(前回からの続き)
ちょっと待って下さい
両親は直ぐに、エレイオを養子にすることにしました(*1)。
そこで大きなブタを殺して、アハ アイナ(祝宴会)をしよう、と話し始めた時のことです(N.1)。
エレイオが こう言いました。
「ちょっと待って下さい。その前にお尋ねしたいのですが?
ここにいる人たちは皆、あなた方の仲間ですか?」
親族たちは信頼できる
両親は口を揃(そろ)えて、こう答えました。
「彼らは私たちの親族です。
-- あの霊から見れば、叔父であり、叔母であり、そして従兄弟(いとこ)たちです。
彼らはもう既にあなたのことを、娘の夫または親族、と思っているようです。」
すると、エレイオが聞きます。
「たとえどんな事であろうと、彼らはあなた方の言う通りにしますか?」
「彼らは信頼できる人たちです。」と両親が答えました。
ラナイと祭壇を作る
エレイオは彼らに、大きなラナイ、すなわち上屋、を造るように言いました。
出来上がったラナイは、シダ、ジンジャー、マイレ、そしてイエイエで、完全に覆(おお)わせました(N.2)。
--これらの緑の葉は島々に生い茂り、心地良い香りを漂わせています。
次は祭壇です。ラナイの一方の端に組み立て、相応に飾り付けなければなりません。
親族たちは喜んで命令に従いました。
男ども、女たち、そして子供たちが、一生懸命に働いたのです。
そのお陰で、2,3時間もすると、全ての構造物が完成してしまいました。
祭壇に供物を捧げる
いよいよエレイオは、あの大きなブタを焼くように言いました。
さらに色々な供物を、祭壇に捧げさせました。
-- 調理済の赤と白の魚、そして、赤、白、および黒の雄鶏、
それから、レレとマオリ種のバナナです(N.3)。
(次回に続く)
(ノート)
(N.1) アハアイナ(ahaaina):
アハアイナは、かつて結婚や戦勝などを記念して催された祝宴会です。現在はルアウ(lū'au)と言う名前に変わり、特別なお祝いの時や、観光客向けに行われています。
(N.2) マイレ(maile), イエイエ(ieie):
マイレは香り高いレイの素材として、古くから愛用されて来ました。またカパ布に香り付けする際にも使われました。学名は "Alyxia stellata"です。
イエイエは、長さ40~80cmの細長くて緑色に輝く葉を持っています。かつてフラの祭壇には、この枝が供えられたそうです。学名は"Freycinetia arborea"です。
(N.3) レレ(lele):
レレは、数多くあるバナナの品種の一つです(学名:Musa x paradisiaca)(*2)(*3)。
かつては、住居の近くではなくヘイアウ(神社)に植えられ、神に捧げる供物とされていました。
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 14. Ahuula ; A Legend of Kanikaniaula and the First Feather Cloak, Mrs. E. M. Nakuina, p.147-155.
(*2) M. K. Pukui, S. H. Elbert(1986) : Hawaiian Dictionary, Univ. of Hawaii Press.
(*3) R. C. Ploetz et al.(2007): Banana and plantain--an overview with emphasis on Pacific island cultivars. p.14.