夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

157 カアラとカアイアリイ:(11) マイロウが倒れる


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(前回からの続き )

攻撃のチャンスを狙う

そして今や、彼らは両腕を高くかざして、互いに相手を引き寄せ合いながら、満身の力を込めて両手のひらを広げます(*1)。

それはちょうど、筋骨隆々としたカニのハサミが、獲物にぐいっと掴(つか)みかかろうとしているかのようです。

 

彼らは相手に致命的なダメージを与えようと、組み合いに持ち込むチャンスを狙(ねら)っているのです。

 

攻めるマイロウをカアイアリイが捕える

さあ、傷痕(しょうこん)のある幼女絞殺魔が、若き槍の達人の喉(のど)をめがけて、素早く跳躍しました(N.1)。

 

槍の達人は襲いかかる相手の腕をスッと捕えると、一瞬のうちにヘシ曲げて、自らの腕の中に抱え込んでしまいます。

そして間髪(かんはつ)入れずに、致命的な殴打(おうだ)を浴びせて、 敵の肩と腕の骨をへし折ってしまいます。

 

途方に暮れたボーン・ブレイカーは、激怒して残された片手を固く握りしめます。


しかし若者の頑強な両腕は、抑え難い怒りで張り詰めていたので、相手の残る片腕をも捩(ねじ)り折ってしまったのでした。

 

 

血みどろの死体と化す

打ちのめされた残酷者は、両腕をだらりと垂(た)らして逃げに転じます。

しかしすぐさま、若者の憎悪が残酷者に襲いかかり、相手の喉をぐいっとつかみます。

 

そして不運な悪党を押し倒すと、カアラの英雄(カアイアリイ)は、相手の背に膝(ひざ)を押し当てました。

さらにそり返った背骨をしっかりと膝で押さえ込むと、今度はそれを強く引いては、ぐいと押し返し始めました。

 

英雄はこれを背骨の関節群が、ポキッと音を立てて壊れるまで続けたのです。

 

こうして、乙女(おとめ)を襲う恐ろしい絞殺魔(こうさつま)は、骨を(へし)折られた血みどろの死体と化し、マット上にうつ伏せに倒れたのでした。

(次回に続く)

 

(ノート)

(N.1)幼女絞殺魔(child-strangler), 槍の達人(spear-man):

幼女絞殺魔とは「マイロウ」を指し、また、槍の達人とは「カアイアリイ」を指しています。

 

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson, p.156-180.