(前回からの続き)
プア・ネがカイルアへ飛ぶ
ヒクは、遠く離れたある丘の上に立ちました(*1)。
そして彼の不思議な矢、プア・ネに助言を求めようと
大空のはるか彼方(かなた)に、矢を放ちました。
鳥のように飛ぶ様子をじっと見つめていると
矢はカイルア上方の、遠く離れた丘の上にぶつかりました(N.1)。
2回めはホルアロアへ
ヒクは急いでその丘に足を向けました。
そして、暫(しばら)くして矢を拾い上げると、彼は再びそれを大空に放ちました。
この2回めの飛行で、矢はホルアロアの海岸近くに着地しました(N.1)。
カイルアの10〜13Kmほど南です。
「ヒクの水」 を飲む
矢がぶつかったのは、パホイホイ、すなわち溶岩だらけの不毛の荒地でした(N.2)。
ここは、ワイ・ア・ヒク(ヒクの水)と言う名でも知られ、
近くに住む人々は皆、今でもここに来て、人や家畜のための水を汲んでいます。
ヒクはここで、喉(のど)の渇(かわ)きを癒(いや)しました。
(次回に続く)
(ノート)
(N.1) カイルア (kailua)、ホルアロア (Holualoa):
かつてハワイでは、川の流域(谷)毎に土地を区切ってアフプアア(Ahupua'a)と称し、各々の流域に固有名を付けて呼んでいました。
ここで言うカイルアは、プアプアア(Puapua'a)と呼ばれるアフプアア内の、一つの村の名前だったと推測されます。 このカイルアは、今ではハワイ島西部の商業・観光の中心都市、カイルア・コナ(Kailua Kona)として栄えています。
ホルアロアは、プアプアアの南隣にあるアフプアアの名前で、今でもこの地域にホルアロアの名が残っています。
(N.2) パホイホイ溶岩 (pahoehoe):
パホイホイ(pā.hoe.hoe)は、表面が滑らかで砕けていない溶岩を指すハワイ語で、アア(ʻaʻā(トゲトゲした))の対語です 。粘性が低いために柔らかくて流れやすい溶岩流が、冷えて固まった時に出来ます。固まる過程で滑らかな表面に無数のシワが寄るため、溶岩流の跡地は一面に縄を敷き詰めたように見えます。
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅴ. Hiku and Kawelu, J.S. Emerson, p.43-48.