夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

048 ヒクとカウェル:(3) 不思議な矢プア・ネが飛ぶ


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(前回からの続き)

プア・ネがカイルアへ飛ぶ

ヒクは、遠く離れたある丘の上に立ちました(*1)。

そして彼の不思議な矢、プア・ネに助言を求めようと

大空のはるか彼方(かなた)に、矢を放ちました。

鳥のように飛ぶ様子をじっと見つめていると

矢はカイルア上方の、遠く離れた丘の上にぶつかりました(N.1)。

 

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2回めはホルアロアへ

ヒクは急いでその丘に足を向けました。

そして、暫(しばら)くして矢を拾い上げると、彼は再びそれを大空に放ちました。

この2回めの飛行で、矢はホルアロアの海岸近くに着地しました(N.1)。

カイルアの10〜13Kmほど南です。

 

「ヒクの水」 を飲む

矢がぶつかったのは、パホイホイ、すなわち溶岩だらけの不毛の荒地でした(N.2)。

 

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その隣には、ワイカライの水飲み場があります。

ここは、ワイ・ア・ヒク(ヒクの水)と言う名でも知られ、

近くに住む人々は皆、今でもここに来て、人や家畜のための水を汲んでいます。

ヒクはここで、喉(のど)の渇(かわ)きを癒(いや)しました。

(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) カイルア (kailua)、ホルアロア (Holualoa):

かつてハワイでは、川の流域(谷)毎に土地を区切ってアフプアア(Ahupua'a)と称し、各々の流域に固有名を付けて呼んでいました。

ここで言うカイルアは、プアプアア(Puapua'a)と呼ばれるアフプアア内の、一つの村の名前だったと推測されます。 このカイルアは、今ではハワイ島西部の商業・観光の中心都市、カイルア・コナ(Kailua Kona)として栄えています。

ホルアロアは、プアプアアの南隣にあるアフプアアの名前で、今でもこの地域にホルアロアの名が残っています。

 

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(N.2) パホイホイ溶岩 (pahoehoe):

パホイホイ(pā.hoe.hoe)は、表面が滑らかで砕けていない溶岩を指すハワイ語で、アア(ʻaʻā(トゲトゲした))の対語です 。粘性が低いために柔らかくて流れやすい溶岩流が、冷えて固まった時に出来ます。固まる過程で滑らかな表面に無数のシワが寄るため、溶岩流の跡地は一面に縄を敷き詰めたように見えます。

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅴ. Hiku and Kawelu, J.S. Emerson, p.43-48.