(新しいお話しの始め)
父ワヒエロアは首長
ワヒエロアは首長で、マウイ島キパフルのカライコイに住んでいました(N.1)(*1)。
彼は結婚して、ヒナハウェアを妻にしました。
やがて2人の間に、男の子が生まれました。
その子はラカと呼ばれた
その子の育ての母は、ヒナハウェアの母、ヒナホワナでした。
彼女はアラエヌイという場所で、その子を手塩にかけて育てたのでした(N.2)。
彼女はその子を、「ラカ・ア・ワヒエロア」と呼んでいました(N.3)。
父がハワイ島で殺された
彼は、両親に大変可愛がられました。
彼の父親は、息子におもちゃをあげようと思いました。
そのおもちゃとは、アラ-コイウラ・ア・カーネです(N.4)。
そこで、ある日、父はそのおもちゃを探して、ハワイ島に行きました。
そして、父がハワイ島カウのプナルウに上陸した時のことです(N.5)。
彼はケアナ・ア・カウアレフと呼ばれる洞窟の中で殺されてしまったのです。
(次回に続く)
(ノート)
(N.1) キパフル (Kipahulu) :
キパフルは、かつてマウイ島にあった12のモク(Moku)の1つで、島の南東部にありました。
なお現在のマウイ島は4つの地区(District)に分けられており、キパフルはハナ地区の一部になっています。
(N.2) アラエヌイ (Alaenui) :
アラエヌイは、かつてキパフル・モク内にあった6つのアフプアア(Ahupua'a)の1つで、モクの北東部の大半を占めていました。
(N.3) ラカ・ア・ワヒエロア (Laka-a-wahieloa) :
ラカ・ア・ワヒエロアの中で、「ラカ」が男の子の名前、「ワヒエロア」はその父の名前、そして「ア」は属性を表しています。従ってこの呼称を和訳すると 、「ワヒエロアの子ラカ」 となります。
(N.4) アラ-コイウラ・ア・カーネ(Ala-Koiula a Kane) :
アラ-コイウラ・ア・カーネの意味については、原文にも記載がありません。ここでは、この語を構成する3つの語の意味をメモしておきましょう。(1) "alā"は ①石(ポイをつぶす道具,手斧(ておの),フラの小道具),②小道、(2) "ko'i'ula"は虹の小道、そして (3) "Kane"はカーネ(生命の神)です。
(N.5) カウ(Kau) :
カウは、かつてハワイ島にあったカウ・モク(Moku)を指しますが、現在はカウ地区(District)と呼ばれています。
(注記)
(*1) T.G.Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, X. Stories of the Menehunes, Laka's adventure Thos.G.Thrum, p.111-114.