(前回からの続き)
火の場所へ走る
そこで彼らは、いくらかの魚を捕った後で、岸に向かったのでした(*1)。
カヌーが砂浜に着くと、マウイ・ムアは岸へ飛び下りました。
そして火が燃えていた、あの場所に向けて走りました。
アラエが火の番人
さて、尾が曲がったアラエ(マッド・ヘン)は、火の番人でした(N.1)。
そしてマウイ・ムアが近づいて来るのを見ると、アラエたちは火を掻(か)き消して、飛び去ってしまいました。
マウイ・ムアは敗北感に打ちひしがれて、兄弟たちがいる家に戻りました。
跡形も無かったんだ
兄弟たちがマウイ・ムアに尋ねました。
「あの火はどうだった?」
「全くだ、どうなってるんだ?」
と彼が答えました。
「わしがその場所に着いた時は、なんと、火の跡形も無かったんだ。
もう消えていたんだ。
思うに、ある男がその火を持っていたんだ。
いや、待てよ。そうじゃないな。
アラエたちこそ、その火の持ち主なんだ。
しかも、わしらのバナナがまるごと、盗られちまったんだ。」
(次回に続く)
(ノート)
(N.1) アラエ(alae):
アラエは大きさが 鳩(ハト)くらいの鳥です。その仲間は、日本を含む世界の熱帯・温帯に広く分布し、和名は「バン(鷭)」、学名は"Gallinula chloropus"です。
このバンには幾つもの亜種がありますが、ハワイ(旧称サンドイッチ)の固有亜種の学名は"Gallinula chloropus sandvicensis"です。
そして、そのハワイ語名がアラエ('alae)で 、英語名がマッド・ヘン(madhen)です。
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅱ. Exploits of Maui. Rev. A.O. Forbes, Ⅱ. The Origin of Fire, p.33-35.