夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

056 ヒクとカウェル:(11) ロミロミと生命の息吹


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(前回からの続き)

 

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かけがえのない荷(カウェルの魂)を携えて、彼らはホルアロアの海岸に戻って来ました(*1)

上陸するとすぐに、ヒクは愛する人の体がまだ置かれている建物に行きました。

 

カウェルの魂を肉体に閉じ込める

その体の横に膝まづくと、彼は左足の親指に1つの孔(あな)を開けました。

 

そしてその孔の中に、四苦八苦しながら、嫌(いや)がる魂を押し込みました。

彼はそれから、魂の必死のもがきにも拘(かかわ)らず、傷口に包帯をしてしまいました。

 

そのため、今や魂は逃げ出すことが出来ず、

冷たくてべとべとした肉体の中に、閉じ込められてしまったのです。

 

ロミロミが生命の息吹をもたらす

それから彼はその足に、ロミロミ、すなわち、擦(こす)りマッサーをし始めました(N.1)。

こうして少しずつ魂を体の上へ上へと動かして、脚まで持って行きました。

 

そして魂が心臓に行き着くと、体中の至る所で再び、ゆっくりと血液が流れ出しました。

やがて肺が緩やかに膨らみ始めて、生命の息吹である呼吸が始まりました。

 

そして間もなくすると、魂は興味津々(きょうみしんしん)な様子で、2つの目を通してじっと外を見つめたのでした。

 

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(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) ロミロミ( lomilomi):

ロミロミとは、古くからハワイに伝わる伝統的なマッサージをすることです。このロミロミは、ほとんどの病気に効くだけでなく、死の瀬戸際にある人を救うことも出来る、とも言われています(*2)。

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅴ. Hiku and Kawelu, J.S. Emerson, p.43-48.

(*2) R. Makana Risser Chai(2005): Na Mo'olelo Lomilomi; Traditions of Hawaiian Massage and Healing, Bishop Museum Press.