(新しいお話しの始め)
そり滑りに出かける
その昔、ケアリイクキイと言う王様が、ハワイを治めていた頃のことです(*1)。
ハワイ島東部のプナに、カハワリと言う首長がいました。
ある日、カハワリは大好きな仲間と一緒に、ホルア(そり)を楽しみに出かけました。
そこはある丘の斜面で、今でもカ・ホルア・アナ・オ・カハワリ(カハワリのそり滑り場)と呼ばれている所です。
丘の麓(ふもと)はお祭りムード
丘の麓には、そり滑り競争を見ようと、大勢の人々が集まっていました。
ハワイアン・ミュージックとフラ・ダンスの一座も、応援に駆けつけました。
競技会の雰囲気を盛り上げて、観客により一層楽しんでもらうためです。
さあ、フラが始まりました。 ドラムの音や歌声も聞こえてきます。
このお祭りムードの中で、カハワリと彼の仲間のそり滑りが始まりました。
女神ペレが首長カハワリに挑む
このお祭り騒ぎが、火山の女神、ペレの好奇心をそそりました。
そり滑りが見たくなったペレは、キラウエアの山から下りて来ました。
彼女は、人間の女性の姿に変身すると、丘の一番高い所に立ちました。
そして、「私とそり滑り競争をしよう!」 、とカハワリに挑戦したのです。
彼はその女性の挑戦を受けました。
2人は同時にスタートし、丘を一気に滑り降りて行きました。
カハワリがペレを打ち破る
幅の狭いそりの上で、体のバランスをとるには、ノウハウがいります。
しかしペレは、ライバルほど上手く操(あやつ)ることが出来ず、競争に敗れてしまいました。
一方、彼女に勝ったカハワリは、観客の拍手喝采(かっさい)を浴びながら、丘の斜面を戻って行きました。
(次回に続く)
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅳ. Pele and Kahawali, From Ellis's "Tour of Hawaii", p39-42.