(前回からの続き)
あの灌木を引き抜けるか?
これを聞いカナは、小さな一本の木を指差して、ニヘウにこう言いました。
「お前、あの木を引き抜けるか?」
「出来るさ、」 とニヘウは答えました。
何故(なぜ)ってそれは、ただの1本の小さな木、だったのですから。
自分なら根こそぎ引き抜ぬける、と彼は信じて疑いませんでした。
そんなんじゃあ敵を倒せぬ
ニヘウはその木を引っ張り、次に、勢いをつけて力を込め、一気にぐいっと引き抜こうとしました。
しかし、その木はびくともしませんでした。
それを見ていたカナは、からかうように言いました。
「そんなんじゃあ、敵をやっつける事なんか出来んぞ。」
カナがカヌーを造る
カナは次に両手を前に伸ばすと、何やら森の中を引っ掻(か)き回していました。
そして暫(しばら)くすると、彼は片方の手に、一艘(そう)のカヌーを持っていました。
さらに少し後には、彼の反対側の手から、もう一艘のカヌーが現われました。
この良く似た一対のカヌーは、「カウムエリ」と名付けられました。
彼はそれらのカヌーを岸辺に降ろして、パドルを取り付けました。
そして14人の漕手(こぎて)を雇い入れました。
こうして彼らは、カペエペエカウイラと戦うための、旅に出たのでした。
(次回に続く)
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅷ. Kapeepeekauila; or, The Rock of Kana. Rev. A.O. Forbes, p.63-73.