夢の国ハワイの昔話

ハワイには長く口承されてきた昔話があります。ここでは、それらを少しずつご紹介していきます。

133 アフウラ:(7) 少女の喜びの叫び

(前回からの続き) 霊を肉体に戻す プオア(風葬場)に着くと、エレイオはその霊を、少女の足の甲にもたれかけるように置きました(*1)。 それから、霊を甲にぴったり密着させると、足の中にギュッと押し込みました。 その一方で、彼はその間ずーっと神に祈り続…

132 アフウラ:(6) 祭壇からプオアへ

(前回からの続き) 私に手を貸して下さい エレイオは、全ての女子供にこう命じました(*1)。 「自分の家に戻りなさい。そして私と一緒にお祈りをして下さい。 豚と鶏、それに犬たちは一匹残らず、暗い小屋の中につないで、静かにさせなさい。 もうこれ以上の静…

131 アフウラ:(5) ラナイと祭壇を作る

(前回からの続き) ちょっと待って下さい 両親は直ぐに、エレイオを養子にすることにしました(*1)。 そこで大きなブタを殺して、アハ アイナ(祝宴会)をしよう、と話し始めた時のことです(N.1)。 エレイオが こう言いました。 「ちょっと待って下さい。その前に…

130 アフウラ:(4) 霊からのメッセージ

(前回からの続き) 高床に横たわる死体を見る エレイオはプオア(風葬場)の中に入ると、高い床の上まで登りました(*1)。 彼女はどう見ても、先ほど彼の前に現われた、霊と同じくらい美しい人でした。 そして見た所、まだ腐敗が始まっていなようでした。 両親た…

129 アフウラ:(3) 女性の霊に頼まれる

(前回からの続き) 高貴な人の風葬場プオア エレイオが彼女に追いついたのは、あるプオアの入口でした(*1)。 プオアとは、ちょっとした塔のようなものです。 普通は竹で出来ていて、半分ぐらいの高さの所に床があります。 その上には、高貴な人々の死骸が横た…

128 アフウラ:(2) クキニよりも速い女

(前回からの続き) 島はずれのハナに行って来い! 使者のエレイオは、「ハナに行って、王のためのアヴァを取って来い。」と命じられました(*1)(N.1)。 さらに、「王の晩餐会に間に合うようにな!」 と言われたのです。 その時、王のカカアラネオはラハイナに住ん…

127 アフウラ:(1) 俊足の使者クキニ

(新しいお話の始め) 「クキニ」はプロの使者 エレイオはクキニ(熟練した使者)で、マウイ島の王カカアラネオに仕えていました(*1)(N.1)。 当時の王や有力なアリイ(首長)たちは各々、常に何人かのクキニを抱えていたのです。 どんな使いを命じられようと、彼ら…

126 オアフヌイ:(13) そして誰もいなくなった

(前回からの続き) キリキリウラは石に変わる キリキリウラが倒れた場所は、川を隔てて、レフアの木と反対側でした(*1)。 そして、彼女はそこで石に変わったと言われています。 その石は今でも、「これが、その時の石です!」 と指し示すことが出来ます。 川の…

125 オアフヌイ:(12) 息子を見捨てた妻を殺す

(前回からの続き) 妻に息子たちの消息を尋ねる 父であり夫でもある男(レフアヌイ)は、それから大股で、自分の寝家(ねや)に向かいました(*1)。 そこでは彼の妻が、一番下の子を両腕に抱いて眠っていました。 夫は妻を呼び起こすと、「息子たちはどうした? 」 …

124 オアフヌイ:(11) 王の首を切り落とす

(前回からの続き) 王はぐっすり寝入っていた 王の寝家(ねや)では、誰も彼もが眠入っていました(*1)。 その中で老女が唯1人で、ククイ・ナッツの灯(あか)り番をしていました。 王オアフヌイは手足を大の字に伸ばして、何枚も積み重ねた柔らかいマットの上で寝…

123 オアフヌイ:(10) 遺骨を首に巻く

(前回からの続き) 亡霊の言葉は本当だった 父レフアヌイは悩み抜いた末、彼が最も信頼している従者を、呼び起こしました。 そして真夜中過ぎに、2人はワイアルアを後にして家に向かいました。 彼らが王家の敷地内に着いたのは、夜明けでした。 2人はまず初…

122 オアフヌイ:(9) レフアヌイはあれこれ考えた

(前回からの続き) 私は邪魔者だった レフアヌイは、息子2人が死んだことには、疑いを持ちませんでした(*1)。 そこで彼は、次のことを思い起こしてみました。 まずは、なぜ王があのよそ者たちを訪ねるのか? でした。 彼は、想定される理由に関連した、あり…

121 オアフヌイ:(8) 夢か? それとも亡霊?

(前回からの続き) 枕元に息子たちが現れる かなり夜が更けてから、その日の仕事に疲れたレフアヌイは、横になって休みました(*1)。 そしてほんの少しの間だけ眠った、その時でした。 枕元に2人の息子たちが立っているのを、見たような気がしたのです。 年上…

120 オアフヌイ:(7) レフアヌイが魚取りに行く

(前回からの続き) 王家の男たちの食事 さて王が在宅の場合は、王家の男たちは誰もが皆、王と一緒に食事を摂(と)りました(*1)。 その中には王の姉の夫であるレフアヌイと、彼らの息子たち2人もいました。 息子たちは、健康で丸ぽちゃの幼い少年で、年齢は8…

119 オアフヌイ:(6) 王が忠告を聞き入れる

(前回からの続き) 王は人肉に取り憑(つ)かれた オアフヌイの臣民たちは、こんな風にほのめかし始めました(*1)。 「わしらの若い王は、あの饗宴で人肉の味を覚えて、病みつきになったのだ。 そして今では王の残忍な食欲が、あの恐ろしい料理を追い求めているの…

118 オアフヌイ:(5) 旅人を狙え

(前回からの続き) 旅人を狙(ねら)え 王家の訪問者は、あの特別なご馳走をしきりに欲しがりました(*1)。 そのためロ・アイカナカは、あちこちに戦士を送らねばなりませんでした。 まずは峠、リフエとカレナからワイアナエに通じる峠です、 そしてさらに寂しい…

117 オアフヌイ:(4) この豚肉は美味い

(前回からの続き) この豚肉は美味(うま)い 礼を尽くしたご馳走会の返礼として、今度は南方の首長が饗宴を催しました(*1)。 そして、王はこのよそ者たちと一緒に、豪華な食事をとりました。 ここで王の前に出されたメイン料理は、見かけは豚肉のようでした。 …

116 オアフヌイ:(3) 人食い首長との出会い

(前回からの続き) 人食いが王の近くに移り住む ロ・アイカナカ、人食い首長らの残党は、こう呼ばれています(*1)(N.1)。 彼らはノース・ショアから追われ、ヘレマノの山側に住むよう強制されました。 そこは一つの居住区で、王族・神官の専用地の、すぐ外側にあ…

115 オアフヌイ:(2) ヘレマノとオアフヌイ

(前回からの続き)ノース・ショアから人食いが追われるクカニロコからマウカ、すなわちワイメア山脈の方角に4kmほど行くと、ヘレマノがあります(*1)(N.1)。そこは、南太平洋からやって来た人食い首長らの残党が、最後に住み着いた場所です。 それまで彼らは、…

114 オアフヌイ:(1) バース・ストーン

(新しいお話しの始め) 王家の子が生まれた場所 オアフ島のエヴァとワイアルアの間には、広大な台地が広がっています(*1)。 この台地上で、カウコナフア橋からマウカに約1.6km離れた所に、 クカニロコと呼ばれる、歴史的に重要な場所があります(N.1)(N.2)。 …

113 プナホウの泉:(9) マノア渓谷に隠遁(いんとん)する

(前回からの続き) 故郷のカアラに帰る その後、「山の霧 」と 「ワアヒラの雨」は、カアラにある幼少期を過ごした家に帰りました(*1)(N.1)。 しばらくそこに滞在しながら、彼らは時には、コナフアヌイやマノア渓谷の上流を訪れたことでしょう。 今でもこれらの場…

112 プナホウの泉:(8) 荒れ地がカロ水田に変わる

(前回からの続き) 荒れ地がカロ水田に変わる その後、カウアワアヒラ(男の子)は、カロ(タロ)の畑を幾区画か作りました(*1)。 人々は豊かな水に魅せられ、また、その水のお陰で肥沃になった、土地に魅せられました。 そして次々とこの地にやって来ては、あち…

111 プナホウの泉:(7) 水浴び場が出来た

(前回からの続き) カナワイの池に潜る それから、ワアヒラの雨は、カナワイの池に行って水の中に潜りました(*1)。 すると地下水路は、水の神により、水を引きたい場所まで開通していました。 彼はその地下水路を泳いで通り抜けて、今では 「プナホウの泉」の名…

110 プナホウの泉:(6) 水を引きたいのです

(前回からの続き) 水浴びをしたい ある日、双子の女の子・カウアキオワオが、男の子にこう言いました(*1)。 「私、水浴びをしたいわ。」 そして、水が少しも無い場所に住んだ辛さを訴えました。 それを聞いた男の子は、こう言って彼女を宥(なだ)めました。 「こ…

109 プナホウの泉:(5) プナホウのほら穴へ

(前回からの続き) また義母が現われる 彼らの農作物が順調に実ってきた、ちょうどその時のことです(*1)。 あの義母がまたやって来て、彼らを見つけたのでした。 義母は双子の子供たちを、住んでいたほら穴から追い払った上に、 彼らが汗水たらして得た収穫物…

108 プナホウの泉:(4) クカオオの丘とカプ

(前回からの続き) クカオオの丘に住む しかし、彼らは走ってそこから逃げ出しました(*1)。 そしてクカオオの丘の斜面にある、小さなほら穴に隠れたのでした。 この丘の上には、メネフネたちの神社がありました(N.1)。 暫(しばら)くの間、彼らはここに住んで…

107 プナホウの泉:(3) 双子を義母が追う

(前回からの続き) 虐待に耐え切れず家を出る 義母の虐待は次第にひどくなり、双子の子らは遂に耐えられなくなりました(*1)。 食べ物や衣服そして水を取り上げる、それだけではありませんでした。 ことあるごとに、彼らを軽蔑したり辱(はずかし)めたりしたの…

106 プナホウの泉:(2) 神のご加護を祈る

(前回からの続き) 父は義母を信じていた それは双子の子供たちが、ちょうど十歳位になった時のことでした(*1)。 彼らの父はハワイ島に出かけるため、長期間、家を留守にしなければなりませんでした。 その時の父は、子供たちを妻と一緒に残すことに、何の不…

105 プナホウの泉:(1) 魅力的な双子と義理の母

(新しいお話しの始め) 「ワアヒラの雨」 と 「山の霧」 その昔、カアラの山に、カハアケアと言う名の首長が住んでいました(*1)(N.1)。 彼には双子の子供、男の子と女の子がいましたが、母親は2人を産むと直ぐに死んでしまいました。 この男の子はカウアワアヒラ…

謹賀新年

新年おめでとうございます。 今年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。