夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

2023-01-01から1年間の記事一覧

152 カアラとカアイアリイ:(6) この島はエデンの園

(前回からの続き ) 島の暮らしは健康的 文明の波がこの島々に押し寄せる前、人々の生活は健康的で清潔でした(*1)。 彼らはいつも水浴びをしては、穏やかなそよ風を楽しんでいました。 ですから、しなやかできびきびした手足は、頑強でぴかぴか輝いていました…

151 カアラとカアイアリイ:(5) カアラの甘い香り

(前回からの続き ) ひときわ輝くカアラ この島々の恐れ多き大王の前に、大勢の若い女性たちが集まっていました(*1)。 そのなかで、ひときわ輝いていたのがカアラ、 「甘い香りの娘」でした。 彼女の15の太陽は、彼女の甘い褐色の顔を、柔らかい黄金色に輝かせ…

150 カアラとカアイアリイ:(4) 山のような贈り物

(前回からの続き ) 島の産物を献上する この戦士である王がカウノルにやって来ると、島民たちはどっと海辺に押し寄せて、大王に忠誠を誓いました(*1)。 そして彼らの国王の足元に、いつものように、この島で採れた数々の産物を並べました。 タロ、ヤム、ハラ…

149 カアラとカアイアリイ:(3) 大王がやって来た

(前回からの続き ) カメハメハ大王がやって来た この有名な漁場に、ハワイの偉大なる英雄がやって来ました。 この島や他の島々を制圧した彼は、深海に税を課そうと考えたのです。 彼は戦闘用のカヌーの艦隊を引き連れてやって来ました。 随行したのは、彼の…

148 カアラとカアイアリイ:(2) カネアプアの岩とカウノル村

(前回からの続き ) カネアプアの岩海辺では、とてつもなく大きな陥没に遭遇します(*1)。自然界の何らかの激変により、断崖の先端部から巨大な岩塊がもぎ取られています。 もぎ取られた岩塊は、まるで孤立した塔のように海面から突き出ています。海中にまで伸…

147 カアラとカアイアリイ:(1) ラナイ島南西端の断崖

(新しいお話の始め) ラナイ島南西岸の遺跡 かつて、ラナイ島の南西岸にあるケアリアの地に隣接して、プウホヌアと呼ばれる駆け込み寺がありました(*1)(N.1)。 現在そこには古いヘイアウ、すなわち神社の跡があり、その地域一帯はカウノル遺跡と呼ばれていま…

146 プウペヘの墓:(8) マカケハウの哀歌

(前回からの続き) プウペヘを墓に納める マカケハウは亡き愛する人を、墓に納める作業を終えました(*1)。 そして彼女の墓の上に、最後の石を置きました。 彼はそれから両腕を広げると、プウペヘの死をこう嘆き悲しみました。 マカケハウの哀歌が響く 「 おー…

145 プウペヘの墓:(7) 岩塊に道は無い

(前回からの続き) 彼女と2人だけにして 彼らは埋葬しようとして、彼女の遺体を準備しました(*1)。 そして、彼女をマネレの墓地に納めようとした、その時でした。 マカケハウが、強くこう願い出ました。 「もう一晩だけ、亡き愛する人と、2人だけにさせて下…

144 プウペヘの墓:(6) プウペヘの死

(前回からの続き) この中に愛する人がいる しかし愛する人が、この沸き返り渦巻いている、大きな穴の中にいるのです(*1)。 その彼にとって、この荒れ狂う奔流が何だというのでしょうか? 一体全体、この沸き立つ泡の真っただ中で、何を確かめようと言うのだ…

143 プウペヘの墓:(5) 潮を吹く洞窟

(前回からの続き) マカケハウが走る マカケハウは、水を蓄えたヒョウタンを荒々しく投げ捨てると、急斜面を駆け下りました。 そして広大な渓谷を横切ると、それを縁取る丘を超えて、突き進みました。 そこでは嵐の暴風雨が、激しく吹き荒れていました。 彼は…

142 プウペヘの墓:(4) 恐ろしい嵐がやって来る

(前回からの続き) マカケハウは山へ水汲(くみ)に行った ある日のことです。 マカケハウは、愛する人をマラウエアの洞窟に残して、出かけて行きました(*1)。 彼は山の泉に行って、ヒョウタンで作った水入れに、おいしい水を満たして来ようとしたのです。 この…

141 プウペヘの墓:(3) 2人は最高に幸せだった

(前回からの続き) カルルの豊かな海 彼はこう言いました。「澄みきったカルルの海へ行こう! そこで一緒に魚を捕(つか)まえよう、カラやアクを釣るんだ。 そしてそこで、僕は槍でカメを突(つ)こう。 最愛のあなたよ、僕はあなたを隠すだろう。 -- 永遠にマラ…

140 プウペヘの墓:(2) うら若き乙女と若き戦士

(前回からの続き) プウペへの美しい肌・髪・目 この乙女プウペへは、ハワイに美しく咲き誇る、甘い香りの花のようでした。 彼女の肌はつややかな褐色で、しみ1つありませんでした。 「そしてちょうど、ハレアカラ山から昇る鮮やかな太陽、のように光り輝きまし…

139 プウペヘの墓:(1) ラナイ島南西部

(新しいお話の始め) 有名な伝説の地 ハワイには、古い歌や昔話で有名な、興味深い伝説の地が幾つもあります(*1)(N.1)。そのうちの一つがラナイ島の南西部にあり 、「クパパウ・オ・プウペヘ」、すなわち 「プウペヘの墓」 の名で知られています(N.2)。 島の風下側…

138 アフウラ:(12) フェザー クローク

(前回からの続き) カカアラネオのフェザー クローク 最初のフェザー クロークは、「アフ オ カカアラネオ」の名で知られ、ビショップ博物館が所蔵している、と言われています(*1)(N.1)。 そのフェザー クロークは、かつて公式行事において、ナヒエナエナ王女…

137 アフウラ:(11) カニカニアウラは王女に

(前回からの続き) 大変貴重な物がある クキニ(使者)は答えました(*1)。 「もしも死なねばならぬなら、主君の足元で死ぬことこそが、忠臣の願望でした。 しかし我が主君よ、もしもそうならば、 それはあなた様にとって、取り返しのつかない大きな損失になるで…

136 アフウラ:(10) イム焼きを逃れる

(前回からの続き) もしも日暮れまでに戻らなかったら 2人は、カニカニアウラの体力に合わせて、ゆっくりと進みました(*1)。 今や彼女には肉体があるので、霊だった時のようなスピードでは、動けなかったのです。 ラウニウポコに着くと、エレイオは振り向い…

135 アフウラ:(9) 彼女は王女にふさわしい

(前回からの続き) 彼女はこの島の王女にふさわしい しかしこのお話しの主人公は、この上ない慎(つつし)み深さと忠誠心から、こう言いました(*1)。 「いいえ私は、彼女の妻ではなくて、彼女の保護者になりましょう。 彼女に相応(ふさわ)しいのは、私よりももっ…

134 アフウラ:(8) 親族で再生を祝う

(前回からの続き) 少女が生き返る 「きっと上手くいくぞ! 」 と、誰も彼もが希望に満ち溢(あふ)れていました(*1)。 そして一同こぞって、これまで以上に心を込めて、祈りを捧げました。 一方、霊の方は、両肘(ひじ)と両手首を通り抜ける時に、僅(わず)かなが…

133 アフウラ:(7) 少女の喜びの叫び

(前回からの続き) 霊を肉体に戻す プオア(風葬場)に着くと、エレイオはその霊を、少女の足の甲にもたれかけるように置きました(*1)。 それから、霊を甲にぴったり密着させると、足の中にギュッと押し込みました。 その一方で、彼はその間ずーっと神に祈り続…

132 アフウラ:(6) 祭壇からプオアへ

(前回からの続き) 私に手を貸して下さい エレイオは、全ての女子供にこう命じました(*1)。 「自分の家に戻りなさい。そして私と一緒にお祈りをして下さい。 豚と鶏、それに犬たちは一匹残らず、暗い小屋の中につないで、静かにさせなさい。 もうこれ以上の静…

131 アフウラ:(5) ラナイと祭壇を作る

(前回からの続き) ちょっと待って下さい 両親は直ぐに、エレイオを養子にすることにしました(*1)。 そこで大きなブタを殺して、アハ アイナ(祝宴会)をしよう、と話し始めた時のことです(N.1)。 エレイオが こう言いました。 「ちょっと待って下さい。その前に…

130 アフウラ:(4) 霊からのメッセージ

(前回からの続き) 高床に横たわる死体を見る エレイオはプオア(風葬場)の中に入ると、高い床の上まで登りました(*1)。 彼女はどう見ても、先ほど彼の前に現われた、霊と同じくらい美しい人でした。 そして見た所、まだ腐敗が始まっていなようでした。 両親た…

129 アフウラ:(3) 女性の霊に頼まれる

(前回からの続き) 高貴な人の風葬場プオア エレイオが彼女に追いついたのは、あるプオアの入口でした(*1)。 プオアとは、ちょっとした塔のようなものです。 普通は竹で出来ていて、半分ぐらいの高さの所に床があります。 その上には、高貴な人々の死骸が横た…

128 アフウラ:(2) クキニよりも速い女

(前回からの続き) 島はずれのハナに行って来い! 使者のエレイオは、「ハナに行って、王のためのアヴァを取って来い。」と命じられました(*1)(N.1)。 さらに、「王の晩餐会に間に合うようにな!」 と言われたのです。 その時、王のカカアラネオはラハイナに住ん…

127 アフウラ:(1) 俊足の使者クキニ

(新しいお話の始め) 「クキニ」はプロの使者 エレイオはクキニ(熟練した使者)で、マウイ島の王カカアラネオに仕えていました(*1)(N.1)。 当時の王や有力なアリイ(首長)たちは各々、常に何人かのクキニを抱えていたのです。 どんな使いを命じられようと、彼ら…

126 オアフヌイ:(13) そして誰もいなくなった

(前回からの続き) キリキリウラは石に変わる キリキリウラが倒れた場所は、川を隔てて、レフアの木と反対側でした(*1)。 そして、彼女はそこで石に変わったと言われています。 その石は今でも、「これが、その時の石です!」 と指し示すことが出来ます。 川の…

125 オアフヌイ:(12) 息子を見捨てた妻を殺す

(前回からの続き) 妻に息子たちの消息を尋ねる 父であり夫でもある男(レフアヌイ)は、それから大股で、自分の寝家(ねや)に向かいました(*1)。 そこでは彼の妻が、一番下の子を両腕に抱いて眠っていました。 夫は妻を呼び起こすと、「息子たちはどうした? 」 …

124 オアフヌイ:(11) 王の首を切り落とす

(前回からの続き) 王はぐっすり寝入っていた 王の寝家(ねや)では、誰も彼もが眠入っていました(*1)。 その中で老女が唯1人で、ククイ・ナッツの灯(あか)り番をしていました。 王オアフヌイは手足を大の字に伸ばして、何枚も積み重ねた柔らかいマットの上で寝…

123 オアフヌイ:(10) 遺骨を首に巻く

(前回からの続き) 亡霊の言葉は本当だった 父レフアヌイは悩み抜いた末、彼が最も信頼している従者を、呼び起こしました。 そして真夜中過ぎに、2人はワイアルアを後にして家に向かいました。 彼らが王家の敷地内に着いたのは、夜明けでした。 2人はまず初…