(前回からの続き)
ヒョウタンに騙(だま)される
兄弟たちは、マウイ・ムアに言われた通りにしました(*1)。
そしてその翌朝、彼らが漁(りょう)に出かけた、その時です。
アラエはカヌーの中の人影を数え、4人の姿を確認しました。
それから彼らは、火をつけました。
そして火の上にバナナを置いて、焼き始めたのでした。
バナナが十分焼き上がる前に、一羽のアラエが大声で叫びました。
「私たちのご馳走が出来上がったわ!
ほら見て。ヒナは賢い息子を持ったものね。」
マウイ・ムアがアラエを捕まえる
それまでアラエたちは、マウイ・ムアに気付きませんでした。
しかし彼はこっそりと、彼女らのすぐ近くまで忍び寄っていたのでした。
そして、このアラエの叫び声と共に、彼は素速く飛び出して来ました。
そして、尾がカールしたアラエを捕まえると、大声で叫びました。
「よーし、お前を殺してやる。
この、いたずらっ子のアラエめ!
いいか! まさにお前が、火をわしらから隠しているんだ。
だから、お前をぶっ殺してやりたいんだ。」
お願いだから殺さないで
すると、アラエは答えました。
「もしも私を殺したら、火の秘密も一緒に無くなってしまう。
それでは、火が手に入らないでしょう。」
マウイ・ムアがアラエの首を絞め始めたので、アラエはこの答えを繰り返し、
さらに、こう言いました。
「お願いだから殺さないで。そうすれば、あなたに火をさし上げましょう。」
(次回に続く)
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅱ. Exploits of Maui. Rev. A.O. Forbes, Ⅱ. The Origin of Fire, p.33-35.