夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

160 カアラとカアイアリイ:(14) 母の危篤を知る


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(前回からの続き )

父が母の危篤を告げる

さてその朝、血色良い茶色の頬(ほお)の少女(カアラ)は、眩(まぶ)しい愛の兆(きざ)しに顔を紅潮させながら、 ご主人(カアイアリイ)の小屋の入口に立ちました。

彼女の顔面は、太陽の光を受けてキラキラと輝いていました。

 

すると、彼女の父が粗末な装いで歩み出て、こう言いました。

「我が子よ、お前の母は今マハナで、息絶えようとしている(N.1)。

 

だから是非とも、お前の愛情を母に注いであげてくれ。

彼のカヌーが偉大な地(ハワイ島コハラ)へお前を連れて行く前に、もう一度、母に会ってやって欲しいのだ。」

 

 

母を見舞に行かせて下さい

「ああ、何と悲しいことでしょう!」

と優しい子(カアラ)が言いました。

 

「一体いつから、カラ二(お母様)は病気なの?

主人が槍で捕まえたこの大きくて美味しい魚を、お母様に持って行ってあげましょう。

 

そして私がお母様のうずく手足を揉(も)みほぐせば、愛情溢(あふ)れる娘の手技が効(き)いて、きっとまた元気になるでしょう。

 

大丈夫。主人は私が行くことを、許してくれるでしょう。

違いますか? おお、カアイアリイよ。

 

最期にもう一度、母を抱きしめてあげたいのです。

ですからどうか、母のもとに行かせて下さい。

 

月があの湾を2回渡り終えるまでには、必ず戻って来ますから(N.2)。」

(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) マハナ(Mahana):

マハナは、ラナイ島北部にあるアフプアア(行政区画)の名称。カアラが住むカウノル村は島の南西部にあるので、マハナは島の反対側です。

(N.2) 月があの湾を2回渡り終える( the moon has twice spanned the bay):

晴れた日の夜、湾の水面に映る月は、あたかも湾を渡るように動きます。

そしてこの月は1晩に1回だけ湾を渡るので、ここで言う「2回渡り終える」とは、2晩が過ぎることを示しています。

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson, p.156-180.