(前回からの続き)
カハラオプナの懇願
この思いもよらぬ言葉に、若い女性は驚いて、彼の顔を見上げました(*1)。
しかし、カウヒの目の中にあるのは、憎悪と殺意だけでした。
そこで彼女は言いました。
「もし私が死なねばならぬなら、なぜ私を自分の家で殺さなかったの?
そうすれば、召使たちが私の骨を埋めることが出来たのに。
しかしあなたは私を、この原生林に連れて来てしまった。
ここで、一体、誰が私を葬ってくれるの?
その前に、もし私がずーっと、あなたを裏切り続けていると思うなら、
なぜ、それを信じる前にその証拠を探さないの?」
カウヒの一撃で死ぬ
しかし、この彼女の必死の願いも、カウヒは聞こうとしませんでした。
恐らくそれは、彼の脳裏にこんなことを思い起こさせた、唯それだけだったのでしょう。
「あれこれ考えた所で、結局は大きな無駄になるだけだ。」
彼は彼女のこめかみを、ハラの実の房で殴(なぐ)りつけました。
そのずっしりと重い実は、マヒナウリでちぎり取ったものでした。
彼はそれを、今まで肌身離さずに持っていたのでした。
その実の一撃で、女性は死んでしまいました。
カウヒは急いで岩の脇に穴を掘ると、彼女を埋めました。
そして彼は、ワイキキの方角に向かって、谷を下りて行きました。
(次回に続く)
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅺ. Kahalaopuna, Princess of Manoa. Mrs. E.M. Nakuina, p.118-132.