(前回からの続き)
高貴な人の風葬場プオア
エレイオが彼女に追いついたのは、あるプオアの入口でした(*1)。
プオアとは、ちょっとした塔のようなものです。
普通は竹で出来ていて、半分ぐらいの高さの所に床があります。
その上には、高貴な人々の死骸が横たわっています。
家系または階級が同じ人たちが、一緒に風葬されているのです。
私を生き還らせて!
エレイオがその若い女性に追い付くと、彼女は彼の方を振り向いて、泣く泣くこう言いました。
「私を生きさせて下さい! 私は人間ではなくて、霊なのです。
そして私の肉体は、この囲いの中にあるのです。」
彼は答えました。
「あなたが霊であることに、しばらく前から気が付いていました。
なぜって、私を振り切ってあんなに速く走れる人間など、いるはずがないのだから。」
両親にこう伝えて下さい
それから彼女は言いました。
「私たち、お友達になりましょう。
あの遠くに見える家に、私の両親と親戚の人たちが住んでいます。
今から、あの人たちの所に行って、こんな風に頼んで下さい。
『大きなブタを1頭、カパ布、ファイン マットをいくらか、それにフェザー クロークが欲しいのです(N.1),(N.2)。』
そして私のことを話して、私がこう言っている、と伝えて下さい。
『それらの品々は、全て彼にあげます。』
フェザー クロークは未完成です
フェザー クロークは、まだ出来上がっていません。
それは、今は未だ1辺が約2.7mの正方形ですが、約3.6mにまで大きくする予定です。
それに必要な鳥の羽と繊維を編んだ網は、十分な量が家にあります。
ですから、あなたのためにそれを完成させるように、言って下さい。」
こう話し終えると、霊は姿を消してしまいました。
(次回に続く)
(ノート)
(N.1) ファイン マット(fine mat):
ファイン マットは、長時間かけて細い繊維を編み上げた高級マットです。
ハワイと同じポリネシアのサモアでは、イエトガ('ie toga) と呼びます。
かつてはファイン マット、カパ布そしてブタなどが、儀礼用品とされていました。
(N.2) フェザー クローク(feather cloak):
フェザー クロークとは鳥の羽で飾ったマントのことで、ハワイ語では アフウラ('ahu'ura) と言います。
このお話しのタイトル「アフウラ」は、この語から来ています。
かつてアフウラを身につけることが許されたのは、階級社会の最上位にいた首長(アリイ(ali'i))だけでした。
アフウラを作るには、まずオロナ(olona)などの繊維で網を作り、次にその表面を羽で覆うように飾り付けました。
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 14. Ahuula ; A Legend of Kanikaniaula and the First Feather Cloak, Mrs. E. M. Nakuina, p.147-155.