夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

032 火の起源:(3) アラエに振り回される


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(前回からの続き)

焦(じ)らされる兄弟たち

マウイ・ムアの話を聞いた兄弟たちは、怒りをぶちまけながら、こう決意しました(*1)。

 

「もう2度と漁(りょう)なんかに行かないぞ。

あの『火』が 次に現れるのを、岸で待つんだ。」

 

しかし、それから幾日経(た)っても、

あの「火」は現れませんでした。

 

そこで兄弟たちは、再び漁に出かけました。

すると、一体どうしたことでしょう。

あの「火」が、岸に見えるではありませんか!

 

こんな風にして、彼らは幾度と無く、焦れったい思いをしました。

 

何しろ漁に出た時に限って、その火が現れたのですから。

そして彼らが岸に戻ると、もうその火は見つからないのです。

 

兄弟たちの火の追いかけっこは、まあこんな調子でした。

 

アラエはマウイたちを数えている

尾がカールしたアラエは知っていたのです、

「マウイとヒナには、これら4人の息子しかいない。」 ということを。

 

ですから仮に誰かが、火を見張ろうとして岸に残り、

それ以外の息子たちがカヌーで漁に出ても、アラエは騙(だま)されません。

 

カヌーに乗った息子たちを数えれば、それが判(わか)るからです。

そんな時、アラエは火をつけようとしませんでした。

 

火をつけるのは、カヌーの中に4人いる、と確認出来た時だけです。

 

ヒョウタンを乗せて行け

マウイ・ムアはこれについて、じっくりと考えました。

そして、兄弟たちにこう言いました。

 

「明日の朝、お前らは漁に出るんだ。

そして、わしは岸に残る。

 

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だが、お前らはヒョウタンを持って行くんだ。

そして、そのヒョウタンにカパ布を着せてやれ。

 

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それから、そいつをカヌーの中のわしの席に置け。

こうして準備が出来たら、漁に出かけるんだ。」

(次回に続く)

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅱ. Exploits of Maui. Rev. A.O. Forbes, Ⅱ. The Origin of Fire, p.33-35.