(前回からの続き)
海の果てに着く
山のように荷物を積み込んだカヌーに乗って、
ヒクは仲間たちと一緒に出発しました。
めざすは、はるか彼方の海の一点、
大空が上から下りて来て、海と出会う所です。
その地点に着いた彼は、これから苦楽を共にする仲間たちに命じました。
「さあ、私を『地の底』へ下(おろ)してくれ!」
「地の底」とは、ハワイの人々が 「ルア・オ・ミル」と呼ぶ地です(N.1)。
ブランコに乗っで「地の底」へ出発!
彼はココナツの殻を手に持っています。
そしてブランコ、すなわちコワリ、の十字に組んだ棒に、またがるように座っています(N.2)。
こうして彼は、コワリの蔓(つる)で作った長いロープに吊られて、下へ下へと素早く降ろされて行きました。
ロープのもう一方の端は、彼の頭上に浮くカヌーのなかで、友達たちが握っています。
(次回に続く)
(ノート)
(N.1) 地の底(abyss)、ルア・オ・ミル(Lua o Milu):
上の文によると、「地の底」をハワイ語で表記したのが 「ルア・オ・ミル(Lua o Milu)」です。
ここで、lua = [英語]hole,pit = [日本語](竪)穴,(古/文)地獄、また、Milu は死者の世界の支配者(王)です(詳細は本ブログの前々回 (051:(6) 真の愛がヒクを動かす)参照 )。
従って、Lua o Milu = ミル王が支配する穴(地獄) = 地の底(abyss) = 死者の世界(the nether world)、と言えます。
(N.2) コワリ(kowali):
ブランコのことを、ハワイ語で「コワリ」と言います。なお、ブランコを吊っているロープの材料名もまた「コワリ」で、こちらは蔓性植物セイヨウヒルガオ(convolvulus)属のハワイ語名です。
ハワイのブランコは、私たちが乗っているブランコとは少し構造が違います。詳しくは次回を参照下さい。
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅴ. Hiku and Kawelu, J.S. Emerson, p.43-48.