夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

070 カペエペエカウイラ (カナの岩):(13) ニヘウの上陸


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(前回からの続き)

滑って転んだのさ

そうしているうちに、カナはニヘウに命じて、母を捜(さが)しに行かせました(*1)。

「和(なご)やかにやるんだぞ。」 と、カナが言いました。

 

ニヘウはピョンと、岸へ飛び降りました。

しかし、つるつるした岩の上で滑って、転(ころ)んでしまいました。

 

気が動転したニヘウは、大慌(あわ)てでカヌーへ戻りました。

 

これを見たカナが、問い詰めました。

「何だって戻って来たんだ。」 

 

「滑って転んじまった。危うく死ぬところだったぜ。」 とニヘウが答えると、

「さあ、早く行くんだ!」 とカナはニヘウを怒鳴りつけました。

 

カニに砂をかけられたんだ

ツイていないニヘウは、再び岸へ飛び降りました。

すると今度は細長い目のスナガニ(オヒキ・マカロア)が現われ、砂を引っ掻(か)いて舞い上がらせました(N.1)。

 

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そして彼の目はとうとう、砂だらけになってしまいました。

そこで彼は再び、カヌーに戻って行きました

 

「目に入った砂を全部、取ってくれ!」

とニヘウが言うと、彼はそれを海水で洗い落としました。

 

「この馬鹿者が!」 と、カナが怒鳴りつけます。

 

「お前、下なんか見て、一体何を探していたんだ?

スナガニは鳥なんかじゃあないぞ。

 

上を見るんだ! ずうーっと上を見ていれば、砂なんか、入らなかったんだ。

さあ、もう一度行け!」

(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) オヒキ・マカロア(ohiki-makaloa)):

「オヒキ・マカロア」は、直前の語「長い目のスナガニ」)のハワイ語表記です。

一方、ハワイ語の辞書には、「ハワイ語のオヒキ(ʻō.hiki )はスナガニ(sand-crab)を意味し、その学名は"Ocypode ceratophthalma" であろう。」と記されています(*2)。

これに対応する代表的な英名は "horne-eyed ghost-crab" ですが、"horne-eyed sand-crab" とも呼ばれます。後者を直訳すると「角(ツノ)状の目のスナガニ」です。

日本では沖縄諸島の砂浜に生息し、和名は「ツノメガニ」です。

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅷ. Kapeepeekauila; or, The Rock of Kana. Rev. A.O. Forbes, p.63-73.

(*2) Mary Kawena Pukui, Samuel H. Elbert(1986) : Hawaiian Dictionary, Univ. of Hawaii Press, p.278.