(前回からの続き)
カマララワルに出会う
それ以来、彼は妻を取り戻せそうな、パワフルな人を探して、あちこち出かけました(*1)。
あてもなく放浪する中で、彼が最初に訪(たず)ねたのはカマララワル、
力持ちで勇気がある、と評判の男でした。
この男は、悲しげで苦しそうな彼を見て、こう尋ねました。
「そんなに涙を流して、どうしたんだね、おっさん?」
妻を盗られたんだ
ハカラニレオは答えました。
「うるせえな、おっかさん。盗られたんだ。」
「誰に盗られたんだい?」
「カペエペエに盗られたんだ。」
「カペエペエって何者だ?」
「カペエペエ・カウイラだ。」
「カウイラって何者だ?」
「カウイラ、あの猛者(もさ))だよ、ハウプの。」
木の棒なんかだめだ
「となると、おっさん。 あんたは妻を取り返せんだろう。
わしらが木の棒で攻撃したところで、奴の足元のホコリを叩(たた)くだけだ。
しかも奴が木の棒で反撃すれば、そいつがわしらの頭を直撃するぞ。
ほら見ろ! ハウプは滅法(めっぽう)高いんだ。」
石を投げるんだ
さてこのカマララワルは、石を投げる力の凄(すご)さで知られていました。
何と彼の体そのものが、片面は石で出来ていて、残りの片面だけが生身の体でした。
そこで彼は試しに、大きな石を掴(つか)むと、上に向けて放り投げました。
石はどんどん上って行き、遂に大空に突き当たりました。
そして今度は、再び大地に向けて落ち始めました。
これ見た彼は、石で出来た側の体を、落ちて来る石に向けました。
すると、石が激突した彼の体は、ガタガタと音を立てたのでした。
この様子をじっと見ていたハカラニレオは、悲しそうに言いました。
「もっと強くなきゃ!」
(次回に続く)
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅷ. Kapeepeekauila; or, The Rock of Kana. Rev. A.O. Forbes, p.63-73.