(前回からの続き)
霊を肉体に戻す
プオア(風葬場)に着くと、エレイオはその霊を、少女の足の甲にもたれかけるように置きました(*1)。
それから、霊を甲にぴったり密着させると、足の中にギュッと押し込みました。
その一方で、彼はその間ずーっと神に祈り続けていました。
するとその霊は、とても穏やかに元の棲家(すみか)に入り、膝(ひざ)まで進んで行きました。
膝から腰へ
ところがそこで止まると、もはや一歩たりとも進もうとしませんでした。
膝まで来た所で、既に胃が腐敗し始めていることに気付いたからです。
霊は腐りかけた物質による汚染に、晒(さら)されたくなかったのでした。
しかしエレイオは、彼の祈りの力を駆使することで、嫌がる霊を先に進めることが出来ました。
こうして霊は膝を通り過ぎて、大腿骨のある腰まで上って来ました。
腰から喉(のど)へ
ところが、どうにも手に負えない霊は、ここで再び、頑として進まなくなりました。
この霊の抵抗に打ち勝つために、彼は自分の祈りにより一層精魂を傾けました
そのお陰で霊は再び進み出し、喉(のど)までやって来ました。
嬉しそうな叫び声
だがここでもまた、霊は何らかの障害のために、進めなくなったのでした。
一方、この時までには、父、母、そして親族の男たちが、全て集まっていました。
彼らは心配そうにエレイオを取り囲み、彼の霊を操(あやつ)る術を見守っていました。
ここで、彼らが祈りで授かったパワーの全てを、エレイオ1人に集中させました。
そのお陰でエレイオのパワーは高まり、彼女の霊を首の先まで進めることが出来ました。
そしてこの時、少女は嬉しそうな叫び声を上げたのでした。
(次回に続く)
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 14. Ahuula ; A Legend of Kanikaniaula and the First Feather Cloak, Mrs. E. M. Nakuina, p.147-155.