夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

104 カハラオプナ:(29) 両親らが自然に還る


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(前回からの続き)

両親はマノアの風と雨になる

カハラオプナの最期を耳にすると、彼女の両親はマノアの渓谷に隠遁(いんとん)しました(*1)。

 

彼らは人間として生きることを、諦(あきら)めたのです。

そして、人間から超自然的存在へと、彼ら自身の姿を変えたのでした。

 

今では、彼女の父カハウカニは、「マノアの風」として知られています。

 

 

しかし、目に見えるいつもの彼の姿は、ハウ(ハイビスカス)の木立です(N.1)。

そうです、彼はカハイアマノの下に茂る、あの木立になったのです(N.2)。

 

そして母のカウアクアヒネは、雨になりました。

ですから私達は、彼女の愛する娘の家の辺(あた)りで、しばしばこの雨に出くわすことになるのです。

 

 

祖父母は山とレフアの姿に還る

さらに彼女の叔父と叔母もまた、人間の姿をとることをあきらめました。

そして叔父の方は、人間から山の姿に戻ったのでした。

 

一方、叔母の方はと言うと、こちらはレフアの低木になりました。

そして今でも、叔父の山の頂上に行けば、そのレフアの低木に出会うことが出来ます。

 

彼らはそこからずーっと、あの古い住まいを見守り続けているのです。

--- 彼らがかわいがり熱愛していた、あの孫娘の住まいを。

(終わり)

 

(ノート)

(N.1) ハウ(ハイビスカス)( ha-u (hibiscus)) :

ハイビスカスは、ハワイでも最もよく知られた花の1つです。このハイビスカスには数多くの種があり、「黄色いハイビスカス」と呼ばれるハワイ州花マオ・ハウ・ヘレ、もその中の1種で す。

本文に登場したハイビスカスはハワイ語名が「ハウ」ですから、学名 "Hibiscus tiliaceus"、和名「オオハマボウ」で、日本では沖縄などで見れます

かつてのハワイでは、大変利用価値の高い植物で、カヌーのアウトリガー、槍(やり)の柄(え)、魚網のブイなどに使われたそうです。

(N.2) カハイアマノ(Kahaiamano) :

カハイアマノは、カハラオプナが住んでいた家があった場所で、ワイアケクア(Waiakekua)に向かう道の途中にありました。

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅺ. Kahalaopuna, Princess of Manoa. Mrs. E.M. Nakuina, p.118-132.