夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

162 カアラとカアイアリイ:(16) 行きも帰りも空を飛べ


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(前回からの続き )

あなたは私の生きる力

あの可愛らしいジャスミン(カアラ)は、彼の首に両腕を巻き付けました(*1)。

そして、彼の胸に頬(ほほ)を擦り寄せながら、ちらっと顔を見上げてこう言いました。

 

 

「おお私の首長よ。あなたは私に、生きる力と素晴らしい喜びを下さった。

 

あなたの息づかいは私の活力、

あなたの目は私の最も快く美しいもの、

あなたの胸は私の唯一の安らぎの場です。

 

そして私が遠く離れて行く時、その道中きっとあなたを、振り返り続けるでしょう。

そして後ろ髪を引かれる思いで、ゆっくりと進むことでしょう。

 

しかしあなたのもとに戻る時は、是非とも翼を手に入れましょう。

--- ご主人様のもとに私を運んでくれる翼を。」

 

行きも帰りも空を飛ぶのだ

「そうだ、我が愛(いと)しの恋人よ。」 とカアイアリイが言いました。

 

「あなたは飛ぶのだ。だが帰りと同じように、 行きも素早く飛んで行くのだ。

行きも帰りも両方共、あなたは私を目指して飛ぶのだ。

 

あなたが行ってしまった後、きっと私は柔らかいオフア(小魚)を槍で突き、ヤムとバナナを焼くだろう(N.1)。

それから、ヒョウタン容器を美味(おい)しい水で満たそう。

 

 

そしてあなたが戻った時には、愛するあなたに食べさせてあげよう。

だからその時、私には、あなたの愛をこめた眼差しを下さい!」

 

もしも彼女が戻らなければ---

「さあ、オプヌイ! あなたの子を連れて行きなさい。

 

あなたは彼女に命を与えてくれた。

しかし今は、彼女が私に命を与えているのです。

 

だから太陽が2回昇る前に、元気な彼女を連れ戻して下さい。

 

もしも、彼女がすみやかに戻らなければ、きっと私は死ぬでしょう。

しかしその前に、私はあなたを殺さなければなりません。

 

ですから、おー、オプヌイよ! 大急ぎで出発して、大急ぎで戻って来て下さい。

そして、私の命であり愛である彼女を、私のもとに連れ戻して下さい。」

(次回に続く)

 

(ノート)
(N.1) ヤム(yam):

ヤム(英名)とは、ヤマノイモ属(Dioscorea)の中の塊根を食用とする種の総称です。ヤムの中でハワイで最も代表的な種が Dioscorea alata(学名)であり、そのハワイ名はウヒ(uhi)、和名はダイジョです。

かつてこのヤムを食べる時は、イム(imu)と呼ばれる地中オーブンで焼きました。

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson, p.156-180.