夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

158 カアラとカアイアリイ:(12) さあ勝利の宴だ


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(前回からの続き )

大王がカアイアリイの勝利を宣言する

「よーし!」 と 大王が叫びました(*1)。


「我らの若者(カアイアリイ)は、カネコアのように強いぞ(N.1)。

さあ、我らの娘さん(カアラ)に、彼女が愛する人の手足をもんで、癒してもらおう!

 

彼の皮膚を叩いたり、関節を押えたり、また、背中を揉(も)んだりしてもらおう。

--愛情をこめた握りで、そして、ロミロミのタッチで(N.2)。

 

暫(しばら)くすれば、超豪華な焼き料理が出て来るであろうし、フラ・ダンスや歌も始まるだろう。

そしてこの宴会が終わったら、その時は、彼らを2人だけにしてやろう。」

 

女性たちが歌いヒョウタンを操(あやつ)る

女性たちは1列に並んで、しゃがみ込んでいます。

彼女らはお気に入りの旋律を繰り返して、戦いに勝って愛する人を獲得した者を、褒(ほ)め称(たた)えているのです。

 

右手にはフラのヒョウタンを握り、その中に入っている小石で、カタカタ音を立てています(N.3)。

それから空高く放り投げたり、振り回したり、揺らせたり、掌(てのひら)で叩(たた)いたり、さらにはマットにドンと叩きつけたりします。

 

そして今度は、柔軟に関節を動かして腰を振り回します。

この激しい踊りは、腰を上げたり、ねじったりしながら、また揺らせたり、歌ったりしながら続きます。

 

 

カアラたちが踊り始める

カアラは、若い女性たちの一団と共に立ち上がりました。

こちらは王たちからの贈り物で、大切に庇護(ひご)されています。

 

彼女たちは、花輪をからませた体を揺らせながら、陽の光に輝く腕でポーズをとりました。

そして葉のスカートを手で揺り動かしながら、隠れていたふくよかな大腿(ふともも)を見せました。

 

英雄がカアラを連れ去る

これをじっと見つめていた男たちが、燃え上がります。

炎のように情熱的な眼差しで、今日の英雄カアイアリイが飛ぶように走り、愛するカアラを抱きしめます。

 

そしてこう叫びながら、彼女を連れてその場を去って行きます。

「きみは、ハワイ島コハラの僕の家で、永遠に僕だけのために踊るのだ!」

(次回に続く )


(ノート)

(N.1) カネコア(Kanekoa):

カネコアは、カメハメハ大王(Ⅰ世)の父親であったケオウア(Keoua)の、異母兄弟だったとも言われています(*2)。

(N.2) ロミロミ(Lomilomi):

ロミロミはハワイの伝統的なマッサージで、ハワイアン・マッサージなどとも呼ばれます。指、掌(てのひら)、腕、関節(肘,膝)、足、棒・石などを使って、患部を擦(こす)ったり、押したり、揉(も)んだりします。

(N.3) フラのヒョウタン(hula gourd):

フラのヒョウタンとは、瓢箪(ヒョウタン)で作ったフラ用の楽器(ドラム)を指しています。ハワイ語ではイプ(Ipu)、イプへケ(Ipu heke)などと呼ばれます。

 

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson, p.156-180.

(*2) Kapiikauinamoku (Sammy Amalu) (1955): The Story of Hawaiian Royalty. Honolulu Advertiser, Sept.11 - Dec.20, 1955.