(前回からの続き)
険しい山の斜面を登る
カウヒはその女性の近くまで上って来ると、自分の後についてくるように命じました(*1)。
2人は、マノア渓谷とヌウアヌ渓谷を分かつ尾根の、斜面を登って行きました。
この急な山の尾根を登ることは、優しく愛情深く育てられた乙女にとって、大変な重労働でした。
ある時は、イバラが絡み合う薮(やぶ)を通り抜けました。
そしてまたある時は、むき出しの岩肌を背にしながら、揺れ動く蔓(つる)にしがみついたのでした。
しかし、カウヒが彼女に救いの手を差し伸べることは、決してありませんでした。
それどころか、彼はひたすら進み続けました。
たまに振り返るのは、彼女がついて来るのを確かめる時だけでした。
尾根にたどり着く
やがて彼らは分水嶺の頂部、すなわち山の尾根に着きました。
彼女の体は切り傷や打撲のあざだらけで、パーウー(スカート)はボロボロにちぎれていました(N.1)。
石の上に座って呼吸を整えると、彼女はカウヒにこう尋ねました。
「私たちはどこに向かっているの?」
(次回に続く)
(ノート)
(N.1) パーウー(pa-u):
パーウーとは、かつてハワイの女性が着ていた代表的な衣服です。膝丈ぐらいのカパ布5枚程度を腰に巻き付け、スカート状にしたものです(*2)。
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅺ. Kahalaopuna, Princess of Manoa. Mrs. E.M. Nakuina, p.118-132.
(*2) L. Andrews(,Rev.H.H.Parker)(1922): A Dictionary of the Hawaiian Language, Published by the Board, Honolulu,Hawaii, p.534.