(前回からの続き)
マカケハウは山へ水汲(くみ)に行った
ある日のことです。
マカケハウは、愛する人をマラウエアの洞窟に残して、出かけて行きました(*1)。
彼は山の泉に行って、ヒョウタンで作った水入れに、おいしい水を満たして来ようとしたのです。
この大きな洞窟は、海面上にせり出した断崖絶壁の足元で、大きな口を開けています。
そしてその断崖絶壁は、プウペヘの岩よりもさらに高く、聳(そび)えています。
プウペへは洞窟の中でウミガメを焼いた
海水は洞窟のずーっと奥まで押し寄せて来ます。
しかし、中にはまだまだ空間があります。
ですから泳ぎの上手な人ならば、そこまで行き着けるのです。
プウペへはしばしば、そこで一休みしました。
そして、出かけている彼女の愛する人のために、「ホヌ」 すなわちウミガメを焼いたものでした。
今は恐ろしい嵐の季節
島のコナでは、この時期は恐ろしい嵐の季節でした(N.1)。
その恐ろしい嵐は、赤道のあたりで発生します。
そして、大海原で大きく成長すると、ハワイの島々の南岸に、激しく襲いかかるのです。
彼女の命が危ない
その時マカケハウは、プロウ渓谷の岩から湧き出る泉にいました。
彼はそこから、眼下に広がる広大なコナの先端部を、じっと見つめました。
-- そこに見えたのは、強風に吹き飛ばされた雨と濃い霧でした。
それらが吹き荒れる暴風と一体となり、パラワイ渓谷を横切って突進して来るではありませんか!
この光景を目の当たりにした彼は、きっとこうなる、と思いました。
「この嵐は、彼女のいる洞窟の中を、海水で溢(あふ)れさせるだろう。
そして、彼の愛する人の命を奪うだろう。」
(次回に続く)
(ノート)
(N.1) コナ (kona):
コナとは、ハワイの各島々における風下側の地域を指します。そしてこのお話しの舞台である、マラウエアの洞窟やプウペヘの岩も、ラナイ島の風下側すなわちコナにあります。
なお、コナの反対側である風上側の地域は、コオラウ(koʻo.lau)と呼ばれます。
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907):Hawaiian Folk Tales, 16. The Tomb of Puupehe, A Legend of Lanai, From "The Hawaiian Gazette", p.181-185.