夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

031 火の起源:(2) アラエの火を狙え!


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(前回からの続き)

火の場所へ走る

そこで彼らは、いくらかの魚を捕った後で、岸に向かったのでした(*1)。

 

カヌーが砂浜に着くと、マウイ・ムアは岸へ飛び下りました。

そして火が燃えていた、あの場所に向けて走りました。

 

アラエが火の番人

 

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さて、尾が曲がったアラエ(マッド・ヘン)は、火の番人でした(N.1)。

 

そしてマウイ・ムアが近づいて来るのを見ると、アラエたちは火を掻(か)き消して、飛び去ってしまいました。

マウイ・ムアは敗北感に打ちひしがれて、兄弟たちがいる家に戻りました。

 

跡形も無かったんだ

兄弟たちがマウイ・ムアに尋ねました。

「あの火はどうだった?」

 

「全くだ、どうなってるんだ?」

と彼が答えました。

 

「わしがその場所に着いた時は、なんと、火の跡形も無かったんだ。

もう消えていたんだ。

 

思うに、ある男がその火を持っていたんだ。

いや、待てよ。そうじゃないな。

 

アラエたちこそ、その火の持ち主なんだ。

しかも、わしらのバナナがまるごと、盗られちまったんだ。」

 

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(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1) アラエ(alae):

アラエは大きさが 鳩(ハト)くらいの鳥です。その仲間は、日本を含む世界の熱帯・温帯に広く分布し、和名は「バン(鷭)」、学名は"Gallinula chloropus"です。

このバンには幾つもの亜種がありますが、ハワイ(旧称サンドイッチ)の固有亜種の学名は"Gallinula chloropus sandvicensis"です。

そして、そのハワイ語名がアラエ('alae)で 、英語名がマッド・ヘン(madhen)です。

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅱ. Exploits of Maui. Rev. A.O. Forbes, Ⅱ. The Origin of Fire, p.33-35.