(前回からの続き)
焦(じ)らされる兄弟たち
マウイ・ムアの話を聞いた兄弟たちは、怒りをぶちまけながら、こう決意しました(*1)。
「もう2度と漁(りょう)なんかに行かないぞ。
あの『火』が 次に現れるのを、岸で待つんだ。」
しかし、それから幾日経(た)っても、
あの「火」は現れませんでした。
そこで兄弟たちは、再び漁に出かけました。
すると、一体どうしたことでしょう。
あの「火」が、岸に見えるではありませんか!
こんな風にして、彼らは幾度と無く、焦れったい思いをしました。
何しろ漁に出た時に限って、その火が現れたのですから。
そして彼らが岸に戻ると、もうその火は見つからないのです。
兄弟たちの火の追いかけっこは、まあこんな調子でした。
アラエはマウイたちを数えている
尾がカールしたアラエは知っていたのです、
「マウイとヒナには、これら4人の息子しかいない。」 ということを。
ですから仮に誰かが、火を見張ろうとして岸に残り、
それ以外の息子たちがカヌーで漁に出ても、アラエは騙(だま)されません。
カヌーに乗った息子たちを数えれば、それが判(わか)るからです。
そんな時、アラエは火をつけようとしませんでした。
火をつけるのは、カヌーの中に4人いる、と確認出来た時だけです。
ヒョウタンを乗せて行け
マウイ・ムアはこれについて、じっくりと考えました。
そして、兄弟たちにこう言いました。
「明日の朝、お前らは漁に出るんだ。
そして、わしは岸に残る。
だが、お前らはヒョウタンを持って行くんだ。
そして、そのヒョウタンにカパ布を着せてやれ。
それから、そいつをカヌーの中のわしの席に置け。
こうして準備が出来たら、漁に出かけるんだ。」
(次回に続く)
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅱ. Exploits of Maui. Rev. A.O. Forbes, Ⅱ. The Origin of Fire, p.33-35.