夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

101 カハラオプナ:(26) サメの長老が連れ去る


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(前回からの続き)

長老ザメがカウヒらを連れ去る

カウヒと殉死者たちが焼かれたイム(地下式オーブン)は、アプアケハウ川の岸辺にありました(*1)(N.1)。

そこは有名なウルコウ果樹園の中で、海のすぐ近くでした(N.2)。

 

 

次の夜、とてつもなく大きな波が、その地に襲いかかりました。

波を送り込んだのは、巨大なパワーを誇る長老ザメの神で、カウヒの親族でした(N.3)。

 

その巨大な波は、オーブンがあった地をすっかり洗い流しました。

 

翌朝、そこに行って見ると、オーブンの中は空で何も無くなっていました。

カウヒらの骨は、あの長老ザメによって、海の中へ持ち去られてしまったのでした。

 

山頂とサメに姿を変える 

首長のクマウナとケアワアは、彼らの家族神のパワーのお陰で、その姿を大きく変えました(N.3)。

そして、マノア渓谷の東側の奥にある、2つの山頂になりました。

 

一方、カウヒと殉職者たちもその姿を変えて、サメになりました。

(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) アプアケハウ(Apuakehau)川 : 

運河が出来る前まで、ワイキキには3つの川があり、その中で一番大きいのがアプアケハウ川でした。

この川が海に注ぐ河口は、ワイキキで1番古い(1901年開業)モアナ・ホテルの近くにありました(*2)。

そのすぐ近くにはワイキキで2番目に古いホテル、ロイヤル・ハワイアンがありますが、このあたりはかつて王族たちが住んだ地で、ヘルモア(Helumoa)と呼ばれていました。

 

(N.2) ウルコウ果樹園(Ulukou grove):

ウルコウはワイキキ内の地名で、現在、モアナ・ホテルがある場所を指しています(*2)。

一方、"ulu"=果樹園、"kou"=コウ(樹木名)なので、この場所はかつて「コウの果樹園」だったと思われます。

コウはハワイの在来種で、生活用品の原材料として貴重でした。その木で作った容器は、食物を入れても味が変わらないため、色々な容器や台所用品に使われました。また、花はレイ(花輪)に使われ、葉はカパ布を染める染料などに使われたそうです。

 

(N.3) サメの神(shark god), 家族神(family god) :

家族神とは、神格化され神として崇(あが)められる祖先のことです。ハワイでは、この家族神がこの世に現れる時、様々な形を取る(化身する)とされ、その化身をアウマクア(ʻAumakua)と呼んでいます。

このお話しの中でこれまでに登場した家族神は、カハラオプナを助けた鳥たち(フクロウとエレパイオ)でした。

ここでは新たに、カウヒの家族神のアウマクアであるサメ、ハワイ語でマノ(manō)、が登場しました。このサメは、漁をする人々の間では最も良く知られた家族神です。

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅺ. Kahalaopuna, Princess of Manoa. Mrs. E.M. Nakuina, p.118-132.

(*2) Pukui et ai.(1974): Place names of Hawaii, p.13(ʻĀpua-kēhau), p.152(Moana Hotel).