(前回からの続き)
あなたのそりが欲しい
再びスタートする前に、ペレはカハワリに、あなたのパパ・ホルア(そり)を下さい、と頼みました(*1)。
しかしその時のカハワリには、目の前の女性が女神ペレだとは、想像すら出来ませんでした。
その風貌(ふうぼう)から見て、彼女はただの地元の一女性だったからです。
そこでカハワリは、こう答えました。
「アオレ!(冗談じゃない!)(N.1)
私のそりを欲しいって?
そんな事を言うとは、あんた、私の妻にでもなったつもりか?」
カハワリがそりに飛び乗る
そして、遅れていることに、しびれを切らしたかのように、
カハワリはパパ(そり)を調整すると、ジャンプするための助走を、数mほどしました。
それから、その勢いに乗りながら、全力を振り絞って、そりに飛び移りました。
そして、素早く丘を滑り降りてしまったのでした。
ペレの怒りが爆発する
一方、ペレはカハワリの返事に激怒して、地面を両足で踏みつけました。
すると地震が起こり、丘をずたずたに引き裂いてしまいました。
それから彼女は、大声で何かに呼びかけました。
すると今度は、炎が立ち上り、ドロドロのラバ(溶岩)が噴き出して来ました。
ペレはこれらの、抵抗のしようもない、復讐鬼(ふくしゅうき)たちを引き連れ、
自らは神秘的な姿に変身して、その丘を下って行きました。
(次回に続く)
(ノート)
(N.1) アオレ!(Aole!):
「アオレ!」と、カハワリがペレを怒鳴りつけたのは、当時のハワイが厳格な階級社会だったからです。
その中で、首長カハワリは支配階級でしたが、女神ペレの方は、ただの地元の一女性に変身したので、平民に見えたのでしょう。
その平民が首長のそりを欲しがる事など、たとえお祭り騒ぎの中でも、決して許されなかったのです。
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅳ. Pele and Kahawali, From Ellis's "Tour of Hawaii", p39-42.