夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

142 プウペヘの墓:(4) 恐ろしい嵐がやって来る


スポンサードリンク

(前回からの続き)

マカケハウは山へ水汲(くみ)に行った

ある日のことです。


マカケハウは、愛する人をマラウエアの洞窟に残して、出かけて行きました(*1)。

彼は山の泉に行って、ヒョウタンで作った水入れに、おいしい水を満たして来ようとしたのです。

 

 

この大きな洞窟は、海面上にせり出した断崖絶壁の足元で、大きな口を開けています。

そしてその断崖絶壁は、プウペヘの岩よりもさらに高く、聳(そび)えています。

 

プウペへは洞窟の中でウミガメを焼いた

海水は洞窟のずーっと奥まで押し寄せて来ます。

 

しかし、中にはまだまだ空間があります。

ですから泳ぎの上手な人ならば、そこまで行き着けるのです。

 

プウペへはしばしば、そこで一休みしました。

そして、出かけている彼女の愛する人のために、「ホヌ」 すなわちウミガメを焼いたものでした。

 

 

今は恐ろしい嵐の季節

島のコナでは、この時期は恐ろしい嵐の季節でした(N.1)。

 

その恐ろしい嵐は、赤道のあたりで発生します。

そして、大海原で大きく成長すると、ハワイの島々の南岸に、激しく襲いかかるのです。

 

彼女の命が危ない

その時マカケハウは、プロウ渓谷の岩から湧き出る泉にいました。

彼はそこから、眼下に広がる広大なコナの先端部を、じっと見つめました。

 

 -- そこに見えたのは、強風に吹き飛ばされた雨と濃い霧でした。

それらが吹き荒れる暴風と一体となり、パラワイ渓谷を横切って突進して来るではありませんか!

 

この光景を目の当たりにした彼は、きっとこうなる、と思いました。

 

「この嵐は、彼女のいる洞窟の中を、海水で溢(あふ)れさせるだろう。

そして、彼の愛する人の命を奪うだろう。」

(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) コナ (kona):  

コナとは、ハワイの各島々における風下側の地域を指します。そしてこのお話しの舞台である、マラウエアの洞窟やプウペヘの岩も、ラナイ島の風下側すなわちコナにあります。
なお、コナの反対側である風上側の地域は、コオラウ(koʻo.lau)と呼ばれます。

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907):Hawaiian Folk Tales, 16. The Tomb of Puupehe,  A Legend of Lanai,  From "The Hawaiian Gazette", p.181-185.