夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

148 カアラとカアイアリイ:(2) カネアプアの岩とカウノル村


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(前回からの続き )

カネアプアの岩
海辺では、とてつもなく大きな陥没に遭遇します(*1)。
自然界の何らかの激変により、断崖の先端部から巨大な岩塊がもぎ取られています。

 

 

もぎ取られた岩塊は、まるで孤立した塔のように海面から突き出ています。
海中にまで伸びた深い割れ目により、断崖の本体から切り離されたのです。

岩塊の高い壁面は、天辺(てっぺん)から外側に向けて突き出ています。


ですから、人間であろうが山羊(ヤギ)であろうが、その壁を登ることは出来ません(N.1)。

 

ところが、この隔絶された断崖を注意深く見ると、天辺(てっぺん)は平坦で、古い建造物、祭壇や壁の一部が見えて来ます。
それらは間違い無く、本島の神社の一部であり、かつてはその神社と一体だったものなのです(*2)。

 

しかし今では誰一人として、この岩塊の一番上まで行くことは出来ません。
張り出した壁面を登ることなど、出来るはずも無いのです。

 

漁場の魅力が人々を呼ぶ
神社よりも内陸側には、昔の人々が住んだ小屋の跡が数多くあります。

 

 

石造りの基礎、豚飼育用の囲い、円形の地下式オーブン、そしてその他にも、大勢の人々が居たことを示す色々な痕跡が、海辺から丘の斜面にかけての広大な地域に広がっています。

 

 

ここカウノル村は「神の住処(すみか)」 、として知られていました。
そしてまた「駆け込み寺」、命からがら逃げて来た人たちを受け入れる寺、でも知られていました。

 

しかしこの村が人々を引き付けた一番の理由は、漁場として有名だったからです。
そして、ハワイの海で変化に富む生活を楽しみたい人々で、ごった返していました。

(次回に続く)

 

(ノート)
(N.1) 山羊 (goat):        
山羊は一般的に山岳地帯の岩場等を好み、人間が登れないような断崖でも、容易に登ることが出来ます。

 

 

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson, p.156-180.
(*2) Boyd Dixon et al.(1955): Community Growth and Heiau Construction. Possible Evidence of Political Hegemony at the Site of Kaunolu, Lanai, Hawaii, Asian Perspectives, Vol.34,No.2, p.231-236.