夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

092 カハラオプナ:(17) 若者に救われる


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(前回からの続き)

若者がカハラオプナを掘り起こす

さて話は変わりますが、殺された女性(カハラオプナ)の霊は、いつの間にか、通りすがりのある一行に紛れ込んでいました(*1)。

 

その中の一人の若者が、彼女を思う深い同情心に駆られて、霊に教えられた木の所に行きました。

そして土や木の根を取り除いてみると、その体には未だ温(ぬく)もりがありました。

 

彼はそれを、自分のキヘイ(肩掛けスカーフ)で包みました(N.1)。

そしてマイレ、シダ、ショウガですっかり覆(おお)いました。

 

それからこの荷を背負うと、カモイリイリにある自分の家に運びました(N.2)。

 

守護神が彼女を生き返らせる

そこで彼は、彼女の体を兄に預けて、手当てして欲しいと頼みました。

 

兄は彼らの女性の守護神2人に呼びかけて、祈願しました。

この守護神たちに助けられて、彼らは遂に、彼女の体を生き返らせることに成功したのでした。

 

その一連の治療のなかで、彼女は頻繁に、地下水が湧く洞窟に連れて行かれました。

それはマウオキと呼ばれる場所て、彼女はそこでカケレケレ(水治療法)を受けました(N.3)。

 

それ以来、この地下水が湧く洞窟は、「カハラオプナの水」として知られています。

(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) キヘイ(kihei): 

キヘイとはスカーフ状の四角形の布で、羽織るときはマラソンのタスキのように、片方の肩に斜めにかけて結びます(*2)。

 

 

布はタパ製で、マイレ(maile)のような植物で香り付けされていました。

マイレの他にも、シダ(fern)( 中でも香りがマイレに似ているラウアエ) やショウガ(ginger)も使われました。

 

 

(N.2) カモイリイリ(Kamoiliili):

カモイリイリは、現在は モイリイリ(Moiliili)と呼ばれる地名で、マノア(Manoa)の南側でワイキキ(Waikiki)の北側にあります。また、かつての日系移民が拓いた町、としても知られています

(N.3) マウオキ(Mauoki):

マウオキは、ハワイ大学マウイ校の南東部(セントルイス高校とチャミネード大学付近)の地名だったと推定されます。かつてその地にマウオキ・ヘイアウ(神社)があった、と伝えられるからです(*3)。

 

 

(N.4) カケレケレ(Kakelekele): 

カケレケレ(=カケレ(Kakele))とは、体の表面を擦(こす)るとか、聖油(/聖水)を塗って清めること、を意味するハワイ語です(*4)。

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅺ. Kahalaopuna, Princess of Manoa. Mrs. E.M. Nakuina, p.118-132.

(*2) Mary Kawena Pukui, Samuel H. Elbert(1986) : Hawaiian Dictionary, Univ. of Hawaii Press, p.147.

(*3) Hawaiian Archaeological Survey (HAS):/(HOME)/ Site_Name: Mauoki Heiau, Kamoiliili (Des.), State_Site_Number: 50-80-14-062.

(*4) L. Andrews(,Rev.H.H.Parker)(1922): A Dictionary of the Hawaiian Language, Published by the Board, Honolulu,Hawaii., p.249.