(前回からの続き)
カハラオプナの心は変わらない
若者は埋められていた彼女(カハラオプナ)を救い出し、復活させたのです(*1)。
ですから、彼女を花嫁にしたいと思ったのも、当然のことでした。
ところが、その女性はこう言って、彼のプロポーズを断ったのでした。
「カウヒが生きている限り、私は彼のもので、他の誰のものでも無いのです。
なぜって私の体は、言ってみれば、彼の食物で育ったのですから。
ですから、その食物が彼の物だったように、私の体も彼の物なのです。」
カウヒを死刑にするんだ!
そこで若者の兄は、弟にこう助言しました。
「何とかして、カウヒを死刑にするんだ!」
そのために彼らはカハラオプナの両親と話し合い、未だカウヒが知らない彼女の最後の復活を、秘密にしておくことにしました。
カハラオプナのメレを覚える
それから若者は、カハラオプナが歌ったメレを覚え始めました(N.1)。
そうです、あの死に至る旅の間に、愛する人に向けて歌った、メレというメレを全部です。
これらの歌をうまく歌えるようになると、彼は次にキル・ハウス(遊戯・ゲーム場)を探しました(N.2)。
そこは、王や高位の首長たちがゲームを楽しむ家で、カウヒはきっとそこにいるからです。
(次回に続く)
(ノート)
(N.1) メレ(mele):
メレはハワイ語で、日本語で言う 「歌」 全般 および 「詩」 を意味し、英語 の"chant" に対応する語です。
(N.2) キル・ハウス(kilu house):
キル・ハウスとは、キル(kilu) と呼ばれる大変人気のあったゲーム、を行うための家でした(*2)。
この家の中に入って、ゲームを楽しめるのは王族だけ、と決められていました。
現代のボーリングと若干似ていますが、ボールの代わりにキルを使いました。そのキルは、ココナッツ・シェルを割って作りました。
各プレイヤーは、ゲームを始める前にメレを歌いました。本文中で若者がメレを覚えたのは、これに備えたものです。
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅺ. Kahalaopuna, Princess of Manoa. Mrs. E.M. Nakuina, p.118-132.
*2) David Malo(1898): Hawaiian Antiquities, translated by N.B.Emerson, Honolulu Hawaiian Gazette, Chapter 42 Sports and Games: Kilu.