(前回からの続き)
大変貴重な物がある
クキニ(使者)は答えました(*1)。
「もしも死なねばならぬなら、主君の足元で死ぬことこそが、忠臣の願望でした。
しかし我が主君よ、もしもそうならば、
それはあなた様にとって、取り返しのつかない大きな損失になるでしょう。
と言うのは、今、私の手元には、大変貴重な物があるからです。
それはあなた様の名前を、広く世に知らしめる物であり、
かつまた、長く後世の人々にまで引き継がれる物なのです。」
フェザー クロークとアヴァを献上
「それで、おまえの言う『物』とは、一体何のことだ?」 王は尋ねました。
そこでエレイオは持っていた包みを開き、王や宮廷に仕える家臣たちに広げて見せました。
すると彼らは、目の前の豪華絢爛なフェザー クロークに驚嘆し、じっと見入ったのでした。
このハワイの島々では、未だ聞いたことも無い珍しい物だったからです。
言うまでも無いことですが、彼は直ちに許され、再び王室のお気に入りになりました。
一方、彼がハナから持ち帰ったアヴァは、王専用の特別品としてとっておかれました。
こちらはその夜、王が神々に奉納する供物になるのです。
王はエレイオの旅先で起きた出来事を、こと細かく聞きました。
そしてフェザー クロークの、本当のそして元々の所有者が、すぐ近くに居ると知りました。
王は彼女を直ちに、自分の面前に連れて来るよう命じました。
その素晴らしい衣装の、お礼を言おうとしたのです。
到着した彼女を目の前にして、王はその美しさと奥ゆかしさに、強く心を惹(ひ)かれました。
そして彼女に、王女になって欲しい、と申し出たのでした。
ですから、この島の王の何人かは、カカアラネオ(王)とカニカニアウラ(王女)の子孫なのです。
(次回に続く)
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 14. Ahuula ; A Legend of Kanikaniaula and the First Feather Cloak, Mrs. E. M. Nakuina, p.147-155.