夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

127 アフウラ:(1) 俊足の使者クキニ


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(新しいお話の始め)

「クキニ」はプロの使者

 

エレイオはクキニ(熟練した使者)で、マウイ島の王カカアラネオに仕えていました(*1)(N.1)。

当時の王や有力なアリイ(首長)たちは各々、常に何人かのクキニを抱えていたのです。

 

どんな使いを命じられようと、彼らはいつも一直線に目的地を目指しました。

まるでヤギのように機敏に丘を登り、岩や流れを飛び越え、そして断崖絶壁から飛び降りるのです。

 

ラワルを焼く暇も無い

彼らがあまりに俊足だったので、ハワイの人々の間では、よくこんな風に例(たと)えられたものでした。

 

「クキニが使いを命じられると、普通ならまる一昼夜かかりそうなことも、あっという間だ。

 

何しろ、あいつらが出発する時に、キーの葉に包んだ魚(ラワル)を火にかけると、

まだ片面が十分焼けず、ひっくり返せないうちに、もう戻って来るんだから。」

 

特別の待遇を受ける

このようにクキニは、首長にとって大変有益で重要な存在でした。

 

そこで彼らはいつも高い評価を受け、自由を満喫していました。

また、厳格なしきたりに縛られることもなく、さらに慣習法に基づく王のお裁きも免れました。

 

彼らのご主人が持ち歩く物の中には、高価な物などほぼ何もありませんでした。

ですから彼らが盗(と)ろうとしても、そんな物は手に入らなかったでしょう。

(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) カカアラネオ(Kakaalaneo): 

カカアラネオは当時のマウイ島の王で、このお話し以外にも、幾つかの伝説に登場する有名な王です。

島の南東部ラハイナ(Lahaina)に近いケカア(Keka'a)に住んでいたと伝えられています(*2)。

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 14. Ahuula ; A Legend of Kanikaniaula and the First Feather Cloak, Mrs. E. M. Nakuina, p.147-155.

(*2) Martha Beckwith(1970): Hawaiian Mythology. p.384.