(新しいお話しの始め)
渓谷に突き出た尾根アカアカ
「アカアカ(笑い)」 は、1つの突き出した尾根です(*1)(N.1)(N.2)。
それはマノア渓谷の一番奥にあり、背後の山岳地帯から渓谷内に突き出ています(N.3)。
そうです、アカアカは尾根という形を取りながら、ワイアケアクア川 「神々の水」 、さらにはその先へ伸びているのです。
尾根に咲く花ナレフアアカアカ
その昔、アカアカはナレフアアカアカと結ばれ、結婚しました(N.4)。
このことを象徴するように、今でもオヒア・レフアの低木が、アカアカの尾根のちょうど上に生えています。
(次回に続く)
(ノート)
(N.1) (執筆者)ナクイナ(Mrs. E.M. Nakuina):
このお話の執筆者ナクイナさんが生まれたのは、オアフ島ホノルル市内のマノア渓谷、ちょうどこのお話の舞台になった場所です。
彼女はハワイで初の女性裁判官と言われますが、また第7代国王カラカウアの妃カピオラニの女官も務めました。
一方、ハワイの文化や民話にも力を注ぎ、数多くの作品を残しています。スラムさんの著書「ハワイの民話(1907)」の中にも、彼女が執筆したお話が幾つもあり、この「カハラオプナ, マノアの王女」もその1つです。
(N.2) アカアカ(笑い)(AKAAKA (laughter)):
「アカアカ」はハワイ語で、その一般的な意味は「笑い」ですが、このお話の中では1つの尾根の呼称です。すなわち、マノア渓谷の一番奥にあり、渓谷内に突き出ている尾根の名前がアカアカです。
但し、後述されるように、アカアカは結婚して子供も生まれます。
(N.3) マノア渓谷(Manoa Valley):
マノア渓谷は、オアフ島の東岸に伸びるコオラウ山脈の南東端近くで、州都ホノルルの東部にあります。
今では、この渓谷の入口近くにハワイ大学本部(マノア校)がある他、渓谷の奥に向けて住宅地が伸びています。また、トレッキング・コースとしても人気があり、渓谷の一番奥にはマノア滝をはじめ、いくつもの滝があります。乾季でも降雨量が多いため、良く虹がかかることでも知られています。
(N.4) ナレフアアカアカ(Nalehuaakaaka):
「ナレフアアカアカ」はアカアカの妻の名前ですが、この語は "Na-lehua-akaaka"のように3つの語に分解できます。
1番始めの"na"は定冠詞(複数形)、2番目"lehua"はオヒア・レフア( ʻōhiʻa lehua)という植物に咲く花の名前、そして3番目"akaaka"は彼女の夫の名前です。
従って、これを直訳すると「アカアカのレフアの花たち」ですが、アカアカが尾根の名前でもあることを考慮すると、「アカアカの尾根に咲くレフアの花たち」 と訳せます。
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅺ. Kahalaopuna, Princess of Manoa. Mrs. E.M. Nakuina, p.118-132.