの主人公は、この上ない慎(つつし)み深さと忠誠心から、こう言いました(*1)。 「いいえ私は、彼女の妻ではなくて、彼女の保護者になりましょう。 彼女に相応(ふさわ)しいのは、私よりももっ…