夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

054 ヒクとカウェル:(9) 死者の世界


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(前回からの続き)

死者の世界に入る

やがてヒクは、とてつもなく大きな洞窟に入りました(*1)。

そこには、死者たちの霊が寄り集められていました。

 

ヒクが霊たちの間に入って行くと、彼らは好奇心にかられました。

「一体、この男は何者なんだろう?」

 

ヒクの悪臭がミル王をだます

ヒクの耳には、あれこれ噂する声が聞こえて来ました。

たとえばこんな風に、

 

「ヒャー!この死体。何と言うひどい悪臭を放つんだ!」

「奴は間違いなく、死んでから大分経っているぞ。」

 

彼は悪臭がする油を、かなり塗り過ぎてしまったのでした。

 

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土手の上にはミル王が座り、群がる霊たちを監視していました。

しかしその王自身さえも、このヒクの悪臭戦略に、すっかり騙(だま)されてしまったのでした。

 

何故(なぜ)って、もしそうでなければ、王は決してヒクを許さなかったはずですから。

この薄暗く陰気な王の棲家(すみか)に、大胆にも生きた人間が下りて来るなど、あり得ないことなのです。

 

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カウェルの霊がヒクを見つめる

ところで、ここで気を付けたいのは、ハワイのブランコは私たちのとは違う、と言うことです。

 

ハワイではロープは一本しかなく、それが十字に組んだ棒を支えています

そしてこの十字の棒の上に、ブランコに乗る人が座るのです。

 

さて、ヒクと彼のブランコは、見物していた霊たちから、大変な注目を浴びました。

 

その中でもある一つの霊が、無我夢中でじっと彼を見つめました。

そうですその霊こそが、彼の愛するカウェルだったのです。

(次回に続く)

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅴ. Hiku and Kawelu,  J.S. Emerson, p.43-48.