夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

126 オアフヌイ:(13) そして誰もいなくなった


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(前回からの続き)

キリキリウラは石に変わる

キリキリウラが倒れた場所は、川を隔てて、レフアの木と反対側でした(*1)。

そして、彼女はそこで石に変わったと言われています。

 

その石は今でも、「これが、その時の石です!」 と指し示すことが出来ます。

川の流れに削られた谷の斜面で、その石はバランス良く周囲に溶け込んでいます。

 

そして今では、ハワイ人観光客のお目当ての一つになっています。

 

王や召使いも石になった

頭を切り落とされたオアフヌイは、殺された場所に放置されたまま、誰からも見捨てられていました。

 

時が経(た)つにつれて、彼もまた石に変わった、と言われるようになりました。

そうです。その石は、彼が犯した恐ろしい罪に対する、神々の怒りと激しい憎悪の証(あかし)とされたのです。

 

召使いたちの運命も、キリキリウラと同じでした。

王の命令に従って、若い王子の殺害・調理に少しでもかかわった召使いたちは一人残らず、キリキリウラの死と同時に、彼女と同じように石に変わったのでした。

 

その時の彼らの姿勢は様々で、ある者は身をかがめ、ある者はひざまずき、そしてまたある者は座っていました。

 

そして誰もいなくなった

それ以外の王家の家臣たちは皆、低位の首長たちや護衛兵たちと共に、恐ろしさと嫌悪感でそこから逃げ出しました。

こうして、オアフ島の首長たちの、かつての聖なる王家の本拠地は、見捨てられて人けが無くなったのでした。

 

そして今なお、偉大なる神カネの祟(たた)りが、この荒涼とした地を覆(おお)っている、と信じられているのです(N.1)。

その証(あかし)として、人々は強くこう主張しています。

 

「確かにこれは全て、何百年も前に起きた出来事だ。

しかしその時以来、今の今までずーっと、この地には誰も住んでいないんだ。」

(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) カネ(Kane): 

ハワイには4大神と呼ばれる4人(/柱)の神がいます。クー(戦いの神)、ロノ(農耕の神)、カネ(創造の神)、カナロア(海の神)です。

その中でカネは最高神で、神々が住む天界や人間が住む地上を創造し、さらに、地上には海・動植物・人間を創造したとされています。

 

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 13.Oahunui. Mrs.E.M.Nakuina, p.139-146.