(前回からの続き)
長老ザメがカウヒらを連れ去る
カウヒと殉死者たちが焼かれたイム(地下式オーブン)は、アプアケハウ川の岸辺にありました(*1)(N.1)。
そこは有名なウルコウ果樹園の中で、海のすぐ近くでした(N.2)。
次の夜、とてつもなく大きな波が、その地に襲いかかりました。
波を送り込んだのは、巨大なパワーを誇る長老ザメの神で、カウヒの親族でした(N.3)。
その巨大な波は、オーブンがあった地をすっかり洗い流しました。
翌朝、そこに行って見ると、オーブンの中は空で何も無くなっていました。
カウヒらの骨は、あの長老ザメによって、海の中へ持ち去られてしまったのでした。
山頂とサメに姿を変える
首長のクマウナとケアワアは、彼らの家族神のパワーのお陰で、その姿を大きく変えました(N.3)。
そして、マノア渓谷の東側の奥にある、2つの山頂になりました。
一方、カウヒと殉職者たちもその姿を変えて、サメになりました。
(次回に続く)
(ノート)
(N.1) アプアケハウ(Apuakehau)川 :
運河が出来る前まで、ワイキキには3つの川があり、その中で一番大きいのがアプアケハウ川でした。
この川が海に注ぐ河口は、ワイキキで1番古い(1901年開業)モアナ・ホテルの近くにありました(*2)。
そのすぐ近くにはワイキキで2番目に古いホテル、ロイヤル・ハワイアンがありますが、このあたりはかつて王族たちが住んだ地で、ヘルモア(Helumoa)と呼ばれていました。
(N.2) ウルコウ果樹園(Ulukou grove):
ウルコウはワイキキ内の地名で、現在、モアナ・ホテルがある場所を指しています(*2)。
一方、"ulu"=果樹園、"kou"=コウ(樹木名)なので、この場所はかつて「コウの果樹園」だったと思われます。
コウはハワイの在来種で、生活用品の原材料として貴重でした。その木で作った容器は、食物を入れても味が変わらないため、色々な容器や台所用品に使われました。また、花はレイ(花輪)に使われ、葉はカパ布を染める染料などに使われたそうです。
(N.3) サメの神(shark god), 家族神(family god) :
家族神とは、神格化され神として崇(あが)められる祖先のことです。ハワイでは、この家族神がこの世に現れる時、様々な形を取る(化身する)とされ、その化身をアウマクア(ʻAumakua)と呼んでいます。
このお話しの中でこれまでに登場した家族神は、カハラオプナを助けた鳥たち(フクロウとエレパイオ)でした。
ここでは新たに、カウヒの家族神のアウマクアであるサメ、ハワイ語でマノ(manō)、が登場しました。このサメは、漁をする人々の間では最も良く知られた家族神です。
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅺ. Kahalaopuna, Princess of Manoa. Mrs. E.M. Nakuina, p.118-132.
(*2) Pukui et ai.(1974): Place names of Hawaii, p.13(ʻĀpua-kēhau), p.152(Moana Hotel).