夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

102 カハラオプナ:(27) 幸せな2年の果てに


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(前回からの続き)

幸せなカハラオプナ

約2年の間、カハラオプナは夫と一緒に幸せに暮らしました(*1)。

 

そのなかで彼女の叔父は、カウヒがサメに姿を変えたことを知りました。

また、カウヒが執念深い性格であることに気付いていました。

 

そこで叔父は、彼女に強く言って聞かせましたました。

「たとえ何があろうとも、海には絶対に入るんじゃないぞ。」

 

しばらくの間、彼女はこの警告を覚えており、注意を払っていました。

 

ところがある日、夫と使用人の男どもが揃(そろ)って、出かけてしまいました。

彼らはカロ(タロ)の手入れをしようと、マノアにある畑に向かったのでした(N.1)。

 

 

こうして彼女は、自分の召使いたちと共に、家に取り残されてしまいました。

 

サーフィンの誘惑

その日の波は、サーフィンにはなかなか良さそうでした(N.2)。

そして何人もの若い女性たちが、波乗りを楽しんでいました。

 

 

カハラオプナの心に、彼女らと一緒に楽しみたいと願う気持ちが、強く湧き上がりました。

こうなると、あの叔父の厳しい警告も、すっかり忘れ去られてしまいました。

 

母が眠りにつくや否や、彼女は召使いの1人と共に、こっそりと家を抜け出しました。

そしてサーフ・ボードに乗ると、沖に向けて漕(こ)ぎ出しました。

 

サメになったカウヒに襲われる

カウヒにとって、これは絶好のチャンスでした。

彼女がサンゴ礁のかなり外側の沖まで来た、その瞬間です。

 

彼は彼女の体に咬みつくと、真っ二つに食い千切ってしまいました。

それから彼女の上半身をくわえると、高々と水面上に掲げたのでした。

 

カウヒは、全てのサーファーたちに、彼女の噛み切られた体を見せつけたかったのです。

そして、彼が遂に復讐(ふくしゅう)を成し遂げたことを、人々にアピールしたかったのです。

(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) カロ(kalo) :

カロは、かつて主食だったポイ(poi)の材料として、古くからハワイで栽培されて来ました。他のポリメシア諸国や英語ではタロ(taro)の名で親しまれており、ハワイでもタロと呼ばれることがあります。日本語名はサトイモ(里芋)、学名は"Colocasia esculenta"です。

(N.2) サーフィン(surf-riding) :

サーフィンは、かつてのハワイでは最もエキサイティングなスポーツの一つでした(*2)。

厳しい階級社会にもかかわらず、王(king)、首長(chief)から平民(commoner)に至るまで幅広く人気がありました。

そこでは男も女も、そしてあらゆる年齢層の人々が、地域ぐるみでサーフィンを楽しみました。

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅺ. Kahalaopuna, Princess of Manoa. Mrs. E.M. Nakuina, p.118-132.

(*2) David Malo(1898): Hawaiian Antiquities, translated by N.B.Emerson, Honolulu Hawaiian Gazette, p.293-294.