夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

141 プウペヘの墓:(3) 2人は最高に幸せだった


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(前回からの続き)

カルルの豊かな海

彼はこう言いました。
「澄みきったカルルの海へ行こう!

 

そこで一緒に魚を捕(つか)まえよう、カラやアクを釣るんだ。

そしてそこで、僕は槍でカメを突(つ)こう。

 

最愛のあなたよ、僕はあなたを隠すだろう。

-- 永遠にマラウエアの洞穴の中に。

 

 

パラワイの大渓谷

そうでなければ、僕たちはパラワイの大渓谷で一緒に暮らそう。

 

 

そこで、あのウアウ鳥の雛(ひな)を食べるんだ!(N.1)

雛をキーの葉に包んで、甘いパラのシダの根と一緒に、蒸し焼きにしよう(N.2)。

 

山で採れるオヘロが、私の愛をリフレッシュしてくれるだろう。

そして2人でマウナ・レイの、冷たいミネラル・ウォーターを飲むんだ。

 

カオハイの隠れ家

カオハイの雑木林の中に、草を葺(ふ)いた小屋を作って、僕たちの休憩所にしよう。

そして僕たちは、夜空の星たちが輝きを失うまで、ずーっと愛し続けるんだ。」

 

2人は最高に幸せだった

メレはプロウ渓谷における、彼らの愛について物語っています。

彼らはそこで、まぶしく輝くイイヴィ鳥や、深紅色のアパパネを捕まえました(N.3)。

 

ああ、何という甘い喜びでしょう!

 

ワイアケアクアのバナナ林の中で、愛し合う2人はこう信じたのです。

「自分たちよりも美しいものなど、この世の中にあるはずがない。」

 

やがて彼らの目はかすんでいった

しかし暫(しばら)くすると、彼らの目は悲しみによる涙で、かすむようになりました。

やがてこの涙によるかすみが、少しずつひどくなって行きました。

 

そして最後には海水が襲いかかり、彼らの目を永遠に塞ぐことになるのです。

(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) ウアウ(uau):

ウアウはウワウ(ʻuwaʻu)とも呼ばれる 大形で暗灰褐色の鳥で、ハワイ諸島にのみ生息するハワイの固有種です。かつてのハワイでは、ウアウの雛(ひな)は 大変なご馳走、とされていたそうです。

和名はハワイシロハラミズナギドリ、学名は "Pterodroma sandwichensis"です。

(N.2) 焼く(bake): 

ここで言う「焼く」とは、イム(imu)と呼ばれる地中オーブンを使って、蒸し焼きにすることです。

(N.3) イイヴィ(iiwi)、アパパネ(apapane): 

イイヴィとアパパネは共にハワイミツスイ類の小鳥で、ハワイ諸島にのみ生息する固有種です。

前者のイイヴィは、ハワイミツスイの中でも特に美しいことから、パンフレットなどに紹介される機会が最も多く、和名はベニハワイミツスイ、学名は "Drepanis coccinea"です。

一方、アパパネは、最も生息数が多いので出会う機会も多く、和名はアカハワイミツスイ、学名は "Himatione sanguinea"です。

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907):Hawaiian Folk Tales, 16. The Tomb of Puupehe,  A Legend of Lanai,  From "The Hawaiian Gazette", p.181-185.