(前回からの続き)
両親はマノアの風と雨になる
カハラオプナの最期を耳にすると、彼女の両親はマノアの渓谷に隠遁(いんとん)しました(*1)。
彼らは人間として生きることを、諦(あきら)めたのです。
そして、人間から超自然的存在へと、彼ら自身の姿を変えたのでした。
今では、彼女の父カハウカニは、「マノアの風」として知られています。
しかし、目に見えるいつもの彼の姿は、ハウ(ハイビスカス)の木立です(N.1)。
そうです、彼はカハイアマノの下に茂る、あの木立になったのです(N.2)。
そして母のカウアクアヒネは、雨になりました。
ですから私達は、彼女の愛する娘の家の辺(あた)りで、しばしばこの雨に出くわすことになるのです。
祖父母は山とレフアの姿に還る
さらに彼女の叔父と叔母もまた、人間の姿をとることをあきらめました。
そして叔父の方は、人間から山の姿に戻ったのでした。
一方、叔母の方はと言うと、こちらはレフアの低木になりました。
そして今でも、叔父の山の頂上に行けば、そのレフアの低木に出会うことが出来ます。
彼らはそこからずーっと、あの古い住まいを見守り続けているのです。
--- 彼らがかわいがり熱愛していた、あの孫娘の住まいを。
(終わり)
(ノート)
(N.1) ハウ(ハイビスカス)( ha-u (hibiscus)) :
ハイビスカスは、ハワイでも最もよく知られた花の1つです。このハイビスカスには数多くの種があり、「黄色いハイビスカス」と呼ばれるハワイ州花マオ・ハウ・ヘレ、もその中の1種で す。
本文に登場したハイビスカスはハワイ語名が「ハウ」ですから、学名 "Hibiscus tiliaceus"、和名「オオハマボウ」で、日本では沖縄などで見れます
かつてのハワイでは、大変利用価値の高い植物で、カヌーのアウトリガー、槍(やり)の柄(え)、魚網のブイなどに使われたそうです。
(N.2) カハイアマノ(Kahaiamano) :
カハイアマノは、カハラオプナが住んでいた家があった場所で、ワイアケクア(Waiakekua)に向かう道の途中にありました。
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅺ. Kahalaopuna, Princess of Manoa. Mrs. E.M. Nakuina, p.118-132.