夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

161 カアラとカアイアリイ:(15) 行きなさい、愛するカアラよ!


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(前回からの続き )

カアイアリイが愛を語る

英雄はたくましい片腕を若き恋人に絡(から)ませて、しっかりと抱きしめました(*1)。

そして彼女の目をじっと見つめながら愛情を込めた手で、輝く髪を額(ひたい)から払い除(の)けました。

 

こうして彼は、自らの生きる糧(かて)とも言えるカアラに、話しかけました。

 

「おお、私の愛(いと)しい人よ、貴方(あなた)無しでは、一体どうして生きて行けようか?

-- たとえ、太陽が東から出て西に沈むまでの、今日一日間だけであっても。

 

貴方は私の生きる力なのです。

もしも貴方がいなければ、私は海辺に打ち上げられた魚のように、息を切らして死んでしまうでしょう。

 

いや違う! 私にそんな風に言わせないでくれ。

 

カアイアリイは首長だ、これまで多くの人やサメと戦って来たのだ。

だから絶対に、女の子みたいなことを、言ってはいけないのだ。

 

母を見捨てられようか?

私も、自分の母を愛している。
彼女はコハラの谷で、私の帰りを待っている。

 

 

それを考えれば、あなたの母の気持ちを無視するなど、とても出来ない。

彼女は最後にもう一度、あなたの愛らしい顔と優しい姿を見たいに違いない。

 

なぜなら、あなたに食べ物を与えて育て上げたのが、あなたの母なのだから。

さらに今となっては、それは私のためでもあったのだ。

 

さあ行きなさい、私のカアラよ!

 

そしてあなたの首長である私は、あなたの愛を渇望しながら、じっと座って寝ずの番をしよう。

--あなたが私の腕の中に再び戻って来るまでは。」

 

(次回に続く)

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson, p.156-180.