夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

136 アフウラ:(10) イム焼きを逃れる


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(前回からの続き)

もしも日暮れまでに戻らなかったら

2人は、カニカニアウラの体力に合わせて、ゆっくりと進みました(*1)。

今や彼女には肉体があるので、霊だった時のようなスピードでは、動けなかったのです。

 

ラウニウポコに着くと、エレイオは振り向いて、彼女にこう言いました。

 

「ここから先は、私が1人で行きます。

あなたはここで、茂みの中に隠れて待っていて下さい。

 

 

もしも日が暮れるまでに戻らなかったら、私はきっと死んでいるでしょう。

その時は、私達が来た道をたどって、あなたの仲間たちの所へ戻りなさい。

 

しかし、もしも万事うまく行ったら、私はしばらくして戻って来ます。」

 

イム焼きを逃れる

こうして、彼は1人でさらに進み続けました。

 

 

そしてラハイナの境界にあるマキラに着いた時のことです。

何人かが集まって、「イム」と呼ばれる地下オーブンを、加熱しているのが見えました(N.1)。

 

彼らはエレイオに気付くと、手足を縛って生きたまま、あぶり焼きにしようとしました。

そうするようにと、王から命令されていたからです。

 

しかしエレイオは、その命令を取っ払って、彼らにこう頼みました。

「王の足元で死なせてくれ!」

 

こうして彼は、待ち受けていた熱々(あつあつ)のイムから、上手(うま)く逃れたのでした。

 

王の前に立つ

そして遂(つい)に彼が、王カカアラネオの前に立った時、王言い放ちました。

 

「一体どうしたのだ?

お前、何故(なぜ)、あぶり焼きにされないのだ。 わしの命令だぞ?

 

我がルナよ、一体どうしたと言うのだ?(N.2)」

(次回に続く)

 

(ノート)
(N.1) イム(Imu): 

「イム」は、地面に穴を掘って、その底に加熱した石を敷いた、地下オーブンです。

「カハラオプナ」 のお話しでは、死刑判決を受けたカウヒらが、このイムで焼き殺されます。

一方、このオーブンを使った伝統的調理法は、今でも受け継がれており、豚を丸焼きにする際などに使われます。

(N.2) ルナ(luna): 

ルナは広範な意味を持つハワイ語ですが、ここでは「使者」を意味します(*2)。すなわち、このお話しの始めの部分で使われた語、 「クキニ(kukini)」 と同じ意味です。

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 14. Ahuula ; A Legend of Kanikaniaula and the First Feather Cloak, Mrs. E. M. Nakuina, p.147-155.

(*2) L. Andrews(,Rev. H. H. Parker)(1922): A Dictionary of the Hawaiian Language, Published by the Board, Honolulu,Hawaii.