(前回からの続き)
私に手を貸して下さい
エレイオは、全ての女子供にこう命じました(*1)。
「自分の家に戻りなさい。そして私と一緒にお祈りをして下さい。
豚と鶏、それに犬たちは一匹残らず、暗い小屋の中につないで、静かにさせなさい。
もうこれ以上の静かさは無い、と言うくらいにするのです。」
また作業中の男たちには、こんな風に頼みました。
「あなた方の神に『エレイオにご加護を!』と祈願するのを忘れないで下さいね。」
全てを神々に捧げて祈願する
それから彼はハナに向けて出発し、カエレクに着くと、アヴァの灌木を数本引き抜きました。
この地のアヴァは、薬効が高いことで知られていたのです。
そして彼は、大きなブタが焼き上がるまでには、戻って来ました。
アヴァの準備が調(ととの)いました。
またご馳走も出来上がり、次々と並べられました。
彼はそれらの全てを、神々の前にお供えしました。
その上で、彼がこれから行おうとしている事に、お力添え下さいますよう祈願したのでした。
霊を捕えてプオア(風葬場)へ急ぐ
この間ずーっと、あの少女の霊は彼の近くに居たようでした。
どうやら彼に愛情を感じているようですが、当然ながら、その様子は誰にも見えません。
エレイオは、神々への祈りを済ませると、振り向いてその霊を捕まえました。
そして息をひそめながら、かつ神々に祈りながら、プオアに向けて急ぎました。
すると、彼の考えに気付き始めた両親も、後に続きました。
そうです、エレイオは彼らの娘にカプク(死者の再生)をさせようとしていたのです(N.1)。
(次回に続く)
(ノート)
(N.1) カプク(死者の再生)(kapuku (or restoration to life of the dead)):
「カプク」は日本語の「再生」に対応するハワイ語で、一度亡くなった人が再び生命を取り戻すことを意味します(*2)。
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 14. Ahuula ; A Legend of Kanikaniaula and the First Feather Cloak, Mrs. E. M. Nakuina, p.147-155.
(*2) Martha Beckwith(1970): Hawaiian Mythology. Mok.10 The Soul after Death, p.145.