(前回からの続き)
キリキリウラは石に変わる
キリキリウラが倒れた場所は、川を隔てて、レフアの木と反対側でした(*1)。
そして、彼女はそこで石に変わったと言われています。
その石は今でも、「これが、その時の石です!」 と指し示すことが出来ます。
川の流れに削られた谷の斜面で、その石はバランス良く周囲に溶け込んでいます。
そして今では、ハワイ人観光客のお目当ての一つになっています。
王や召使いも石になった
頭を切り落とされたオアフヌイは、殺された場所に放置されたまま、誰からも見捨てられていました。
時が経(た)つにつれて、彼もまた石に変わった、と言われるようになりました。
そうです。その石は、彼が犯した恐ろしい罪に対する、神々の怒りと激しい憎悪の証(あかし)とされたのです。
召使いたちの運命も、キリキリウラと同じでした。
王の命令に従って、若い王子の殺害・調理に少しでもかかわった召使いたちは一人残らず、キリキリウラの死と同時に、彼女と同じように石に変わったのでした。
その時の彼らの姿勢は様々で、ある者は身をかがめ、ある者はひざまずき、そしてまたある者は座っていました。
それ以外の王家の家臣たちは皆、低位の首長たちや護衛兵たちと共に、恐ろしさと嫌悪感でそこから逃げ出しました。
こうして、オアフ島の首長たちの、かつての聖なる王家の本拠地は、見捨てられて人けが無くなったのでした。
そして今なお、偉大なる神カネの祟(たた)りが、この荒涼とした地を覆(おお)っている、と信じられているのです(N.1)。
その証(あかし)として、人々は強くこう主張しています。
「確かにこれは全て、何百年も前に起きた出来事だ。
しかしその時以来、今の今までずーっと、この地には誰も住んでいないんだ。」
(次回に続く)
(ノート)
(N.1) カネ(Kane):
ハワイには4大神と呼ばれる4人(/柱)の神がいます。クー(戦いの神)、ロノ(農耕の神)、カネ(創造の神)、カナロア(海の神)です。
その中でカネは最高神で、神々が住む天界や人間が住む地上を創造し、さらに、地上には海・動植物・人間を創造したとされています。
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 13.Oahunui. Mrs.E.M.Nakuina, p.139-146.