(前回からの続き)
もしも日暮れまでに戻らなかったら
2人は、カニカニアウラの体力に合わせて、ゆっくりと進みました(*1)。
今や彼女には肉体があるので、霊だった時のようなスピードでは、動けなかったのです。
ラウニウポコに着くと、エレイオは振り向いて、彼女にこう言いました。
「ここから先は、私が1人で行きます。
あなたはここで、茂みの中に隠れて待っていて下さい。
もしも日が暮れるまでに戻らなかったら、私はきっと死んでいるでしょう。
その時は、私達が来た道をたどって、あなたの仲間たちの所へ戻りなさい。
しかし、もしも万事うまく行ったら、私はしばらくして戻って来ます。」
イム焼きを逃れる
こうして、彼は1人でさらに進み続けました。
そしてラハイナの境界にあるマキラに着いた時のことです。
何人かが集まって、「イム」と呼ばれる地下オーブンを、加熱しているのが見えました(N.1)。
彼らはエレイオに気付くと、手足を縛って生きたまま、あぶり焼きにしようとしました。
そうするようにと、王から命令されていたからです。
しかしエレイオは、その命令を取っ払って、彼らにこう頼みました。
「王の足元で死なせてくれ!」
こうして彼は、待ち受けていた熱々(あつあつ)のイムから、上手(うま)く逃れたのでした。
王の前に立つ
そして遂(つい)に彼が、王カカアラネオの前に立った時、王言い放ちました。
「一体どうしたのだ?
お前、何故(なぜ)、あぶり焼きにされないのだ。 わしの命令だぞ?
我がルナよ、一体どうしたと言うのだ?(N.2)」
(次回に続く)
(ノート)
(N.1) イム(Imu):
「イム」は、地面に穴を掘って、その底に加熱した石を敷いた、地下オーブンです。
「カハラオプナ」 のお話しでは、死刑判決を受けたカウヒらが、このイムで焼き殺されます。
一方、このオーブンを使った伝統的調理法は、今でも受け継がれており、豚を丸焼きにする際などに使われます。
(N.2) ルナ(luna):
ルナは広範な意味を持つハワイ語ですが、ここでは「使者」を意味します(*2)。すなわち、このお話しの始めの部分で使われた語、 「クキニ(kukini)」 と同じ意味です。
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 14. Ahuula ; A Legend of Kanikaniaula and the First Feather Cloak, Mrs. E. M. Nakuina, p.147-155.
(*2) L. Andrews(,Rev. H. H. Parker)(1922): A Dictionary of the Hawaiian Language, Published by the Board, Honolulu,Hawaii.