(前回からの続き)
高床に横たわる死体を見る
エレイオはプオア(風葬場)の中に入ると、高い床の上まで登りました(*1)。
彼女はどう見ても、先ほど彼の前に現われた、霊と同じくらい美しい人でした。
そして見た所、まだ腐敗が始まっていなようでした。
両親たちが住む家へ
プオアを出た彼は、霊が指さした彼女の仲間たちの家へと急ぎました。
そこでは1人の女性が、声を上げて泣いていました。
その顔があの少女と似ていたので、直ぐにそれが少女の母親だとわかりました。
そこで、彼は「アロハ」と挨拶すると、こう言いました。
「私はこの土地の者ではありませんが、1人の旅の仲間がいました。
その仲間が私をあそこのプオアに連れて行き、そのまま姿を消してしまったのです。」
この不思議な言葉に、女性は直ぐに泣き止んで夫を呼びました。
そして、いま見知らぬ人が言ったことを、夫に向けて繰り返しました。
それからエレイオが、こう尋ねました。
「この家はあなた方の物ですか?」
夫と妻は不審に思いながらも、直ぐに答えました。
「そうです。」
霊のメッセージを伝える
「それでは、」とエレイオが話し始めました。
「あなた方に、お伝えしたいことがあるのです。
私の旅の仲間は、1頭の大きなブタを持っている、と言っています。
それは長さが1ファゾム(約1.8m)ほどあり、あなた方が世話をしています。
その他にも、カパ布を積み重ねて一山にしてあります。
素晴らしいパイウラをはじめ、幾種類かの上等なカパ布の山です(N.1)。
さらにマットが一山、それから未完成のフェザー クロークです。
クロークの長さは、今はまだ1ファゾム半(約2.7m)ですが、あなた方がこれから仕上げようとしており、既(すで)にその材料は家の中にあります。
愛する娘が彼に贈った
彼女は、これらの物を全て私に贈ると言っています。
そしてそのために、私をあなた方の元へ行かせたのです。」
それから彼は、その若い女性の特徴や印象などについて、話し始めました。
両親は2人共、彼の話しが真実であることを、はっきりと知りました。
そして、それらの物を彼に渡すことに、喜んで同意しました。
何と言っても、彼らの愛する娘自身が、彼に贈ったに違いないのですから。
(次回に続く)
(ノート)
(N.1) パイウラ(paiula):
パイウラはカパ布の一種で、赤いカパ布の切れ端を、ワウケ(梶の木)の樹皮と一緒に叩いて作ります(*2)。
こうすることで、切れ端の赤色とワウケの白色が、混ざったカパ布が出来上がります。
カパ布の素材(樹皮)には、ワウケ(wauke)の他にママキ(mamaki)等がありましたが、ワウケで作ったカパ布が最高とされていました(*3)。
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 14. Ahuula ; A Legend of Kanikaniaula and the First Feather Cloak, Mrs. E. M. Nakuina, p.147-155.
(*2) L. Andrews (rev. by H. H. Parker)(1922): A dictionary of the Hawaiian language.
(*3) W. D. Westervelt(1915): Hawaiian Legends of Old Honolulu. p.65.