夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

129 アフウラ:(3) 女性の霊に頼まれる


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(前回からの続き)

高貴な人の風葬場プオア

エレイオが彼女に追いついたのは、あるプオアの入口でした(*1)。

 

プオアとは、ちょっとした塔のようなものです。

普通は竹で出来ていて、半分ぐらいの高さの所に床があります。

 

その上には、高貴な人々の死骸が横たわっています。

家系または階級が同じ人たちが、一緒に風葬されているのです。

 

私を生き還らせて!

エレイオがその若い女性に追い付くと、彼女は彼の方を振り向いて、泣く泣くこう言いました。

 

「私を生きさせて下さい! 私は人間ではなくて、霊なのです。
そして私の肉体は、この囲いの中にあるのです。」

 

彼は答えました。

 

「あなたが霊であることに、しばらく前から気が付いていました。

なぜって、私を振り切ってあんなに速く走れる人間など、いるはずがないのだから。」

 

両親にこう伝えて下さい

それから彼女は言いました。

 

「私たち、お友達になりましょう。

あの遠くに見える家に、私の両親と親戚の人たちが住んでいます。

 

今から、あの人たちの所に行って、こんな風に頼んで下さい。

『大きなブタを1頭、カパ布、ファイン マットをいくらか、それにフェザー クロークが欲しいのです(N.1),(N.2)。』

 

 

そして私のことを話して、私がこう言っている、と伝えて下さい。

『それらの品々は、全て彼にあげます。』

 

フェザー クロークは未完成です

フェザー クロークは、まだ出来上がっていません。
それは、今は未だ1辺が約2.7mの正方形ですが、約3.6mにまで大きくする予定です。

 

それに必要な鳥の羽と繊維を編んだ網は、十分な量が家にあります。

ですから、あなたのためにそれを完成させるように、言って下さい。」

 

 

こう話し終えると、霊は姿を消してしまいました。

(次回に続く)

 

(ノート)
(N.1) ファイン マット(fine mat): 

ファイン マットは、長時間かけて細い繊維を編み上げた高級マットです。

ハワイと同じポリネシアサモアでは、イエトガ('ie toga) と呼びます。

かつてはファイン マット、カパ布そしてブタなどが、儀礼用品とされていました。

(N.2) フェザー クローク(feather cloak): 

フェザー クロークとは鳥の羽で飾ったマントのことで、ハワイ語では アフウラ('ahu'ura) と言います。

このお話しのタイトル「アフウラ」は、この語から来ています。

かつてアフウラを身につけることが許されたのは、階級社会の最上位にいた首長(アリイ(ali'i))だけでした。

アフウラを作るには、まずオロナ(olona)などの繊維で網を作り、次にその表面を羽で覆うように飾り付けました。

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 14. Ahuula ; A Legend of Kanikaniaula and the First Feather Cloak, Mrs. E. M. Nakuina, p.147-155.