夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

124 オアフヌイ:(11) 王の首を切り落とす


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(前回からの続き)

王はぐっすり寝入っていた

王の寝家(ねや)では、誰も彼もが眠入っていました(*1)。

その中で老女が唯1人で、ククイ・ナッツの灯(あか)り番をしていました。

 

王オアフヌイは手足を大の字に伸ばして、何枚も積み重ねた柔らかいマットの上で寝ていました。

マットの表面はパイウラ、古くから王家に伝わる赤いカパ布、で覆われていました(N.1)。

 

この残酷な恥知らず者は、喉から手が出るほど欲しかった、あの忌(い)まわしい料理を、食べ過ぎてしまったのでした。

その上にアヴァを浴びるほど飲んだので、酔っ払ってぐっすり寝込んでいました(N.2)。

 

 

レフアヌイが手斧で威嚇する

レフアヌイは手斧(ておの)を持ち、威嚇(いかく)するように彼の前に立つと、大声で言いました。

「おお、王よ。私の子らは何処(どこ)だ?」

 

呆然(ぼうぜん)とした王は、只々(ただただ)不安そうに体を動かしただけでした。

彼は目を覚まそうともしませんでした。いや、とても出来なかったのかも知れません。

 

王の首を切り落とす

レフアヌイは大きな声で3度、彼に呼びかけました。

 

酔い潰(つぶ)れたこの残虐な男、こいつが肉と血をガツガツ食べたのだ。

その男を目の前にして、父の怒りは極限に達したのでした。

 

彼は遂に、オアフヌイの首に石斧で切りかかりました。

そしてたったの一撃で、王の頭を胴体から切り落としてしまいました。

(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) パイウラ(paiula): 

パイウラ(paʻiʻula)とは、赤いカパ(kapa)の布切れを、新しいカパ布用の樹皮と一緒に叩(たた)いて作ったカパ布の一種です。こうすることで、赤色が白色と混合したカパ布が出来上ります(*2)。 

なお、カパ布の樹皮は複数種の木から採取出来ますが、代表的なのがハワイ語でワウケ(wauke)と呼ばれる木です(和名カジノキ; 学名Broussonetia papyrifera)。

(N.2) アヴァ(awa): 

アヴァは、幅広くポリネアシア各地で見られ、カヴァ(kava)と呼ばれることが多い飲料です。かつては神に捧げられた神聖な飲物でしたが、人々にも酒の代わりとして愛飲されました(*2)。

アルコール分はありませんが、原材料である植物アヴァの根には麻酔成分が含まれ、薬用としても利用されたそうです。

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 13.Oahunui. Mrs.E.M.Nakuina, p.139-146.

(*2) M.K. Pukui, S.H. Elbert(1986): Hawaiian Dictionary, Univ. of Hawaii Press.