(前回からの続き)
カルルの豊かな海
彼はこう言いました。
「澄みきったカルルの海へ行こう!
そこで一緒に魚を捕(つか)まえよう、カラやアクを釣るんだ。
そしてそこで、僕は槍でカメを突(つ)こう。
最愛のあなたよ、僕はあなたを隠すだろう。
-- 永遠にマラウエアの洞穴の中に。
パラワイの大渓谷
そうでなければ、僕たちはパラワイの大渓谷で一緒に暮らそう。
そこで、あのウアウ鳥の雛(ひな)を食べるんだ!(N.1)
雛をキーの葉に包んで、甘いパラのシダの根と一緒に、蒸し焼きにしよう(N.2)。
山で採れるオヘロが、私の愛をリフレッシュしてくれるだろう。
そして2人でマウナ・レイの、冷たいミネラル・ウォーターを飲むんだ。
カオハイの隠れ家
カオハイの雑木林の中に、草を葺(ふ)いた小屋を作って、僕たちの休憩所にしよう。
そして僕たちは、夜空の星たちが輝きを失うまで、ずーっと愛し続けるんだ。」
2人は最高に幸せだった
メレはプロウ渓谷における、彼らの愛について物語っています。
彼らはそこで、まぶしく輝くイイヴィ鳥や、深紅色のアパパネを捕まえました(N.3)。
ああ、何という甘い喜びでしょう!
ワイアケアクアのバナナ林の中で、愛し合う2人はこう信じたのです。
「自分たちよりも美しいものなど、この世の中にあるはずがない。」
やがて彼らの目はかすんでいった
しかし暫(しばら)くすると、彼らの目は悲しみによる涙で、かすむようになりました。
やがてこの涙によるかすみが、少しずつひどくなって行きました。
そして最後には海水が襲いかかり、彼らの目を永遠に塞ぐことになるのです。
(次回に続く)
(ノート)
(N.1) ウアウ(uau):
ウアウはウワウ(ʻuwaʻu)とも呼ばれる 大形で暗灰褐色の鳥で、ハワイ諸島にのみ生息するハワイの固有種です。かつてのハワイでは、ウアウの雛(ひな)は 大変なご馳走、とされていたそうです。
和名はハワイシロハラミズナギドリ、学名は "Pterodroma sandwichensis"です。
(N.2) 焼く(bake):
ここで言う「焼く」とは、イム(imu)と呼ばれる地中オーブンを使って、蒸し焼きにすることです。
(N.3) イイヴィ(iiwi)、アパパネ(apapane):
イイヴィとアパパネは共にハワイミツスイ類の小鳥で、ハワイ諸島にのみ生息する固有種です。
前者のイイヴィは、ハワイミツスイの中でも特に美しいことから、パンフレットなどに紹介される機会が最も多く、和名はベニハワイミツスイ、学名は "Drepanis coccinea"です。
一方、アパパネは、最も生息数が多いので出会う機会も多く、和名はアカハワイミツスイ、学名は "Himatione sanguinea"です。
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907):Hawaiian Folk Tales, 16. The Tomb of Puupehe, A Legend of Lanai, From "The Hawaiian Gazette", p.181-185.